2013年6月27日木曜日

第17回TPP交渉会合でどんな進展があったのか!?─ペルー会合におけるステークホルダー会議の一端を公開

第17回TPP交渉会合がペルーの首都リマで5月15〜24日に開催され、利害関係者(ステークホルダー)向けの説明会が開かれました。

「STOP TPP!! 市民アクション」 が関わる国際ネットワークが共有したステークホルダー会議のメモを翻訳しました。

知財保護について米国からの新たな提案があったのかとの質問への回答や、米国議会でのTPA(貿易促進権限)をめぐる質疑などが興味深いものがあります。(翻訳:清水亮子/監修:廣内かおり)

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TPP上級交渉官による説明会からのメモ
リマ(ペルー) 2013年5月19日

【主催国ペルーによる冒頭の説明】
交渉5日目。公式代表700名、利害関係者300名、報道関係者200名、利害関係者フォーラムでは、50の発表が行われる大規模な会合。

2013年内の決着にむけた作業について、各大臣からの新たな支持を取り付けた。APEC会合の合間を使って年内決着するため、首脳らも懸命に計画を練った。

【大きな進展のあった分野】
 衛生植物防疫(SPS)、電子商取引、法的及び制度的問題
【本日開始の分野】
 貿易の技術的障壁(TBT)、投資、労働、その他
【課題が残る分野】
 知的財産権(IP)、環境、競争
【時間が必要な分野】
 モノ、サービスの市場アクセス、投資

今週は建設的議論が行われた。会合の継続とともに、二国間会合の前進が見込まれる。

質問:米国は医薬品について、新しい知的財産権IPの条文を提案したか?

米国:
医薬品と特許問題は議論が始まったばかり。新しい条文は提案されていない。(米国内)内部で実施している審議を続けていくなかで、この会合での議論に反映できればと考えている。政府はこの問題を重要視している。達成目標も複数ある。

質問:米国の提案に対する影響調査について触れていたが、医薬品への市場参入影響が9,000万ドルというものだった。各国政府も米国提案について同様の影響調査を行っているか?

ペルー:
それぞれの提案をペルーの観点から注意深く分析している。情報を共有し、他の大臣たちと協力している。良い影響を指摘する研究もある。

質問:金融サービスについて及び、貿易と金融サービスとの関係について得た教訓に関する質問。米国上院銀行委員会の委員、エリザベス・ワレン上院議員が先日、上院銀行公聴会で「ウォールストリート(※金融関連企業)がTPPや環大西洋貿易投資パートナーシップを利用して、トッド・フランク法(2010年に成立した濫用的金融サービス実務から消費者を保護するための法律)を骨抜きにしようとしていることに対して、不満が高まっている。言い換えれば、公衆の面前ではできないことを、貿易協定を通して静かにやろうとしている」と語っている。これは、過去のFTAのルールが金融規制を制限する可能性についての懸念が高まっていることと軌を一にしている。過去のFTAに該当する章の中で、金融再規制が骨抜きにならないようにというワレン上院議員の懸念を考慮して変更が加えられている部分はどこか。

米国:
議会と協力して金融サービスの取組みを監視しているので、我々が行なっていることは金融政策を制限する米国の法律に抵触することはない。

議会とはすべての提案について、密に連絡を取り合っている。最高裁判決など最近の決定について、いくつかはここで話し合われるだろう。米国政府の立場などについても。

質問:TPPはタバコ会社に対して、喫煙規制の主権を侵害する道を与えることにならないか

ペルー:
既存の多国間協定であるFCTC(たばこの規制に関する枠組条約)と協力し、ここでの作業について多くの情報を得ている。我々には、ここでの決定を他の国際協定の取り決めと整合させる義務がある。ペルーについて言えば、政府は正当な目的のためなら規制する権利があり、それはタバコだけでなく、他の分野でも同様である。

ニュージーランド:
TPPのルールで定めていることは、政府が公益のために規制する能力をきちんと維持できるようにすることだ。金融サービスについては慎重な措置、そして健康についても。

質問:なぜインターネット問題をTPPから切り離さないのか。SOPA/PIPAについては大きな抵抗があった。SOPA著作権保護法(Stop Online Private Act)/PIPA知財保護法(Protect IP Act)やACTA模倣品・海賊版防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement)のような提案について、どのような交渉をしているのか?

ペルー:
現在17回目の会合だ。すべての問題を1つにまとめられるのか、どの問題がどの章で扱われるべきか?全体像を見失わないことが大切。

ACTA/SOPAに関し、ペルーの観点では、これはTPPに関わる問題。ペルー代表は自国の法律や国際的取り決めとの整合性をとるよう作業にあたっている。

質問:TPPとTPPの非常に野心的な目標を大いに支持している。TPPが域内の貿易環境を整えてくれることを期待している。なぜ多国間交渉ではなく、二国間交渉なのか。日本が参加する前に野心的な市場アクセス、そして事前に表明している重要事項について(※メモが途切れているため内容不明)

カナダ:
TPPは我々にとってカギとなる。その理由の1つは野心の水準が高いこと。設定されている目標は非常に重要だ。もうひとつの要素は、TPPが地域内協定であること。地域の結びつきによって二国間のFTA以上の便益がある。どうすれば我々はそのプロセスに到達することができるのか。各国がどのように現状からそこに至るのかは、その時点でのさまざまな力学の作用の結果である。

日本はカナダ、メキシコと同じように、TPPのパートナーたちに対して前向きなシグナルを発したと思う。確実なのは、日本が加盟する時に交渉がどこまで進んでいるかに関わらず、日本はそれを受け入れるということだ。

質問:米国議会の通商政策に関する権限委任の異常さや、共和党がオバマ大統領へのファストトラック権限(個別賛否でなく一括採決を前提に交渉)の付与に積極的ではないことを考える時、米国のような、幅広い権限を特別に委任されないままで、交渉にどのような影響が出ると、上級交渉官たちは見ているのか。

ペルー:
私はいつもペルーの内政を尊重するよう他の国々にお願いしている。よって米国の内政についてはコメントを控える。

ニュージーランド:
我々はみな、政府を代表して交渉にあたっている。我々の交渉結果もニュージーランド議会を通る必要がある。

米国:
TPA(貿易促進権限Trade Promotion Act:ファストトラック)発動に関する視点を出していただいたことに感謝する。議会で議論が始まったのはついこの前のことだ。ファストトラックについてのあなたの評価には同意しかねるが。

質問:スケジュールについて

ペルー:
新たにTPP参加各国の大臣たちから支持を得た。今年中の決着を目指す。共通の土台を模索し、すべての作業を終えるようと努力している。

質問:交渉妥結までに日本以外の国が参加を承認される可能性は?

ペルー:
日本が交渉に参加することについては合意が得られた。各国には、日本加盟に向けてそれぞれの国内手続きがある。次の会合については、今会合の最後には分かるだろう。(質問には回答せず)

質問:電話の利用者が電話のロックを解除できるかどうかに関する質問

米国(多分メモをとっていない?):
デジタル著作権法は、(米国の)いくつかのFTAには反映されている。TPPでは様々な利害があり、均衡点を模索中。デジタル経済の枠組みを発展させようとしている。デジタル経済から得られるプラス面を拡大し、同時に、マイナス面からの保護も考えなければならない。政策空間を整えるよう努力している。

(翻訳:清水亮子/監修:廣内かおり)

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