2015年7月3日金曜日

GE、インテル、ジェネリック業界…USTRのメール交信報告から浮かぶ産業界のTPP人脈図

スイスに拠点を置く交際的なNGOで、国際的な知的財産に関する政策のもたらす影響などを紹介、報告をしている「知的財産ウォッチ」が米国の情報公開法Freedom of Information Actに基づいて入手したUSTRと産業界側の“顧問”(TPP交渉の助言者として認められた数百人もの業界代表)との間での電子メール交信についての概要報告の翻訳です。内容はTPPそのものの秘密情報を含むものではありません。しかし、これまで“数百人もの企業を代表するTPP交渉顧問”と言われていた面々が、実際USTRとの間でどんなことをしているのか、その一部の断面が実に生き生きと伺われる愉快なレポートです。 (翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)

★ ★ ★

産業界の秘密・緊密なTPP関与、米通商代表部(USTR)の機密メールで明らかに

米国と12の貿易相手国が秘密裏に交渉している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の結果によって、あらゆる利害関係者が影響を受けうる一方で、企業代表は交渉テーブルの特等席に着いてきたことが、「知的財産ウォッチ」が入手した米通商代表部USTRの数百ページに及ぶ機密メールから明らかになった。このメールから、USTRでどのように政策が形成されていったかに関する貴重で興味深い知見が得られた。

交渉開始から数年、TPPは妥結間近であり、米国議会における大統領のファストトラック包括交渉権限(この権限下では、議会の役割は賛否の採決に限定される)の更新に関する討議における課題であると言われてきた。しかし、TPPの文書は、これまで決して―その一部が時折リークされたことを除けば―交渉参加国の市民に公開されてこなかった。ゆえに、今回の電子メール入手は上記の討議にとって時宜を得たものとなった。

「知的財産ウォッチ」は、情報公開法(FOIA)に基づく請求によって、USTR職員と業界側の顧問が交わした400ページあまりに渡る電子メールを入手した。その殆どは黒塗りの編集が施されていたが、それでもなお、これまでの経緯を理解するのに役立つ。

今回はじめて一般に公表された電子メール(2010~2013年)
(1), (2), (3), (4) [all pdf].

上記情報公開法による請求は、「知的財産ウォッチ」のためにイェール法科大学院「報道の自由と情報公開」専門法律相談所Media Freedom and Information Access Clinic により訴訟の対象として持ち込まれたものである。「知的財産ウォッチ」は貿易交渉そのものへの見解は示さず、TPP交渉における極端な秘密主義によって、この交渉についてなんらかの意味のある記事を執筆することができない、と主張してきた。TPPに関する報道は大抵、詳細に触れず会議の日程と課題を挙げるのみである。

[注:今回のメール公開を引き出したイェール大と「知的財産ウォッチ」による訴訟は進行中で、TPP文書自体の公開を目指しており、裁判所の判決を待っているところである。]

今回のメールで特筆すべきは、政府交渉者が業界の大物達に専門的知見や助言を求めたことではない。交渉者と業界側の顧問達が、彼ら以外のどんな利害関係者とも比べようがないほど緊密な関係にあることが暴かれたことである。

「知的財産ウォッチ」は、議会メンバー、中小企業、公益活動団体、学術団体、その他の”非認可”顧問との関わりの記録は請求しなかったので、それらとの緊密度を直接比較することは出来ない。しかし、例えば、公益全般を代弁する活動家が、いかに専門家として認められていたとしても、このレベルの近しい待遇を受けるとは想像しにくい。

メール交信に登場する”認可”顧問は、企業、業界団体から法律事務所までに及ぶ。彼らの中には、アメリカレコード協会、米国研究製薬工業協会PhRMA、ゼネラル・エレクトリック、インテル、シスコ、ホワイト&ケース(法律事務所)、高度医療技術協会(AdvaMed)、アメリカ映画協会、ウィレイ・レイン(法律事務所)、エンターテインメントソフトウェア協会、ファンウッド・ケミカル、米国化学工業協会、クロップライフ(アグリビジネス業界団体)、メドトロニック(医療機器メーカー)、アメリカン・コンチネンタル・グループ(コンサルティング会社)、アボット(医薬品メーカー)が含まれる(順不同)。ジェネリック医薬品業界の代表とのメール交信もある。

これら産業界の代表の多くは、USTRのOBである。

メール交換の例

USTR職員と産業界のメール交換は、交渉期間中に言及されたTPPに影響を与え得るあらゆる話題を網羅している。例えば、日本や他国を含めるようなTPP参加国の拡大、交渉参加国間の透明性に関する協定、医薬品アクセスに関するUSTRの公式声明、カナダとその文化、米国特許改革法案、知的財産権と環境問題に関する情報、ソフトウエアの特許適格性、EU・他の貿易協定・国際開発との関係、そして、予想通り、協定草案の構成要素に関する膨大な協議である。

例を挙げると、ゼネラル・エレクトリックの航空部門代表タヌジャ・ガーデは「“商行為に関わる秘密保護trade secret”に関して、君が提出した文章をシェアするか、電話で話せないか?」と依頼し、これに対してUSTRの職員プロビア・メータは「チャットしよう。月曜のどこかは?」と答えている。他の箇所では、ガーデはメータに「ダラスでの提出分について聞いたよ。いい内容だった。会議所には報告したか?(※米国商工会議所、産業界の団体)」と書き、メータは「有難う、タヌジャ。本当に君とジョーのおかげだよ!(※USTRの職員ジョー・ホワイトロックのこと)米国商工会議所の「TPPと知的財産」作業部会で先週報告したところだ。」と返している。

“商行為に関わる秘密保護”に関する議論には、他の大企業も参加している。デュポン、コーニング、マイクロソフト、クアルコムなどだ。

他の例では、エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)の副会長ステーブン・ミッチェルが、交渉中の技術保護手段(TPM)に関するESAの分析の草案を提供している。USTRはこれに対し、「来週のどこかでランチの時間がとれるか?」と返答している。

シスコ・システムのジェニファー・スタンフォードはTPPとサプライ・チェーンの問題に関わっている。インテルのグレッグ・スレイターはまだ公開されていない課題に関するメモを提供している。ウィレイ・レイン法律事務所のティモシー・ブライトビルは省庁をまたがる提案のための国有企業(SOE)に関する文案を至急提供するよう依頼されている。

RIAA(アメリカレコード協会)は、電気通信の章を検討して質問し、”情報処理技術勉強会(ITAC)の選抜メンバーによる著作権法と施行に関するTPP草案”について議論し、インターネット・サービス・プロバイダーに関する文案にコメントし、ニュージーランドで行われている適法なオンライン音楽サービスの情報を提供している。国際知財同盟International IP Allianceも著作権とその施行に関与している。更に、著作権関連産業の代表らは、著作権の制限・例外、副次的責任の選択肢、安全ルールに関する彼らの見解を送付している。

ITACは、産業部門毎にいくつかあるUSTRの産業貿易諮問委員会である。

早い段階で、クロップライフのドゥグ・ネルソンは、彼のチームがクアランプールとベトナムで両国の官僚に対し、農業用化学品のデータ保護に関するロビー活動を行ってきており、「彼らが、データ独占重視のTRIPS協定第39条3項を受け入れることは確実である」と述べている。彼は、クロップライフが、ニュージーランドでの次のTPP会合でプレゼンの機会を持つか、あるいは米国代表団の一員として参加出来ないか問い合わせている。USTR職員のスタン・マッコイは、ニュージーランド政府が民間セクターの並行会合をどう扱うか知らないと回答している。

2011年のメールでは、マッコイはGEのロビイストに「特許改革法案の調印式にGEのCEOが出席するなら、ニュージーランドの貿易大臣ティム・グローサーが出席することを知っておいて欲しい。ニュージーランドにTPPで強力な知的財産(保護)の章を支持するよう勧める素晴らしい機会になるだろう。」と伝えている。

他には、ファンウッド化学のジム・デリスが原産地規則の草案を見て、言っている。「USTRに借りができた。この規則なら我々の規則と同じだ・・・喜ばしいことに。」

さらなる例として、AdvaMedのラルフ・アイブスは、USTRのバーバラ・ワイゼルとTPPに関するあるCEOの書簡について意見交換をしている。ワイゼルは、その書簡を見るまではコメント出来とした上で、「お気遣いに感謝するけれども、書簡の中の交渉人の名前は明かさないで欲しい」と言っている。アイブスは明らかに書簡の草稿と共に返答している。「(草稿に)手を入れてくれとは言わないが、こんな感じで送ってよいか教えて欲しい」。ワイゼルは、それに関して自分と会って話すよう要請しつつ返答し、さらに会合を設定するとしている。他の箇所では、AdvaMedが貿易に関する技術的障壁(TBT)の議論に参加している。

オーストラリアの医療産業協会が、USTR職員との直接の交信に加わっている。

今回の電子メールから明らかになったことで特筆すべきは、交渉官、そして業界の代表は、週末も休日も、数え切れないほど世界中を旅しつつ、非常にハ熱心に長時間働いていることだ。
USTR職員が定められた規則を守ろうと努力していることも、その交渉の秘密の度合いに同意すらしていないのかもしれないことも明らかになったようだ。2012年のある時点で、USTR「知的財産と革新」部長のヤード・レグランドはあるロビイストに伝えている。「あなたや関係者の皆さんと、必要ならすぐ連絡がとれるようになったことは喜ばしい。ご存知の通り、実際のところ、私は“非認可顧問”とは草案について話せないので。」

