2013年9月27日金曜日

フローマン米国通商代表による電話でのTPP説明会

フロ-マン米国通商代表によるブルネイ交渉会合後の利害関係者説明会の内容を紹介します。最近になって始まった日本における政府説明会との違いがよく分かると思います。細かい内容や具体的な内容を明らかにしている訳ではありませんが、対話として一定成立しており、交渉のスタンスは感じられると思います。


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フローマン米国通商代表による電話でのTPP説明会
9月9日(月)午後4時45分~午後4時50分開始

米国通商代表部政府間事項および市民参加窓口補佐官、ジュエル・ジェームス氏
・我々は、市民団体やNGOが協定の交渉経過に関する情報を確実に入手できるようにしたい。
・あらゆる分野の250を超える利害関係者を招待した。
・TPP環太平洋経済連携協定への関与を期待している

米国通商代表マイケル・フローマン氏
・大統領の貿易交渉における最重要事項は、成長促進、雇用創出、中間層の強化である。
・大統領は貿易自由化促進のため、TPP、TTIP環大西洋貿易投資連携協定、WTOを含む、思い切った広範囲な通商協定に着手してきた。
・すべての交渉において、各協定が最高水準を誇る21世紀型の協定になるべきであると交渉相手国に明言してきている。
・最終的に目指すものは成長と雇用の創出である。

TPP
・2009年の交渉開始以来、交渉相手国と水準の高い野心的な協定を形にすべく作業を進めてきた。
・世界の中で経済成長のもっとも著しい地域は今後輸出が伸びる可能性が高く、米国内の雇用創出を促すために協定は重要である。
・19回目の会合を終えたばかりだが、TPPの首脳陣が集まる予定のバリ会議に向けて作業を進める。
・首脳陣は今年中の交渉妥結に合意しており、バリ会議は重要な位置づけとなる。
・TPPは参加国間や今後協定に参加する国々との間の、また、他の分野も含む貿易に影響する高度な水準を設定する機会である。
・旧来の障壁を壊し、雇用を拡大し、環境やIP(知的財産権)基準を設定し、SOE(国有企業)や中小企業にも照準をあて、あらゆる革新的な課題のために作業を進めている。

<質疑応答>

全米生乳生産者連合
質問:米国産品がカナダ、日本市場へ進出する大きなチャンスである-全ての人々にチャンスが与えられる素晴らしい協定となることを今一度希望する。
GI(地理的表示)の保護に対する懸念がある-EUとの交渉が失敗(一般的名称の使用付加)したのと同じ轍を踏むのではないかという不安である。

回答:TPP交渉においては、乳製品を含む市場参入の重要性についてカナダや日本にも明確にしている。交渉相手と協力しながらGIにも対処していくとしており、その点ではあなたと共通の視点を持っている。商標や一般的名称を守ること、それが交渉における我々の基本的な立場である。

米国砂糖連盟
質問:バリ会議における見通しを示されたい-困難な課題を解決できるのか、もしくは妥協した内容を固めているのか?誰もが年内妥結を謳っているが、日本は農業分野の例外5項目を提唱して交渉に参加した。果たして年内交渉妥結に現実性はあるのか?

回答:交渉国は夏から秋にかけ、交渉妥結に向け猛烈に作業を進めてきた。ブルネイ会議とバリ会議の間では中間交渉も予定されている。バリ会議は指導者達にとって年内妥結に向け何が政治的課題として残るのかを知る重要な会議となるだろう。日本は準備を整え追いつこうと多大な努力をはらっており、(私たちは)市場参入やあらゆる規制に関する課題への取り組みに期待している。日本は交渉を遅延は望んでおらず、前向きな精神で交渉に参加した。

全米鉄鋼労組
質問:先週の会議では着地点や交渉の妥結等々について話し合った。鉄鋼労組は自動車部品メーカー35万人の労働者を代表している。いつRDCに関する米国の要求を机上にのせるつもりなのか、また我々はいつ、承認を受けた助言者がその内容を再検証する機会があると考えれば良いのか?

回答:自動車分野全般に関してと、日本側との2国間交渉において我々はその問題について提案を出す準備を精力的に進めており、この問題について再度日本側と協議するつもりである。
次席交渉官は8月に日本を訪問しこの問題についての申し入れを行った。我々は現在その追加作業を実施している。また、より繊細な課題解決についても努力している。準備作業は完了しつつあり、近いうちに交渉を始めることになるだろう。しかし短期間での交渉は期待しないでいただきたい。

全米自動車労組 
質問:我々は日本の交渉参加が米国内の自動車業界の回復にどのような意味を持つのか懸念を抱いている。自動車部品の分野について、何か共有できる情報はあるか?また今後の交渉、もしくはこれと並行して行われる2国間交渉はどのように推移すると考えているか?

