2012年10月1日月曜日

ロシア・ウラジオストクでの「TPP参加国首脳宣言」を全訳公開

9月9日付のAPECでの首脳声明と通商担当大臣報告を入手しました。。TPP交渉の現状の手がかりとなる重要な情報であり、当運動および「TPPに反対する人々の運動」翻訳グループは重要資料として全文翻訳しました。(翻訳:大谷一平/監修:廣内かおり)

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TPP参加国首脳宣言

09/09/2012

ウラジオストク、ロシア発―「オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ合衆国そしてベトナムの首脳である我々は、13回目のTPP交渉会合で達成された進展を見守りつつ、貿易と投資を自由化、促進し、21世紀の課題や新旧の貿易問題に対応する次世代の包括的な地域協定を締結するという、2011年11月のホノルルでの確約を再確認する。ホノルルの会合以降、4回の交渉会合およびその他の交渉間の会合において交渉担当者たちが成し遂げた有意義な進展を基盤とし、この目標が達成されると確信している。TPPの締結は、アジア太平洋圏の展望を開き、我々の市場における雇用の創出と維持を助け、競争力を高め、地域内の経済成長を促し、開発目標を前進させるだろう」

「我々の製造業者、サービス提供業者、農業従事者、牧場経営者、労働者そして消費者たちが、この協定によってもたらされる恩恵をできるだけ早く享受できるよう、速やかな交渉妥結への努力を一層新たにすることに同意する。そのため交渉担当者らは、利害関係者たちから示された幅広い視点を注意深く検討、統合、反映させるべきである。同時に、各国の多様性を適切に保つ方法をとりつつ、この意欲的な次世代通商協定の交渉にあたる困難さも認識している。この目標に沿って、今週、14回目の交渉会合を開始するにあたり、まだ交渉中の課題に対し、実利的、独創的で柔軟性があり、互いに許容できる解決方法を迅速に見つけ出すことに情熱を注ぐよう指示を出した」

「我々はメキシコとカナダをTPP交渉国として迎え入れることを歓迎する。数ヶ月に及ぶ綿密な協議により、TPPの締結を遅らせることなく、この協定で達成すべき高水準の野心的な目標に取り組むことが確認された。我々は両国の交渉への参加はこの構想の将来性を再確認するものであり、現在の9カ国による連携を他のアジア太平洋圏の国々へ広めるための重要な一歩だととらえている。一方、TPP加盟に興味を示している他のアジア太平洋諸国の参加の可能性を高めるため、これらの連携国との話し合いを継続するように我々の交渉チームへ指示を出した」

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TPP参加国通商担当相の首脳宛て報告

09/09/2012

ウラジオストク、ロシア‐ハワイ、ホノルルにてTPP参加国首脳が会合を開き、この画期的な協定をできるだけ速やかに締結すべく必要な資源を割り当てるように、との指示が出されてから10ヶ月の間、昨年11月に承認された大まかな概要に基づく協定の妥結に向けて、私たちは着実に前進してきた。(ホノルルでの会合)以降、4回の交渉会合が開催され、その会合の間に多国間による個別交渉や特定の課題解決に向けた二国間会合が数多く設けられた。こうした会合や公式会合の間の綿密な準備作業、交渉の立場をさらに確立させる過程で外部の意見を取り入れるための利害関係者たちとの活発な国内協議などにより、さまざまな分野で参加国間の隔たりが大幅に埋められてきた。また、進捗が遅いその他の課題でも引き続き作業が進んでいる。

画期的なこの協定に対する首脳のコミットメントにより私たちは集中的に協議し、交渉の対象となっている、税関、越境サービス、政府調達、電気通信、競争政策、中小企業政策、競争力・事業の円滑化、協力そして能力構築を含む29の章において大きく前進することができた。原産地規則、投資、金融サービス、一時入国を含むその他の課題についても、交渉参加国の作業は実質的に大きく進展した。更に他の章についても、隔たりを乗り越えるべく前進している。この協定は一括受託方式であり、全てのTPP参加国が受け入れることのできる公正なパッケージをまとめる必要があると認識しつつ、今年中にできるだけ多くの章を妥結させるためにこの勢いにのって協議を進めようと決意している。

未来の通商協定の基準となるこの歴史的な協定を規定する、次の5つの特徴の実現に向けて前進したことは喜ばしい成果である。

(1) 包括的な市場アクセス

私たちは相互の物品市場に関税を非課税で参入させ、同時に、サービス、投資および政府調達に関する規制を撤廃する高水準な市場参入の組み合わせを構築するため引き続き尽力している。9カ国は、工業製品、農産物および繊維市場を互いに開放する関税パッケージを作り上げるために努力を続けている。この作業は国によりそれぞれのペースで進められている。同時に、相互のサービス、投資、政府調達市場への参入をもたらすパッケージも策定中である。サービスと投資については、国が挙げる例外以外はお互いの国の市場に参入できる「除外リスト」方式を原則として、交渉を進めている。12月の会合以降着実に前進したが、この取り組み方法はTPP参加国によっては新しいため、物品への取り組みと一貫性のある、サービス・投資に関する野心的な成果を達成するにはさらに努力が必要である。また、政府調達についても初めて通商協定で取り扱うTPP参加国もあるが、有意義な前進が見られた。しかし、交渉を導く明確な方向性に沿った、高水準でバランスの取れたパッケージを展開するために、市場参入交渉全般を通じてさらなる努力が必要であることは明らかである。慎重な検討を必要とする分野に、この協定の野心的な目標が譲歩させられることのないよう、独創的な解決策の提案に注力すれば、参加国間の貿易と投資を最大化し、市民の雇用の創出と維持を支えるという主要な目的を達成できるだろう。