また他のところでは、USTRの首席交渉官バーバラ・ワイゼルから産業界に、同じことを何度も繰り返さないようにとの要請がなされたとの記載もある。(翻訳: 西本 裕美/監修:廣内 かおり)

2015年6月26日金曜日

日本政府の TPP 交渉にかかる出張旅費9億円超え(PARCプレスリリース)

当グループの構成団体である「アジア太平洋資料センター(PARC)」が24日、情報公開請求をした日本政府のTPP交渉にかかる出張旅費を発表しました。作業の一部を市民アクションも担当しました。以下に情報を掲載します。


【日本政府の TPP 交渉にかかる出張旅費、9億円を超える(アジア太平洋資料センターHPより転載/2015/06/24)】

このたびNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)は、日本がTPP交渉に参加して以降の政府交渉官の出張旅費・会議費について、関係する4省庁に情報開示請求を行いました。その結果、2013年3月~2015年2月末までの2年間で、9億円を超えていることがわかりました。長期化する交渉が、経費を増加させていることがデータから読み取れます。この経費の財源は私たちの税金であるわけですが、9億を超す額であるにもかかわらず、交渉内容が一貫して秘密であることは国民からすれば納得いくものではありません。米国議会ではTPA(貿易促進権限)法案の動きも流動的で交渉が漂流する可能性も指摘される中で、この「コスト」は、果たして日本にとって本当にメリットとなるのか、「ムダ金」に終わるのか、私たちは改めて政府に交渉内容の十分な説明を求めます。

■はじめに―調査の概要

◆情報開示請求の概要◆
★対象期間:2013年3月~2015年2月末(2年間)
★対象省庁:内閣官房、財務省、農水省、経済産業省、外務省の5省庁
※外務省についてはTPP交渉と、日米二国間協議交渉の2つを担当しているため、2件の情報開示請求を行った。
★請求内容:①TPP交渉の閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため出張した職員の旅費
※出張旅費には、航空券代、宿泊費、国内交通費、変更に伴うキャンセル料が含まれる。
②国内での会議費(会場費、水代など)
★作業はSTOP TPP!!市民アクション(http://stoptppaction.blogspot.jp/)の協力を得て実施した。

TPP交渉の分野は多岐にわたるため、日本政府は内閣官房内に「TPP政府対策本部」を設置し、関係する各省庁からの交渉官を統括している。ただ交渉会合への参加経費については、各省庁からの支出となるため、「内閣官房」「農林水産省」「経済産業省」「財務省」「外務省」の主要4省庁への情報開示請求を行った。開示請求を行ったのは2015年3月6日。どの省庁からも1か月の開示延長がなされ、最終的な開示がなされたのは5月中旬~下旬であった。
情報開示請求の内容は、①TPP交渉の閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため出張した職員の旅費、②国内での会議費など(会場費、水代など)とした。対象期間は2013年3月~2015年2月末の2年間である。 開示の結果、そのほとんどが出張旅費であった。5省庁からの領収書は1570件にも及んだが、そのすべてを入力・集計した。今回調べた省庁の他にも国土交通省や金融庁なども少人数ながらTPP交渉に職員を派遣している。

以下、詳細はアジア太平洋資料センターHPへ。
http://www.parc-jp.org/teigen/2015/tpp_research20150624.html

【緊急アピール】「国会決議違反、民意を無視したTPP「合意」は許されない!」

<緊急アピール>

国会決議違反、民意を無視したTPP「合意」は許されない!
-TPP交渉は最大の山場に、みんなの力を発揮しましょう-
2015年6月26日

醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会よびかけ人)
中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長)
山根香織(主婦連合会参与)

            TPPに関するフォーラム実行委員会有志

 アメリカ連邦議会上院でTPA法(貿易促進権限法)が可決されたことを受けて、甘利担当大臣は「7月下旬には閣僚会合で大筋合意も可能だ」とコメントし、大手マスコミもそれが当然の流れであるかのように伝えていますが、とんでもありません。
 アメリカ議会でTPA法案が迷走の末成立したのは、TPPが多国籍大企業の利益を保障する一方で、99%の人たちには害悪をまき散らすものでしかないことが明らかとなるなか、労働組合や市民団体の反対運動や反対の世論が強まってきたからであり、TPPの危険性が弱まったからでも、アメリカの市民社会がTPPを受け入れたからでもありません。
 交渉権限を手にしたオバマ政権が、今後、交渉の「大筋合意」をめざして、TPAを成立させた議会の圧力も背景に、参加国に対してより強力に譲歩を迫ってくることは明らかであり、一層理不尽な内容を押しつけられる危険はむしろ強まったと言うべきです。
しかし、この事態を受けて、アメリカのメディアやTPPに反対してきた人々は、TPA法の成立で貿易紛争が終わるどころか、TPPをめぐる全面戦争が始まることを予告しています。また、いくつかの参加国は、「TPAの成立はTPPの妥結が近いことを意味するものではない」とコメントしていることも伝えられています。
 その一方、安倍内閣は、「合意」の環境は整ったとばかりに、日米合意を先行させ、オバマ政権と連携を強めてTPP交渉の「大筋合意」に主導的役割を果たそうとしています。自らの公約も破って交渉参加に踏み切った安倍内閣が、いよいよ「国会決議」も「説明不足」や反対を表明する民意も無視して「合意」に向けて暴走することは許されるものではありません。
 私たちは、TPPはいのちと暮らし、地域、人権や主権まで脅かすものだと考え、これまで全国の多くのみなさんと力を合わせて、共同行動やフォーラムなどを展開してきました。いま、TPP交渉最大の山場を迎えて、改めて呼びかけます。全国各地で共同の力を発揮し、「国会決議を踏みにじるTPP交渉合意は許さない!」の声と行動を強めましょう。国会議員には、自らの責任において行った「決議」を守るために行動をとるよう求めましょう。

以上


【連絡先事務局・お問い合わせ】全国食健連
 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階 
℡03-3372-6112、FAX03-3370-8329 Eメール:center※shokkenren.jp(※を@に変換ください)

2015年5月26日火曜日

米国パブリック・シチズンによるTPA法案分析「2002年ファーストトラックが復活」


4月16日に公表された米国パブリック・シチズンによるTPA法案の分析です。市民アクション翻訳チームが翻訳しました。

この分析は、今回上程されたTPA法案が2002年~07年のTPAおよび廃案となった2014年の法案の焼き直しにすぎないなど多岐にわたる指摘をしています。その内容は、議会の権能や要求を記しているものの、いったん妥結すれば他の参加国が同意しなければ日程上も行使する条件の無いもので、貿易協定に関する憲法上の議会の権限を奪うものでしかなく、また一部の新たな内容もそれを担保する措置が盛り込まれていないことなどを批判しています。そして実際に、過去の貿易協定では結局議会の要求は考慮もされず、協定に盛り込まれることはなかったとしています。さらに透明性の点においても今回の法案は、過去の、例えば1988年ファーストトラックにおいて交渉経過などが都度公開され、議員や議会職員が自由に閲覧できたこと、必要な場合にファーストトラック権限をはく奪する場合の手続きなどに比較すれば不充分なものでしかない、と批判しています。
その上で、昨年来の米国議会の根強いTPA批判、現在も不透明な議会の情勢などから成立の可能性は低いと断じています。(2015年5月25日時点)
先に翻訳をして紹介した、米議会委員会によるTPA法案の節ごとの概要説明と合わせて読んでいただくのもよいと思います。
この間の米国議会での攻防、TPA法案の内容と取り扱われ方をフォロ-しながら、法案としての不充分さよりも、議会と行政府との関係、貿易協定の進められ方など民主主義の観点からは問題点だらけで抜本的な見直しがされてしかるべきであり、そのことは当然日本にも当てはまることを感じた次第です。(2015年5月25日:翻訳グループリーダー・近藤康男)(翻訳:清水 亮子/監修:廣内 かおり)

 
TPA法案分析:ハッチ法案で議会と人々から幅広く反対を受けた、意見の分かれる
2002年ファーストトラックが復活

 2015年のハッチ法案(ハッチ上院財政委員長主導のTPA法案)は、廃案となった2014年ファーストトラック法の文言の焼き直しであり、9120億ドルの貿易赤字、製造業における何百万人もの失業、公共の利益のための政策への攻撃をもたらしたものと同じ、破たんした貿易モデルの拡大版となる。

2015年4月16日】
本日(4月16日)上院財政委員会に提出されたハッチ・ファーストトラック法案は、ほとんど全ての民主党下院議員とかなりの数の共和党下院議員がすでに反対を表明している、意見の分かれるファーストトラック手続きを復活させるものである。
ハッチ・ファーストトラック法案の条文のほとんどは、2002年のファーストトラック法の焼き直しだった2014年のファーストトラック法案を一字一句複製している。
今回の法案は、祖父条項(※注)として、ほぼ合意に至っているTPPにファーストトラックを適用することを明示し、ファーストトラックの手続きの3~6年の延長を可能にしようとするものである。また、強制力を持つ通貨操作規制をTPPに盛り込むべきとする超党派でかつ上院・下院の垣根を越えた要求を、オバマ政権が却下した後でさえ、なお、この法案によって議会の憲法上の貿易権限を奪おうとするものである。
※注「祖父条項」:ある法律制定前に既に合意されている法律や既得権などが優先される。