回答:我々は自動車、保険、その他の非関税的手段の交渉を日本と直接2国間で並行的に行うことは必須だと考えている。2国間合意はTPP交渉に盛りこまれ遵守の対象となるし、TPPの紛争解決の対象にもなる。
我々はこれらの要求を具体化する過程にあり、既にこの前提となる交渉を8月に行った。我々は交渉における要求作りのため3大自動車メーカー、国会、そして労働者団体等いくつもの利害関係者と話し合いを行っている。

米国国際ビジネス評議会
質問:オーストラリアにおける政権交代が今回の交渉にどのような影響を及ぼすのかについてお聴きしたい。特に投資の条項に関してだが、他の分野に対する影響も予想しているか?

回答:選挙の結果はまだ決着しておらず、新たな貿易担当相も発表されていない。我々は新政権が確立した段階で協議を進めることを待ち望んでいる。
率直に言えば、彼らがTPPもしくはTPPに含まれる個別事項に対しどのような立場をとるのかについて推測するには、若干時期尚早である。

必須薬品に対する大学同盟(UAEM)
質問:IPと投資家国家の条項についてはまだ交渉が決着していない。今年度中に交渉が決着すると考えているか?IP(知的所有権)条項決着の期限はいつか?また、TRIPS+(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)は交渉に含まれるか?もしそうであれば、どのようなものか?最も気掛かりなのは医薬品入手への影響である。
回答:IP条項は最も難しい条項の1つだが、最難関の条項については交渉が終盤に近付いた段階で決着すると思われる。我々は革新を促進し、革新的産業を保護しつつ、発展途上国での(安価な)医薬品入手も確保するという目標のもとで作業を進めており、適切に調和させたいと考えている。これは最後に決着する課題の1つになるだろう。

シエラクラブ(環境保護団体) 
質問:ブルネイの交渉が最後の正式な交渉の場だが、未解決な事項がいくつもあると理解している。懸念しているのは、交渉が進展する一方で利害関係者の意見聴取の機会が減りつつあることである。今後中間会合がどんな感じで進むのか、また、どの段階で利害関係者が関与できる機会があるのかを教えていただきたい。例えば、主席交渉官が来週ワシントンに来る予定だが、詳細について情報提供をしてもらえないか?

回答:利害関係者の関与は交渉の進展にとって非常に重要である。例えば交渉の中に特別に設けられた会合の場で、全ての国々から来た利害関係者が交渉官に向かって意見を述べるような場である。我々はまだ、年末までに残された期間の主席交渉官らの会合等、交渉日程を調整している段階であり、バリ会合以降の追加的な(交渉)機会等についてもまだ分からない。利害関係者がこれまでの会合で交渉に関与してきたような機会を今後も設定しようと考えている。日程が確定次第お知らせしたい。

米国癌協会 
質問:現在、マレーシアと米国ではタバコ業界に対抗する要求が出されている。マレーシアから出されたこの要求がTPPのタバコに関する条文に及ぼす影響について、直近の状況を教えてほしい。

回答:ご存じのとおり我々はこの分野について条文を提案している。この分野に関心を抱くマレーシアおよび他の国々と協議している。目標は米国や他のTPP参加国が、タバコを含め国民の健康に対する関心事を十分に法制化できるようにすることである。例えば、米国議会は2009年に決議を行ったが、同時にそのことが他の分野に波及したり貿易に対する過度な制限となる前例になったりしないよう配慮している。我々は、国民の健康が米国そしてTPP交渉参加の全ての国々に対し保障されることに注力している。現在は利害関係者やTPP交渉国とこの目的を達成する最良の方法について話し合っている。数週間、もしくは数か月のうちに良い結論を導き出せると考えている。

米国通商代表部、マイケル・フローマン氏
・我々は、最良の結果を導き出すためには、利害関係者からの情報提供が非常に重要であると考えている。
・この段階において、いくつもの難しい決断をしなければならす、全ての人々が100%満足することは難しいと考えている。しかし、皆さんから情報を聞き、相談をし、自分たちだけで決断を下さないことを約束する。
・交渉の過程において皆さんの関与を積極的に取り入れていきたい。
・もし回答しきれていない質問があれば、こちらのEメールアドレス(IAPE※ustr.eop.gov ←※を@に)に送っていただきたい。

午後5時15分終了
(翻訳:田所 剛/監修:廣内かおり)

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