(2) Regional Agreement 地域にまたがる協定

TPP9カ国は、単一の関税率表作成に向けた道筋について協議してきた。この10ヶ月の間、本協定の最重要項目である参加国同士の貿易促進を実現するための項目の1つ、「共通の原産地規則」に関する合意に向けて大きく前進してきた。私たちは、地域全体の累積規定を進める、簡素化した、執行可能な原産地規則を策定できるよう努力している。この規則は、TPP参加国の生産を促進し、その大小に関わらず協定の恩恵をより簡単に受けられるようにするものである。また、接続性やサービス、税関の協力、基準等の問題を含め、TPP参加国間の製造・供給網の発展を支援する取り組みについて、協定全般にわたり堅実に進展した。いくつかの課題については、9カ国間で取り組み方が異なるものの、この協定がそれぞれの国民の生活水準の向上と経済に相乗効果もたらすものとなるよう妥協案を見出すべく、緊密に、そして建設的に作業を進めている。

(3) Cross-Cutting Trade Issues 分野横断的な通商問題

TPPに含まれる4分野を横断する課題のそれぞれの妥結へと動いているが、これらの分野においてすでに成果をあげているAPECによって、私たちの努力は大幅に前進している。この10ヶ月間、以下の項目に関する章について、合意に向けた積極的な進展がみられた:(1)企業が海外市場に進出する際、主要な障壁となる物品、工業製品、農産物に関する規制およびその他の非関税障壁の問題。規制の実施方法を改善するための新しい手法、不必要な障壁の撤廃、基準に関する地域間差異の縮小、透明性の促進、貿易を促進する規制手順の処理、さらに9カ国が関心を寄せるいくつかの部門に関する特定の規制問題に対する協力に関し、互いの隔たりを埋めた、(2)競争力を強化し、市場の雇用を維持する製造・供給網開発の確保に包括的に焦点を当てるなど、競争力と事業の円滑化、(3)中小企業にとってそれぞれの活動に特に関係が深く、使いやすいTPPの情報や資源を簡単に入手できるなど、域内貿易への中小企業の参加拡大を図る方法、(4)TPP参加国がこの協定の大きな目標を達成し、余すところなくその恩恵を享受できるようにするための能力開発と協力。さらに、各国の経済発展に関する重点事項、他の会合の実績への上積み、利害関係者からの意見の受け入れ、TPP参加国からの新規提案に寄与する取り組み。

(4) New Trade Issues 新しい通商問題

11月の会合以来、私たちは世界貿易のなかで新たに生じてきた課題に対処するための最善策を慎重に検討してきた。例えば、相当な時間を費やし、競争力の強化、貿易促進、中小企業のグローバル経済へのつながりを支援するための新デジタル・エコノミーの活用に役立つ取り組み、情報テクノロジーの開発について検討してきた。グリーン産業の成長や新しいテクノロジーの利点を獲得することについては、共通の利益を促進する方法も検討している。さらに、透明性が高く、競争を促すビジネス環境を確保するための適切な方法の検討を続けている。これらとあわせたその他の検討中の課題は、新しく、複雑な問題である。しかし、9カ国が真剣に取り組み、これらの分野で貿易と投資を促し、全ての企業と市民に利益を及ぼすことができる成果を追求していることに感謝している。

(5) Living Agreement 生きている協定

私たちはメキシコとカナダがTPP交渉の参加に関心を示したことをうれしく思い、歓迎している。両国の加盟はこの政策を強化し、TPPをアジア太平洋圏の経済的統合の基盤にするという私たちの目標達成の一助となるだろう。将来の交渉参加の可能性に関心を示す他の国々とも対話を継続していく。同時にTPPが生きた協定となり、将来起こりうる貿易やテクノロジーの発展、その他新たな争点や課題に対応して適切に進化するための枠組みや制度、手順の確立についても合意に向けて大幅に進展した。さらに共通の課題を持つ分野に対して、将来、共同で作業するための、最も生産的で効果的なアプローチについても検討している。

Next Steps 次のステップ

私たちは、9カ国の首脳がこの協定妥結に合意することが優先事項であると認識している。協定全般を通じて意義ある進展を達成しており、現在は十分な検討と徹底した協議が必要な複雑且つ新しい、慎重な対応を要するさまざまな分野を含む残りの課題解決に尽力している。私たちは指示されたとおりに必要な資源を投入し、また、メキシコとカナダの交渉受け入れを効率的におこなう所存である。それにより可能な限り早急に、この交渉を成功裏にまとめることができるだろう

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