本日上程された法案は、上院財政委員のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)、下院歳入委員長ポール・ライアン(共和党、ウィスコンシン州)、上院財政委員会筆頭理事ロン・ワイデン(民主党、オレゴン州)が提案したものだが、下院民主党の提案者は一人もいなかった。
過去21年の間にこのようなファーストトラック権限が議会で承認されたのは2002~07年のもの一度しかない。1998年には、当時のビル・クリントン大統領のファーストトラックが71人の共和党議員と171人の民主党下院議員に反対され否決された。

本日上程の法案によって、以下のようなことが起こる可能性がある。

・行政府にいっそう強い権限が与えられ、貿易協定の相手国を一方的に選び、交渉を通じて協定の内容を決定し、署名し、妥結させることができるようになる。議会の交渉目的に適合するかどうかに関わらず、これらのことが全て、議会による協定内容承認のための採決前に可能となる。

・行政府には、ホワイトハウスが協定の施行のために「必要あるいは適切」と決定したあらゆる条項が盛り込まれた法律を作成する権限が与えられる。このような法律は、議会の通常の委員会による審議にかけられることはない。つまり今の政権と今後の政権は、ファーストトラック権限を伴う貿易協定の交渉において、思うがままの条項を盛り込むことが可能となる。

・両院とも90日以内の採決が求められる。議会の交渉目標に合うかどうかにかかわらず、いかなる修正も認められず、審議はそれぞれ20時間以内に制限される。   

新しい「高速道路の出口」を作るのではなく、過去のファーストトラック法案にあった実施不可能な条件と同じものを、この法案は文字通り複製している。つまり、ある協定をファーストトラックから除外する「手続き否認」の仕組みを使えなくするような条件である。それを実施する決議は、上院財政委員会と下院歳入委員会の両方で承認され、その後60日以内に両院で可決しなければならない。(Sec.6(b)(1-2)) この点に関するこの法案の新しい特徴は、新しい“協議と法案遵守“手続きであるが、この手続きは協定が署名・妥結されて初めて使うことができる。しかしこの時点では、協定の変更は、すべての交渉相手国が再交渉の再開と条文の変更に合意した場合のみ可能である(おそらくは米国の更なる譲歩をも引き出した後になるだろう)。(Sec. 6(b)(3-4))この手続きにおいては、ファーストトラックの要件からある協定を除外するには、60人の上院議員の承認が必要である(※注)。上院議員の単純過半数の「反対」票が、協定そのものに対して同じ効力を持つにも関わらず、である。これとは対照的に、1988年のファーストトラックは、下院歳入委員会と上院財政委員会のいずれかの単純過半数の採決で協定をファーストトラックの要件から除外することが出来、かつ本会議での採決をしなくてもできるようにしている。そして、そのような否認行為は、大統領が貿易協定に署名・妥結する前に可能とされていた。 (19 USC 2903(c)(2)(B))
※注「60人」は単純過半数の50票以上である。
※注“協議と法案遵守“手続き:TPA法案の第6節は大統領が法案に定めたいくつかの条項を遵守しなかった場合、議会がファースト権限手続きを撤回出来ることについて定めている。

ハッチ法案の分析: 中心的な条項は2002年ファーストトラックと同一
2014年ハッチ・キャンプ・ボーカス・ファーストトラック法案と同様に、今回の2015年のハッチ法案は2002年に承認され2007年に失効したファーストトラックに含まれた手続きを複製している。

大統領には、一方的に交渉相手を選び、ファーストトラック手続きの適用される協定の交渉を始める権限が与えられる。2002年のファーストトラックと同様に、今回のハッチ法案では、この権限には形式的な協議、及び交渉が始まる90日前(休日を含む)に議会に通告するという条件がついているだけだ。2002年ファーストトラックを複製しており、この法案は、どの交渉相手国に対してファーストトラックによる対応が開始されるか選択する役割を議会に与えていない。

大統領は協定の内容を一方的に左右する権限を与えられるだろう。2002年ファーストトラックと同様、今回のハッチ法案にある議会の定めた貿易交渉の目的を強制することができない。米国の交渉担当者たちが交渉目的のリストを手にしているかどうかにかかわらず、このハッチ法案では、議会が採決する前に貿易協定に署名・妥結する権限を大統領に与ることになる。そしてその際、行政府が協定を実施するための法律を立案出来ること、90日以内に上院と下院で採決されること、修正は一切修正が認められないこと、最長で20時間しか審議の時間がないことは保証済みである。 (Sec.3(b)

民主党も共和党の大統領どちらも歴史的にファーストトラックに盛り込まれた交渉目的を無視してきた。北米自由貿易協定(NAFTA)と世界貿易機関(WTO)の設立のために使われた1988年ファーストトラックには、労働条件に関する交渉目的が含まれていたが、どちらの協定にもそのような条項は盛り込まれなかった。2002年ファーストトラックには、優先事項に通貨操作に対応する仕組みが挙げられたが、このファーストトラック権限のもとで締結されたいかなる協定にもそのような文言は盛り込まれなかった。

大統領には、形式的な協議と暦日90日の事前通告だけを条件とする簡略化された検討で、協定に署名・妥結する権限が与えられる。(Sec. 3(b) and 6(a)) 行政府だけが、交渉がいつ「決着した」かを決定できる。今回のハッチ法案にある議会の「協議」の仕組みは、協定に署名する前に、それが議会の定めた交渉目的に合うものかを認証する何の権限も仕組みも議会に与えていない。

大統領には、署名した協定を実施するための広範囲な法律を立案して、検討にかける権限が与えられるだろう。(Sec. 3(b)) 2002年ファーストトラックのように、このような法律は、議会の委員会による最終審議と修正にかけることになる。2002年ファーストトラックはこの(協定施行のための)法律について、大統領が「そのような貿易協定を実施するために必要あるいは適切とみなす場合は、米国の法律にあらゆる変更を盛り込むことができる」と書かれている。 (19 USC 3803(b)(3)(B)(ii)) 実際、ファーストトラック権限のこの部分に「適切な」という文言を入れたことは、これまでも議論を呼んでいるところである。行政府に多大な自由裁量権を与え、議会が協定の実施にとって必要だと考えるか否かに関わらず、既存の米国の法律を変更できるようなるためである。実際に、「適切な」という文言によって、共和党政権においても民主党政権においても、委員会の最終審議を避けて通り、本会議での修正も受けることなく、本筋ではないような変更を既存の米国の法律に加えることを可能にしてきた。ハッチ法案では、「適切な」という文言を削除する替わりに、2002年ファーストトラックにあった「必要あるいは適切」の文言の前に「厳格に」という無用な修飾語を加えている。 (Sec.3(b)(3)(B)(ii)) 2002年ファーストトラックと同様、実施法案に行き過ぎた条項を盛り込むことに対して異議を申し立てるための議事手続きやその他の仕組みは皆無である。

2002年ファーストトラックと同様、今回のハッチ法案は下院に対して、そのような実施法案について議会開催日60日以内に採決することを要求し、上院ではその後30日以内に採決することを求めている。

2002年ファーストトラックと同じく、今回のハッチ法案では、実施法案について全く修正を認めず、上院・下院での討論の時間は20時間しか許されない。そして上院を含め採決は、単純過半数で可決される (Sec. 3(b)(3)(A))

今回のハッチ法案には、2002年ファーストトラック権限にはなかった交渉目的が含まれる。それらの多くは2014年法案にも含まれていた。しかしながら、この法案で改めて制定しようとしているファーストトラックの内容には、これらの交渉目的を強制する力が全く保証されていない。

本日上程された法案には、人権に関連する交渉目的が盛り込まれている。「国際的に認められた人権尊重の促進」である。 (Sec. 2(a)(11))  
しかし法案は基本的なファーストトラックの内容を変更していないので、大統領はやはり一方的に貿易相手国として深刻な人権侵害を行っている国を選び、交渉を開始し、交渉を決着させ、人権侵害を行っている政府との貿易協定に署名・妥結することができ、議会にはそれを止めるよう大統領に要求する機会は与えられてない。
目的にかなっているかどうかの妥当性を判断するファーストトラックの手続きに加えて、「新しい」ものとして宣伝されている今回のハッチ法案の交渉目的のなかには、実は2014年法案と全く同じものがあり、それは2002年ファーストトラックでも言及されている。たとえば2002年ファーストトラックには、以下のような通貨措置が含まれていた。「貿易協定加盟国の間に、著しくかつ予測しなかった通貨の動きによる貿易上の結果が起きていないか調査し、かつ外国の政府が国際貿易において競争上の優位性を強化するために自国通貨の操作に関与していないか詳細に調査するための協議の仕組みの構築に努める。」(19 USC 3802(c)(12)) 今回のハッチ法案で「新しい」と言われる条文は、2014年法案にあったものを一言一句複製したものだ。「通貨に関する慣行に関する米国の主要な交渉目的は、米国の貿易協定の相手国が、有効な国際収支の調整を妨げるためあるいは不公平な貿易上の優位性を獲得するために為替レートを操作することを、協調のための仕組み、強制力のあるルール、報告、監視、透明性、その他の適切な方法を通じて、回避することにある。」(Sec. 2(b)(11))仮に議会がこの貿易交渉の目的が満たされることを担保する権限を持っていたとしても、この貿易交渉の目的の文言そのものは、ファーストトラック措置を有するTPPその他の貿易協定の中に通貨操作に関する強制力ある規制を盛り込むことを求めてはいない。両院の超党派の過半数の議員からTPPに通貨操作の強制力ある規制を盛り込むべきと要望があるにもかかわらず、今回のハッチ法案の交渉目的は、ファーストトラックを伴うTPPやその他の協定のための、いくつかの拘束力のない選択肢のひとつとして「執行可能なルール」を挙げているにすぎない。

今回の法案における労働と環境に関する交渉目的は、2014年ファーストトラック法案の複製である。2014年ファーストトラック法案の交渉目的は、「2007年5月10日合意」の条項を想起させるものであり、政府の報告書によると効果がないことが判明している。(Sec. 2(b)(10)) 「5月10日合意」の条項が、2002年ファーストトラックの労働に関する貿易目的の範囲を越えている一方で、2014年11月に公表された米国連邦議会行政監査局(GAO)の報告書によれば、調査対象となった5つの自由貿易協定(FTA)の相手国において、FTA協定に「5月10日合意」の労働の条項が盛り込まれている場合もいない場合も含め、広範囲な労働権侵害が確認された。
※注「2007年5月10日合意」:2007年5月10付けの貿易に関する方針についての超党派合意

透明性の拡大ともてはやされている条項は、実のところ、議会職員が貿易協定条文の草案を見るためには機密情報の閲覧許可が必要であるという、受け入れがたい慣行の法的根拠となるようなものであり、ブッシュ政権の貿易交渉でみられた透明性の水準にさえ達していない。

今回のハッチ法案は、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュの両政権下の米国通商代表部(USTR)の過去のやり方にお墨付きを与えるものにすぎない。この法案は、貿易協定が、国家安全保障に関わる機密取扱許可の対象であることを正式に指定し、議会職員が機密取扱許可を受けなければいかなる貿易協定の草案も閲覧できなくするような指針の策定をUSTRに求めている。今回のハッチ法案の他の「透明性」条項は、オバマ政権が異例なまでに透明性を後退させる前の、クリントン政権とブッシュ政権下の状況に戻るにすぎない。例えばNAFTAの交渉の際には、それぞれの交渉会合の後に国会内の機密確保がしっかりとした部屋にNAFTA協定を構成する全条文の最新版が置かれ、議員はそれを自由に閲覧できた。2013年夏、オバマ政権は、TPP条文の草案の閲覧を求める議員からの高まる圧力についに応え、議員が要求した章だけは閲覧できるようになったが、議会職員が(たとえ機密取扱の審査済みでも)同席することも、メモをとることも許されなかった。議員の閲覧がブッシュ政権下と同じ程度に戻っただけで、一般の人や報道関係者が貿易協定の草案を目にすることができないとは、とても褒められた話ではない。(Sec. 4(a)(3))

一般の人々に対する透明性について、今回のハッチ法案は実にブッシュ政権の公開性にすら達していない。ブッシュ政権下の米州自由貿易地域の交渉の際、USTRは各種の交渉中のものを含む条文の草案を誰でも読めるようにUSTRのウェブサイトに公開していた。このハッチ法案には、ファーストトラックを付与された貿易協定の条文の草案を一般に公開するよう求める内容は何も盛り込まれていない。新しい条項では、USTRに対して貿易協定条文のウェブ公開を署名60日前までに求めているが、よく読むとこのタイミングは、協定が仮調印され条文の変更が締め切られた30日後となり、人々や議会が変更を要求するには遅すぎる段階になって初めて条文が公開されることになるのである。

「議会による監督の強化」ともてはやされているものは実際、2002年議会監督グループを「交渉に関する下院助言グループ」および「交渉に関する上院助言グループ」と改名したものにすぎない。

2002年ファーストトラックは、議会幹部たちに指名された議員からなる議会監督グループ(COG)を設置し、そのグループの議員はUSTRから交渉の状況について特別な説明を受け、助言者として交渉に出席することができた。このハッチ法案はCOGを改名して「交渉に関する下院助言グループ」および「交渉に関する上院助言グループ」とし、上院と下院の共同活動と説明している。しかし、議会助言者グループの任命手続きと両院の貿易協議グループの役割の範囲は、2002年ファーストトラックに盛り込まれていたものと同様のものである。そしてまさにこの文言と同じものが、2014年法案にも盛り込まれていた。(Sec. 4(c))    

今回のハッチ法案はUSTRに対し、議会、一般の人々、及び民間部門の助言者との協議のための指針を作成するよう指示している。しかし実際にはこの条項は単に、USTRがこれらの利害関係者との関係をどのように持つのか、あるいは持たないのかを、文書化することを求めているにすぎない。 (Sec. 4(a)(3), Sec. 4(b)(3), Sec. 4(d) and Sec. 4(e))

今回のハッチ法案が第114回議会を通過する公算は低い

本日上程されたハッチ法案は、2014年1月9日下院に提案されたとたんに否決されたハッチ・キャンプ・ボーカス法案に、ほんの細かな修正をしたものにすぎない。ハッチ・キャンプ・ボーカス法案を支持した下院民主党議員は、201人中8人で、文字通り一握りしかいなかった。そして下院共和党議員のうち今回のハッチ法案に「賛成」票を投じるのは、100人に満たないだろう。一方で、2013年にファーストトラックに反対する書簡に署名した議員が27名おり、そのうち20名は再選されて第114回国会に戻ってきている。だからこそ、2014年のハッチ・キャンプ・ボーカス法案は本会議での採決にかけられることはなかったのである。2014年の選挙でも、下院共和党幹部の計算は変わらなかった。2015年1月、ジョン・ベイナー下院議長(共和党・オハイオ州)は、ファーストトラック法案が下院を通過するには、民主党の揺るぎない賛成票が50票必要と述べた。

新人の民主党下院議員17人のうち14人が、議員になって2ヶ月と経たないうちにファーストトラックに反対あるいは懸念を示す書簡に署名した(15人のうち12人が2014年11月の選挙で当選し、2人は2014年の補欠選挙で当選した)。ファーストトラックについて立場を公にしないようオバマ政権から強い圧力がかかっているにもかかわらず、このようなことが起きたのである。そして、過去の議会とは対照的に、かなりの数の共和党新人議員が、企業の働きかけをよそにファーストトラック支持表明を拒んでいる。

2013年の一連の書簡は、2002年ファーストトラックの委任の仕組みに対する幅広い反対を示していたが、今回のハッチ法案はそれを復活させるかもしれない。民主党議員151人がオバマ大統領にあてて送った書簡は、ファーストトラック権限に反対し、貿易協定の交渉と承認のための新たな仕組みの創設を求めた。27人の共和党員もまた、オバマ大統領あての2通の書簡のなかで、ファーストトラック反対を表明した。そして下院歳入委員会の委員を務める民主党議員のほとんどが、共同で追加の書簡を送り、古いファーストトラック手続きがほとんど支持されていないと記した。

本日上程された法案は、ファーストトラックとTPPに対する反対が人々の間で幅広く高まっているにもかかわらず提案された。2015年にワシントンポストとNBCニュースが行った超党派の世論調査によれば、アメリカ人の75%がTPPを拒否あるいは延期すべきと答えている。ここ数週間で、メリーランド、オレゴン、ワシントン、コネチカット、コロラド、その他の州の有権者たちがファーストトラックに抗議し、過去のファーストトラックが地域の雇用、中小企業、農家にもたらした壊滅的影響について訴えている。最近のデータによれば、過去の同様の貿易協定によって既に米国は1兆ドルの貿易赤字という危機的状況に立たさされ、製造業における500万人のアメリカ人の雇用が奪われ、米国における所得の不平等が拡大している。

このハッチ法案はTPP、米国とEU間の環大西洋自由貿易協定(TAFTA)、新サービス協定(TISA)にも祖父条項を適用し、新たな法律の適用を免除している。(Sec. 7)TPPとTAFTAのためのファーストトラックは、特に議論になるところだ。これらの協定には、特許、著作権、金融規制、エネルギー政策、政府調達、食の安全などの分野が含まれ、このような配慮を要する非貿易事項に対する議会や議員の政策の維持あるいは制定を制約しているからだ。ファーストトラックは1970年代に設計されたものであり、そのころは、貿易交渉は関税、数量割り当てなどに狭く限定され、今日の協定のように網羅的に幅広い非貿易的政策が含まれるようなことはなかった。

ファーストトラックは特異な存在である。過去21年で有効であったのは5年にすぎない。

民主党の大統領も共和党の大統領も、ニクソン時代のファーストトラックの仕組みを通じて、憲法上の貿易権限を大統領に委任するよう、議会の説得に躍起になってきた。ファーストトラックが実施されたのは、NAFTAの議会通過とWTO設立協定以降の21年のうち5年間にすぎない(2002年~2007年)。

ビル・クリントン大統領の2期目に、ファーストトラック権限を獲得しようと2年間にわたって取り組んだが、1998年に171人の民主党議員に加えて、当時の共和党ニュート・ギングリッチッチ下院議長に強く抵抗した71人の共和党議員が反対し、上院で否決された。クリントンは在任8年間のうち6年間はファーストトラックを持っていなかったが、それでも100以上の貿易協定を実施した。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2年という時間と膨大な政治的資本をつぎ込み、2002年~2007年のファーストトラックの権限を獲得した。それは、共和党が支配する下院を一票差で通過し、2007年には失効した。新たにファーストトラック権限を獲得しようとしたブッシュの努力は、ブッシュが在任中に本会議の採決にかけられるところまで進むに足る支持を得ることはなかった。
(翻訳:清水 亮子/監修:廣内 かおり)

2015年5月12日火曜日

5.20 TPP緊急国会行動を開催!「 閣僚会合での『合意』は許さない! TPP交渉、最大の山場へ。総力を結集しよう!」

STOP TPP!! 市民アクションも賛同団体となっている「5.20TPP緊急国会行動」を5月20日に開催します。前日19日には日比谷で「TPPを考えるフォーラム 」を開催します。閣僚会合前の行動です。ぜひみなさん参加下さい。
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5.20 TPP緊急国会行動
閣僚会合での『合意』は許さない!
TPP交渉、最大の山場へ。総力を結集しよう!

アメリカの大統領選の本格化を控えて、2015年夏前後に交渉「合意」は「時間切れ」を迎えざるを得ません。これを避けるため、515日からの首席交渉官会合に続いて5月26日からTPP閣僚会合の開催が取りざたされています。
日本政府は、一度は国会議員にだけは交渉テ キストを開示するかのように発表しながら、急遽これを取り消すなど、「合意」のためにはなりふりかまわぬ態度。国会決議違反、秘密交渉、そして人々の暮ら しもいのちも、地域も、そして主権さえ破壊するTPP「合意」は絶対に許されません。
この山場にあたって、これまで全国各地で多様な形でTPP反対の運動を進めてきた団体・個人がよびかけあって、「合意など許されない!」の声を、政府に国会に、社会に向けてアピールする緊急行動に取り組むことを呼びかけます!

5月20日(水)、国会へ、官邸へ、社会に向けて
私たちの声を強く強く届けましょう

<行動内容>
18:45 日比谷公園霞門集合
18:45 デモ出発に当たっての意思統一
19:00 デモ出発・請願
19:45 デモ終了→衆議院第2議員会館前へ移動
20:00 衆議院第2議員会館前アピール行動
=政府あてアピール採択(20:30終了予定)


<よびかけ人(50音順) 58日現在 内田聖子(アジア太平洋資料センターPARC事務局長)/加藤好一(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長)/坂口正明(全国食健連事務局長)/住江憲勇(全国保険医団体連合会会長)/醍醐聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会よびかけ人)/中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長)/庭野吉也(東都生活協同組合理事長)/藤田和芳(大地を守る会会長)/山田正彦(元農林水産大臣)/山根香織(主婦連合会会長)/山本伸司(パルシステム生活協同組合連合会理事長)

<賛同団体(順不同) 511日現在 STOP TPP!!官邸前アクション/STOP TPP!!市民アクション/TPPに反対する人々の運動/東都生活協同組合/日本消費者連盟/Mamademo/PPIネット・9条の会/フォーラム平和・人権・環境/全日本農民組合連合会/全日本民主医療機関連合会

※当日参加できない・遠方の団体もぜひご賛同ください。賛同金などは発生しません。賛同いただいた団体名はチラシやウェブサイトに記載する他、議員への請願書や政府への要請書に連ねさせていただきます。非公開を希望される場合は公開いたしません。
賛同団体申し込みは↑


<事務局連絡先>
国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)
151-0053 渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3
  ℡03-3372-6112 FAX03-3370-8329
E-mail : center@shokkenren.jp   5.20緊急行動ブログhttp://notppaction.blogspot.jp/

2015年5月11日月曜日

いよいよ公開!米国議会上程「TPA法案」の概要を翻訳


米国議会の両院委員会に上程された(修正前の)TPA法案の委員会スタッフによる節ごとの概要説明を「STOP TPP!! 市民アクション」翻訳グループが翻訳しました。

注目は第5節と6節です。通知、協議および報告」には、新聞等のメディアが報道している“妥結の◯日前”“妥結後◯日以内に”といった、議会や国民への公開に関わる詳細が書かれています。また「この決議によって、両院は共同で行動し、貿易権限手続きを手早く撤回することが可能になる」と、“権限はく奪”に関する詳細も述べられています。

全体を読んでわかることは、米国議会は国民への報告や協議など透明性に関する強い要求です。報道された以上に様々な要求が掲載されています。また、貿易交渉の目的もはっきりしています。米国の利害と覇権むき出しの様相を帯びているといえるでしょう。

市民アクションの翻訳グループは今後、米国シンクタンク「パブリックシチズン」による6枚ほどの詳細分析を翻訳し、当サイトで発表する予定です。
 
ここから見えるのは、いい意味でも悪い意味でも米国における議会の立場の堅持と、日本とは異なる「アメリカ民主主義」を感じさせられる点かもしれません。(15年5月11日/翻訳グループリーダー・近藤康男)(翻訳:田中久雄・田所剛/監修:廣内かおり)

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Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of2015: Section-by-Section Summary

2015年超党派連邦議会通商優先事項及び説明責任に関する法律:各節の要約

※原文へのリンクは以下に(法案の原文へのリンクはこの翻訳の末尾に)
概要
第1節: 略称
第2節: 貿易の交渉目的
第3節: 貿易協定に関する権限  
第4節: 議会による監督・協議・情報入手の権利
第5節: 通知、協議および報告
第6節: 貿易協定の履行
第7節: 交渉がすでに開始された貿易協定の取扱い
第8節: 主権
第9節: 小規模事業体の利益 
第10節:定義
第11節:改正手続き

第1節:略称

本節では、この法案を「2015年超党派連邦議会通商優先事項及び説明責任に関する法律」(法律)と称することとする。

第2節:貿易交渉の目的

本節は、3部で構成される: 全体的な貿易交渉の目的、主要な交渉目的および能力向上とその他の優先事項である。

第2節(a)項は、貿易協定における米国の全体的な貿易交渉の目的を定める。これには次が含まれる。米国の製品およびサービスに対する開放された、公平な、そして互恵的な市場参入を獲得すること;米国の貿易および投資を歪曲するような、貿易および投資と直接関係する障壁の縮小および撤廃を獲得すること;紛争解決を含む国際的な貿易および投資の規律と手続きを一層強化すること;経済成長を促進し、生活水準を向上させ、米国の競争力を高め、米国の完全雇用を促進し、そして世界経済を拡大すること;貿易政策と環境政策が相互補完的になるようようにし、環境の保護および維持とそのための国際的手段の強化を追及し、一方で世界の資源利用を最適化すること;労働者の権利および児童の権利に対する配慮を促進すること;環境および労働に関連する法律が、結果として貿易の促進を弱体化することがないようにすること;貿易協定が、小規模事業体に等しく国際市場に参入できるようにし、小規模事業体に不均衡に影響を及ぼす貿易および投資の障壁を縮小又は撤廃すること;最悪の形態の児童労働の禁止および廃止に関するILO条約182条の批准および完全な遵守を促進すること;貿易協定が、確実に貿易および投資の相関的で分野横断的特性を反映し、助長するものとなるよう保証すること;米国の貿易相手国のより開かれた民主主義社会の創生と国際的に認められた人権尊重の促進に寄与するものとして米国の貿易相手国が良好な統治、透明性および法の支配を強化すること;国際貿易の基盤としてのインターネットの重要性を認識すること;そして正当な健康や安全性の確保、極めて重要な安全保障や消費者利益の保護を含め、その他の正当な国内の目的に配慮すること、である。

第2節(b)項は貿易協定に対する米国の主要な貿易交渉の目的を定める。
(1)物品貿易: 第2節(b)項の(1)で規定される物品貿易の主要な交渉目的は、世界的な価値連鎖(ヴァリュー・チェーン)の活用を通じることを含め、米国の輸出機会の拡大、および貿易のより公平で、より開放的な条件を獲得すること;米国製品に対する市場参入機会を減少させたり米国貿易を歪めるような、貿易に直接関係する外国政府の関税および非関税障壁を縮小又は撤廃すること;互恵的な関税および非関税障壁撤廃の合意を獲得することである。

(2)サービス貿易: 第2節(b)項の(2)で規定されるサービス貿易の主要な交渉目的は、世界的な価値連鎖の活用を通じることを含めて米国のサービスの機会の拡大、およびより公平で、より開放的な貿易条件を獲得することであり、そのために内国民待遇および市場参入を否定し、あるいはサービス供給事業者の設立または活動を不当に制限する規制およびその他の障壁を縮小または撤廃させることである。本節はまた、既存のサービスおよび新たなサービスの両方に対して高い基準のサービスを引き受ける意思と能力のある国々との多国間協定によるものを含め、あらゆる手段を通じてこの目標追求を促す。
(3)農産物貿易: 第2節(b)項の(3)で規定される農産物に関する主要な交渉目的は、以下のことを確実にすることにより、輸入品が米国市場において享受しているものと同様の競争的市場参入の機会を米国からの農産物輸出品に対して獲得し、より公平で、より開放的な貿易条件を達成する、という議会の指示を含むものである。それは、透明性、規制の調和、国際基準と科学的リスク評価の遵守を重視した、実効性のある衛生植物検疫措置(SPS)を確保する一方、各国は、それぞれの国際的責務と調和する方法で、人類、動物又は植物の生命ないし健康を保護してもよいことを認め;関税を縮小又は撤廃する一方で、米国にとって輸入に配慮を要する(センシティブ)産品には調整のための期間を与え;家族経営農場および地域社会を支えるための、しかし貿易をゆがめることのない施策は維持し;そして補助金、国営貿易企業による貿易を歪める活動、および不当な商取引条件のような市場をゆがめる慣行を縮小又は撤廃することによるものを含むものである。交渉官は、交渉相手国が農産品貿易に関して現存する責務を全うしているか否かを考慮に入れ、米国産品に対する市場参入を弱体化するために、貿易相手国が地理的表示の保護または識別のための制度を不当に利用しないようにすることを指示される。

(4)外国投資:第2節(b)項の(4)は、外国投資に関する主要な交渉目的を規定する。これには、米国における外国投資家に、米国における米国の投資家以上に重要な権利は決して与えられないようにする一方で、しかし外国投資の障壁を縮小し、米国内と同等の権利を米国の投資家の海外投資において確保する、という議会による指示を含む。そしてそのことには、内国民待遇に対する例外の縮小又は撤廃;投資に関する送金の自由;強制された技術移転および投資の設定と運用に対するその他の不当な障壁の縮小又は撤廃;収用及び収用に対する補償についての米国の法原則に合致する基準の確立;米国の法原則に合致する公正で公平な待遇基準の確立;そして透明性のための最大限の措置を保証する投資家対国家間の紛争解決のための改善された仕組みを含む、紛争解決のための意味ある手続きの提供ということを含むものである。

(5)知的財産権: 第2節(b)項の(5)は、知的財産権に関する主要な交渉目的を規定する。これには、貿易関連知的財産権協定(TRIPS)に関するWTO協定の完全な履行を保証し、知的財産権を統制しているあらゆる貿易協定の条項が米国国内法と同等水準の保護基準を反映することを保証することを通じて充分かつ有効な知的財産権保護を促進するという米国議会の指示を含むものである。つまり、正当なデジタル貿易の促進によるものを含む知的財産の送信およびと配信の新技術や方法の強力な保護の提供;知的財産権に関する差別の排除;(知的)財産保有者がインターネットを通した自身の作品の利用管理、およびその作品の無許可利用防止のための法的かつ技術的手段を有することの保証;知的財産権の強力な執行の提供;及びサイバー上の窃盗および海賊行為によるものを含む知的財産権侵害への政府関与の防止又は排除である。また、主要な交渉目的には、知的財産権の保護を期待する米国人が公正かつ公平で差別のない市場参入の機会を獲得すること、またTRIPS協定と公衆衛生に関する2001年宣言を尊重し、貿易協定によって革新を助長し医薬品入手が促進されるようにすることも含まれる。

(6)商品およびサービスのデジタル貿易と越境データフロー(国境を越えるデータの流出入): 第2節(b)項の(6)は、商品およびサービスのデジタル貿易と越境データフローに対する主要な交渉目的を規定する。これには、すべての貿易に関する合意はデジタル貿易および越境データフローに適用されるようにし;電子的に配送される商品およびサービスは、物理的な形態で配送される商品と同等に取り扱われ、また最大限に自由な貿易待遇を確保すべく分類されることを保証され;政府はデジタル貿易を妨害したり、越境データフローを制限したり、各ブラウザ-側でのデータ蓄積での記録の保管またはデータ処理を要求しないようにし;そして正当な政策目的により必要とされる国内規制は貿易に関して最小限度の制限に留められ、非差別的で透明性があり、開放された市場環境を促進するようにするという議会の指令が含まれる。この条項はまた、世界貿易機関(WTO)の電子伝送に関する関税の暫定不賦課が延長されるよう指示する。

(7)規制的慣行: 第2節(b)項の(7)で規定される米国の製品、サービスおよび投資に対する市場参入を弱体化するために使われる外国政府の規制的又はその他の慣行に関する主要な交渉目的は、次の通りである。規制の策定過程の透明性および策定過程への参加機会の向上を実現すること;提案された規制が信頼できる科学的根拠、費用対効果分析、リスク評価又はその他の客観的証拠に基づいていることを要求すること;規制慣行を改善し、規制の調和を促進させること;基準策定過程のより高い開放性、透明性および収斂を求めること;規制の調和、同等化又は相互承認を通じて規制の互換性を高め、世界的で相互利用が可能な基準の使用を促すこと;米国商品の市場参入を阻む価格操作および参考価格設定のような政策の撤廃を実現すること;政府の規制による補償制度に透明性があり、公正な手続きを提供し、差別的でないようにするとともに、米国製品が十分に市場に参入できるようにすること;公開されていない所有者の情報を政府が収集することは、適法で正当と認められる規制上の利益を満たすために必要なものに限定され、その情報は情報公開から保護されるようにすることである。

(8)国有および国営企業: 第2節(b)項の(8)は、国有企業に関する主要な交渉目的を規定する。これは、商業活動にまで国有企業を優遇するような貿易の歪みおよび不公正な競争を撤廃又は防止する責務を追及し、国有企業による関与は商業的観点にのみ基づくようにすることである。

(9)現地化という貿易障壁: 第2節(b)項の(9)で規定される現地化という貿易障壁に関する主要な交渉目的は、現地固有の革新を進める措置を含め、市場参入又は投資の条件として、米国の生産者およびサービス提供者に対して、施設、知的財産又はその他の資産を相手国内に置くように要求する措置を撤廃および防止することである。

(10)労働および環境: 2節(b)項の(10)で規定される労働および環境に関する主要な交渉目的は以下を含む。米国の貿易協定の相手国が、国際的に認められた中核的労働基準及び一般的な多国間環境協定の下でその責務を履行する措置を採用し維持していること;法律や規則の放棄または免除が1つでも国際的に認められた基準と矛盾する場合には、米国と相手国の間の貿易または投資に影響を及ぼすような方法で、国際的に認められた中核的労働基準を履行する法律又は規則の放棄や免除を行わないこと;環境法で与えられた保護を弱体化又は減少させる方法および米国と相手国との間の貿易および投資に影響を及ぼす方法で、環境法の放棄または免除を行わないこと、但し法律で適用されている場合と、一般的な多国間環境協定の下での責務と矛盾しないとされた場合を除くものとする;米国と相手国との間の貿易および投資に影響を及ぼす方法で、持続的又は反復的な一連の作為又は不作為を通して、必ず環境および労働の法律を効果的に実行させること、である。主要な交渉目的はまた、次のことを含む。環境に関して、締約国は検察的裁量権を行使し、より優先順位が高いと判断された他の環境法に関する執行のための資源の配分を決定する権利を有することを認めること;労働に関して、執行の資源の配分は、締約国の労働に関する責務を全うしない理由にならないことを認識すること;中核的労働基準に対する配慮を促進し、また持続的開発の促進を通じて環境を保護するため、米国の貿易相手国の能力を強化すること;持続的発展を不当に脅かす政府の慣行又は政策を縮小あるいは撤廃すること;米国の環境関連の技術、製品およびサービスの市場参入の改善を追求すること;米国との貿易協定の相手国における労働、環境、健康、および安全に関する政策および慣行が、米国の輸出品およびサービスを恣意的にあるいは不当に差別せず、又は貿易に対し形を変えた障壁として機能しないことを保証すること;法的規制のある労働および環境的義務が、他の法的規制のある義務と同様の紛争解決方法に従うようにすること;貿易協定が、米国領土内において、労働又は環境に関わる法の執行を引き受ける権能を締約国政府に与える、と解釈されないようにすることである。

11)通貨: 第2節(b)項の(11)で規定される通貨措置に関する主要な交渉目的は、協調的な仕組み、強制力のある規則、報告、監視、透明性確保、あるいは必要に応じてその他の手段により、米国との貿易協定の相手国が、有効な国際収支の調整を妨げるためや、不公正な競争力を得るために、為替レ-トの操作をすることをしないようにすることにある。

12WTOと多国間貿易協定: 第2節(b)項の(12)で規定される世界貿易機関(WTO)に関する主要な交渉目的は、情報技術協定、政府調達協定およびその他のWTOの多国間協定の拡大と強化を含め、WTOの多国間および数カ国間の協定の完全な履行を実現し参加国を拡大すること;貿易促進に関する条約を含む新しい協定を通して、世界的な価値連鎖の活用によつことを含め米国輸出品のための競争力ある市場機会を拡大し、そして貿易のより公正で、より開放的な条件を獲得すること;地域間の貿易協定がWTO規律に適合するようにすること;WTO諸機関への積極的な参加を通して、WTO加盟国の協力を高めること;そしてWTOとその他の国際機関の協力を促すことである。

13)貿易機関の透明性: 第2節(b)項の(13)で規定される貿易機関の透明性に関する主要な交渉目的は、WTO、その他の貿易協定により設立された機関およびその他の国際貿易の場における透明性の改善を追及することである。

14)腐敗防止: 第2節(b)項の(14)で規定される腐敗防止に関する主要な交渉目的は、外国政府の行為、決定又は不作為に影響を及ぼすために、金銭又はその他価値ある物品を使用する試みを禁ずる高い基準および効果的な国内の法執行の仕組みを獲得すること;米国人が貿易・投資活動を行う場合の条件を公平にすること;国際的な場における腐敗防止および反賄賂戦略の支援への関与を追及することである。
15)紛争解決および執行: 第2節(b)の(15)で規定される紛争解決に関する主要な交渉目的には次のことが含まれる。協定が一層遵守されることを目標に、効果的で、透明性のある、公平な方法で紛争の解決を規定する条項を追及すること;権限と責務を増やすことも、あるいは減少させることもなく、WTO小委員会と上級委員会が、明記されている通りにWTO協定を適用するそれぞれの権限と該当する検討基準を、遵守することを追及することである。
16)貿易救済法: 第2節(b)項の(16)に規定される貿易救済措置に関する主要な交渉目的は、反ダンピング、相殺関税およびセーフガード関連法を含む米国貿易関連の法を厳格に執行する権能;米国労働者、農業生産者および商業者が公正な条件で十分に競争ができるとともに、互恵的な貿易特権の利益を享受することができるようにするため、不公正貿易に対する規律やセーフガード条項の有効性を減ずるような協定を回避する権能;及びダンピングと補助金につながる市場の歪みに取り組み、救済する権能を、維持することにある。

17)国境税: 第2節(b)項の(17)で規定される国境税に関する主要な交渉目的は、歳入を間接税よりも直接税に主に依存している国々への不利益を軽減するため、内国税のための国境調整の扱いに関しWTO規則の修正を獲得することである。
18)繊維交渉: 第2節(b)の(18)で規定される繊維と衣類の貿易に関する主要な交渉目的は、米国市場において外国輸出品が享受している競争機会に実質的に同等な、外国市場において米国のために繊維および衣類の輸出機会を獲得すること、および繊維と衣類におけるより公正で、より開放的な貿易条件を達成することである。

第2節(c)項は、その他の優先事項を規定し、次が含まれる。貿易協定の下で米国の貿易相手国が責務を遂行できる能力を強化し;必要な場合は技術支援を供与し;適切な科学的知識に基づいた環境および人間の健康を保護するための基準の開発と履行を協議する仕組みを設け;多国間の環境協定への配慮を促してそれらの協定貿易措置とWTOの責務の間の一貫性について協議するための条項;そして貿易交渉と貿易協定に関連して引き受けた能力強化の取り組みについての年次報告である。

第3節:貿易協定の権限
第3節(a)項は、関税障壁に関する貿易協定の権限について規定する。この小節は、議会に対する通知の必要性と一定の制限を条件として、大統領が、2018年7月1日以前まで(貿易権限の手続きが延長された場合は2021年7月1日まで)、米国の貿易に対し過度に負荷のかかる関税や他の輸入制限を修正するため外国との貿易協定を締結すること、および貿易協定を実施する上で必要または適切であると大統領が判断した関税の変更を布告することを認める。 
これらの期日以降、当該貿易協定に対する実質的な修正もしくは追加はこの小節のもとでは認めない。この布告の権限は、本法律の制定日時点で5%以上の関税を半分(50%)以上下げるか、輸入の影響を受けやすい農産物の関税をウルグアイラウンドまたはそれに引続く協定のもとで適用できる関税率よりも下げるか、あるいは本法律の制定時点で適用される関税率以上に関税率を上げる協定には適用されない。
第3節(b)項は、関税と非関税障壁に関する合意のための貿易協定の権限について規定する。本小節は大統領に、関税および非関税障壁に取り組むために、議会との協議を条件として、貿易交渉に参加する権限を与える。
協定は、第2節の交渉目的に合致するための進展がみられ、大統領が第4節と5節に定められた条件を満たした場合にのみ、本小節のもとで締結されることができる。
本小節は2018年7月1日以前に締結された合意にのみ適用される(議会が貿易協定の権限を延長した場合は2021年の7月1日以前)。
これらの期日以降、本小節のもと、当該貿易協定に対する実質的な修正や追加は不可能となる。本小節は、本小節のもとで締結された貿易協定を履行する法律は、この法律がその貿易協定を承認する規定から構成され、そのような規定のみが貿易協定を履行する上で厳格に必要または適切である限りにおいて、1974年の貿易法の第151節に規定されている貿易権限手続きの資格を持つことを規定する。
第3節(c)項は、要請があった場合の大統領による貿易権限手続きの延長の手続きと、議会によりその延長が却下された場合の否認決議の検討のための手続きを定める。
1974年の貿易法第13節に基づき創設された貿易政策と交渉に対する助言委員会と国際貿易委員会もまた、議会に対し延長要請に関する報告書を提出することを指示される。
第3節(d)は、大統領に対し、全ての産業、製品、サービス部門に影響を与える関税と非関税障壁を対象とする交渉を追及し、それが実行可能で時宜を得ており、かつ米国の国益に適うのであれば既存の各分野の協定を拡大する交渉を行うことを指図する。また大統領に対し、その際、議会での全ての交渉目的を考慮することも指図する。
第4節:議会による監視、協議、情報入手の権利
第4節(a)項は議会に対する当該政権の協議の詳細な要件を規定する
交渉過程において米国通商代表部(USTR)は以下を行うことを明記する。要請があればいかなる議員とも会合をもつこと;機密扱いの資料を含む関係資料を提供すること;上院の財政委員会と下院の歳入委員会に対し緊密で時宜を得た協議を行うこと;各上下両院の交渉に関する助言グループおよび上下両院の貿易協定により影響を受け得る法律を管轄するすべての委員会と、緊密で時宜を得た協議を行うこと、上下両院の各農業委員会に対し、農業の貿易に関連した交渉と合意に関して緊密で時宜を得た協議を行うこと
本小節はさらに、協定の発効に先立ち、USTRは議会に対し、貿易相手国が協定の発効日に効力を発揮する規定を遵守するためにとった措置について、つねに知らせていなければならないことを規定する。
本小節はまたUSTRに対し、上院の財政委員会と歳入委員会の委員長及び筆頭理事と協議のうえ、発効から120日以内に議会との協調を高めるための文書化された指針を策定することを要求する。
本指針は、全ての議員に対する速やかな要旨説明と、文書および機密情報を含む議員、および必要であれば適切な機密事項取扱いの許可を得たスタッフ、そして委員会の責任上の観点から適切とされる、同様の許可を得た委員会のスタッフと情報共有を確実に行うためのものである。本指針は、貿易交渉によって影響を受ける可能性のある法律を管轄する全ての部局と機関に配付される。
第4節(b)項は、議会の貿易政策と交渉に関する助言者となる委員を任命し、その委員と協議する手続きを規定する。いかなる議員も議会助言者に任命されうるものとする。
貿易交渉の過程において、USTRはこれらの議会助言者らと緊密かつ適切な時期に協議しなければならない。助言者はUSTRから貿易代表団の公式な助言者であるとの信任を得ねばならない。 
第4節(c)項は各上下両院に、交渉に関する助言グループを設置し、助言者としての要件を明記するが、それには、貿易協定に影響される法律の条項を管轄するすべての委員会の委員長と筆頭理事の任命を含む。
本小節はUSTRに対し、助言者グループと協議し助言を求めることに関する要件についても概説し、また助言者グループに入っていない議員との調整を行う仕組みを規定する。助言者グループの議員は貿易代表団の公式な助言者としてUSTRからによる信任を得なければならない。
USTRは上院の財政委員会および歳入委員会の委員長および筆頭理事とともに、確定した日程に基づく詳細説明を含む、助言者グル-プとの最も実践的な調整のための指針を作成しなければならない。貿易協定締結後は、本小節は協定の遵守に関する協議を引き続き行うことを要求する。
第4節(d)項は一般市民に対しての協議手続きを定める。USTRは、上院の財政委員会および歳入委員会の委員長と筆頭理事と共に、一般市民の目にとまりかつ利用しやすい形での迅速な情報公開、連邦官報等を通じた市民の意見を求める機会を頻繁に設けることにより、透明性を高め、市民参加を促し、交渉過程での協力を促進するため、貿易交渉に関する市民の情報入手指針を策定することが求められる。この指針は、貿易協定により影響を受ける法律を管轄とする全ての部局や機関に配付されなければならない。   
第4節(e)項は1974年制定の貿易法により創設された貿易助言委員会との協議について言及する。USTRは、上院の財政委員会および下院歳入委員会の委員長および筆頭理事と共に、時宜を得た説明と、委員会が代表している部門および分野に関する事項についての意見を求める陳述の機会とを提供するため、助言委員会との関係強化の指針を作成することを求められる。  
本小節は、この指針が、機密資料を含む詳細且つ時宜を得た情報と資料を共有する手続を、助言委員会の各委員、および必要な場合には適切な機密事項扱い許可のある被任命者に対して提示することが必要であるとする。本指針は、貿易協定に影響を受ける法律を管轄する全ての部局や機関に配付されなければならない。 
第4節(f)項はUSTRの透明性に関する主任担当官を定める。その責任は、透明性の方針に関して議会と協議し、貿易交渉における透明性を調整し、市民を巻き込み、支援を行い、透明性の方針についてUSTRに助言を行うことである。
第5節:通知、協議、報告
第5節(a)項は、大統領が貿易交渉を発議する前に、議会が受け取らなければならない通知、協議、報告を規定する。第5節(a)項(1)は、貿易交渉への参加に先立ち、大統領は議会に90日前に書面による通知を提出し、上院財政委員会と議会歳入委員会、上下両院の該当する委員会、上下両院の交渉に関する助言者グループと協議しなければならないことを規定する。 
大統領はUSTRのウェブサイト上に、貿易交渉の目的の詳細かつ包括的な要約を掲載、常時更新し、またこの貿易協定がどのように目的を前進させ、米国に利益をもたらすかの説明を公表しなければならない。
5節(a)項(2)は農業に関する交渉に付随するものであり、大統領は全ての関連した関税の影響評価をしなければならず、また上下両院の各農業委員会と協議しなければならないことを明記する。魚介類の貿易、繊維や衣類のような配慮を要する輸入品については、追加的な協議と報告の要求が適用される。  
5節(a)項(6)は、大統領が、特定の国と交渉を開始するか否かの決定に際し、その国が米国に対する貿易と投資の関与をどの程度履行しているかを考慮することを要求する。
5節(b)項は大統領に対し、第3節(b)項に定めるすべての貿易協定の締結を行う前に上院財政委員会、下院歳入委員会、その他関連する議会委員会、上下両院の交渉に関する助言者グループと協議することを要求する。
この協議は、この協定の性格と、それが本法律の目的にどの程度適っているのか、そして現行の法律に及ぼす一般的な影響を含め、この協定の履行について取り扱う。
協定締結の少なくとも180日前に、大統領は、米国の貿易救済法への協定の影響に関して報告することも求められる。本小節は、さらに、下院または上院が、貿易救済法の改正案が、貿易救済に関する交渉目的と矛盾すると見なし、決議を検討するための手続きについて記述する。
本節は、大統領による貿易協定の締結の意向の議会への通知が提出されてから30日以内に、助言委員会が報告を提出することも求める。
5節(c)項は大統領に対し、締結前90日以内に国際貿易委員会(ITC)に協定の詳細を提出し、大統領の協定締結後105日以内にITCは大統領と議会に対し、協定が米国経済に及ぼし)影響を評価した報告書を提出することを求められる。この報告書は一般に公開されることとなる。
5節(d)項は、大統領が議会に協定の最終条文を提出する際に、上院財政委員会と下院歳入委員会に対し以下の報告書を提出することを規定する。能力開発を目的とした協議メカニズムの運用評価を含む、大統領が実施した協定に対する環境監査の報告書、協定が米国の雇用に与える影響に関する報告書、米国の労働法と慣行の修正が必要なすべての条項の記述とともに、協定に含まれる国に関する実質的な労働権報告書である。そしてこれらの報告書は公開されることとなっている。
5節(e)項は、大統領が議会に協定の最終条文を提出する際に、併せて国境における人事要件、管轄機関の人事要件、税関の基盤整備要件、協定が国家と地方政府に及ぼす影響、を評価する履行・施行計画の提出を規定する。この影響調査は公開されること。大統領の次回予算提出には、この案を実施するための財源要請も含まれなければならない。
5節(f)項は次に関する追加報告書の提出を要求する。貿易協定のもとで権利を執行するために米国が適用する罰則と救済の効果、1984年以降の貿易権限手続きのもとで執行されたすべての貿易協定の経済的な影響とその報告書の5年以内の更新、貿易協定に従ってとられる執行措置である。そしてこれらの報告書は公開される。この節ではまた、USTRに、貿易協定のもとで定められた義務に関する見直しあるいは執行措置の実施のための請願を受領後に、上院財政委員会、下院歳入委員会と協議することを求める。
第5節(g)項は、貿易協定案に関するあらゆる事項について、上下両院の議員は誰でも各々の見解を上院財政委員会と下院歳入委員会に提出することが出来)、関連する委員会はそれらの見解を参考として受け取ることを規定する。 
第6節:貿易協定の履行
第6節(a)項は、貿易協定締結の少なくとも90日前に、大統領は協定締結の意向を議会に通知し、また連邦政府の官報に公表しなければならないことを規定する。
少なくとも協定締結の60日前に、大統領は協定条文をUSTRのウェブサイトに公開しなければならない。協定締結後60日以内に、大統領はその協定によって必要となる現行法の変更に関する内容を提出しなければならない。
議会に公式に協定締結を提出する少なくとも30日前に、大統領は議会に対し、協定の最終条文の写しと協定の履行にあたり提案された行政措置の草案を提供しなければならない。
両院が議会の会期中に、大統領は、協定の最終条文、施行法案の草案、行政措置声明と必要な補足情報を提出しなければならない。
求められた補足情報には次の説明が含まれる。施行法案、そしてこの協定が本法律の目的達成を前進させることとその理由を明記している行政措置の声明が、どのように現行の法律を変更し、または影響を及ぼすのか;この協定によりこれまで交渉された協定の条項が変更されるか否か、またどのように変更されるか;どのようにこの協定が米国の商業利益に貢献するのか、どのように施行法案が第3節(b)項3で定められた(貿易協定の権限の)条件に適合するのか。この補足情報は公開されること。
本小節はまた、協定の利益と責務は、締約国のみに適用されることが協定と矛盾しない場合は、そのように適用されることを前提として、締約国以外の諸外国は、同国が協定で定められた責務の対象とならない限り、この協定のもとで決して利益を享受しないようにするため、施行法案に相互利益の規定が含まれることを求める。
さらに、施行法案が導入される前に公開されていない外国政府とのいかなる協定も、協定の一部と見なされず、米国法もしくはいかなる紛争解決機関にとっても効力がないことを規定する。
第6節(b)項は、大統領が本法律に従って通知または協議することを怠りまたは拒否した場合、貿易権限手続きの利用を否認するための方法と手続きを規定する。第6節(b)項(1)には、手続きの否認決議の方法が含まれる。この決議によって、両院は共同で行動し、貿易権限手続きを手早く撤回することが可能になる。第6節(b)項(3)と(4)は、協議と法令遵守決議の方法を定める。これにより、両院が単独で、貿易権限手続きを該当する議会から撤回することができる。
第6節(b)項(1)(B)(ii)は、即ち、本協定が本法律の目標、方針、優先事項、目的の達成に向けた前進が出来ない場合;大統領が第4、5,6節に従った協議を怠った場合;大統領が交渉に関する上下両院の各助言者グループと会合をしなかった場合;または第4節が求める協議や透明性の指針を実施しなかった場合に;大統領は通知や協議を怠ったか、または拒否したのである、ということを明記している。
これに加え、本小節は、大統領が2015年12月15日までに、WTO紛争解決委員会と上級委員会に関する議会の懸念を表明するための計画を定めた報告書を発行していなかった場合、貿易権限手続きは、WTOの保護のもとで交渉された合意のためのいかなる施行法案にも適用されないことを規定する。 
第6節(c)項は、本法律に基づく議会手続きは、議会下院および上院の法案作成権の行使として確立されていることを再確認し、どちらの議会にもいかなる時にも規則を変更する憲法上の権利があり、その議会のほかの規則と同じ範囲であることを認識する。
第7節:交渉が既に開始された貿易協定の扱い
第7節(a)項は、本法律の発効前に開始した特定の貿易交渉に対する履施行法案の貿易権限手続きの適用性に関するものであり、WTO関連の交渉、TPPEUとの貿易交渉、サービス貿易に関する交渉、環境に関連した商品に関する交渉が含まれる。
第7節(b)項は、第7節(a)項に記された交渉に関する特別の通知と協議手続きを規定し、具体的な手続きがその後行われた場合には、交渉開始に先立つ最初の90日間の通知の例外を認める。
第8節:主権
この節は、米国法と矛盾する第3節(b)項のもとで発効された貿易協定はどの条項の適用も効力を持たず、第3節(b)項のもとで発効された貿易協定の条項には、米国が米国の法律を改正または修正できなくなる条項はなく、第3節(b)項のもとで発効された貿易協定に従って召集された紛争解決委員会によって発行された報告書は米国法のもとでの拘束力はないことを規定する。 
第9節:小規模事業の利益
この節では、USTRは貿易交渉の過程において小規模事業者の参加を促し、小規模事業に関するUSTR担当官の役割はその担当官の役職に反映され、小規模事業、市場参入、産業競争力を担当するUSTR代表補は小規模事業の利益がすべての貿易交渉において確実に考慮されているようにすべきである、という議会の考えが表明されている。
第10節:改定
この節は改定について定める。
第11節:定義
この節は協定において重要な用語を定義する。
※以下は法案の原文へのリンク

(翻訳:田中久雄・田所剛/監修:廣内かおり)