2015年7月18日土曜日

ウォーターズ議員、オバマ大統領に米国金融改革をTPP協定から除外するよう訴える

1ヶ月ほど前のものでかつ短文ですが、簡潔でかつ力強い、米下院金融委員会筆頭理事である民主党ウォーターズ議員からオバマ大統領に宛てた書簡を「STOP TPP!! 市民アクション」翻訳チームが訳しました。

金融が実体経済を超えて肥大化する中で、ひとたび金融システムが危機に見舞われると世界の経済に深刻な影響を与えることは、98年アジア危機、07年からのリーマンショックでも明らかです。TPPの金融サービスの内容は余り表に出てきていませんが、規制緩和・内外無差別の論理から想定される内容は、経済的には知財や市場アクセス以上に深刻な影響をもたらす危うさを秘めているものと思います。

TPPの金融サービスの章や投資におけるISDSが、金融システムの安定を担保するための途上国などにおける金融規制や、金融の健全性や安全性確保により国際的な金融危機に対応するための各国の金融制度改革を台無しにすることが懸念されています。
TPPを主導する米国でもこの7月21日からボルカー・ルールが実施されます。米国では規制緩和が進む中1999年にグラス・スティーガル法を廃止、銀行がリスクの潜む自己勘定での取引、投資銀行業務を出来るようにしました。ところが07年からの金融危機で銀行の自己勘定取引が巨額の損失を出し、ボルカー氏が預金を扱う銀行の高リスク業務を禁じる規制を提案、ドッド・フランク金融規制改革法に盛り込まれました。この法規制でさえ不充分との声もある中で、TPP協定の曖昧な規定ではドッド・フランク金融規制改革法やボルカー・ル-ルでさえ機能しなくなることが懸念されます。

エリザベス・ウォーレン上院議員のように「ボルカー・ルールは重要な一歩だがグラス・スティ-ガル法復活を求める」声もあります。TPPは、アジア金融危機、リーマンショックの再来を放置せよと言っているようなものです。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり)

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ウォーターズ議員、オバマ大統領に米国金融改革をTPP協定から除外するよう訴える

ワシントンDC6月5日―ホワイトハウスは、参加12か国から成るTPP(環太平洋経済連携協定)交渉が妥結できるよう連邦議会に対してTPA(貿易促進権限)を強く求めているが、昨日、マクシーン・ウォーターズ下院議員(カリフォルニア州選出の民主党下院金融委員会筆頭理事)は、TPP協定によって、ドッド・フランク:ウォール街改革及び消費者保護法の一環として可決されたものを含む、きわめて重要な金融改革が後退するとの懸念を表明した。

オバマ大統領宛ての書簡の中で民主党首席議員として、米国のさまざまな貿易協定におけるいわゆる“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”条項における解釈上の不明瞭性及び限界を強調した。 本条項は、各国政府に対し、金融の健全性を保つための金融政策を実施する政策的余地を与えることを狙いとしている。 これに対しウォーターズ議員は、多くの法学者や貿易政策専門家の間では本条項の文言が曖昧且つ不明確で、今日まで検証もされていないとの見方が強いと指摘した。

ウォーターズ議員は書簡の中で、「今春、マイケル・フロマン米通商代表が下院民主党執行部と会談した際、現在のTPP協定案では金融規制の政策的余地が制限される可能性があるのではないか、という我々の多くが持つ懸念を退けた」と記している。 さらに「この問題に対する現政権の自信のほどを歓迎する一方で、残念ながら私は、この貿易協定の文言、とりわけ“プルデンシャル(健全性保全上の)例外”を見る限り、この自信に疑念を感じざるを得ない」と続けている。

またウォーターズ議員は書簡で、“ISDS(投資家対国家間紛争解決)”の仕組みを採り入れたことに、特に懸念を表明した。 ISDSは、外国人投資家に対し、“期待”した投資の成果が得られないとの理由で、あらゆる金融規制や措置について民間仲裁委員会の場で、直接アメリカ政府に異議を唱える権利を与えている。

ウォーターズ筆頭理事は、消費者を保護し金融システムの安定性をはかるために制定された改革の真意が、仲裁委員会によって損なわれることになり得る、と懸念を表明した。 さらに、オバマ大統領に対し、TPPの投資条項が金融政策に適用されないよう強く要請した。

「金融制度全体にかかわる重要事項-つまり国際金融システムの安全性及び安定性の問題―に我々が日々取り組んでいるなかで、昨今ますます異論が噴出している、その場限りの民間仲裁委員による投資の審査に委ねられる、曖昧な“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”を信頼するというのは、あまりに見当違いであるように思える」とウォーターズ議員は付け加えた。

書簡の全文は以下の通り。
6月4日 2015年

親愛なる大統領

過去24年間、下院金融委員会の委員として、また現筆頭理事として申し上げますが、グローバル化のなかでも特に困難な局面に対して、当委員会は幾度も責任ある取り組み方法を策定する先導的役割を担ってきました―例えば、1990年代後半のアジア金融危機に対応する超党派の合意、また2007~2008年の国際金融危機への緊急且つ即時の対応、続いて米国の金融システムの抜本的改革にも取り組んで参りました。

我々は、長年にわたり、国際通貨基金(IMF)や世銀など世界経済を進める主要機関にも注力し、これらの国際機関の透明性、民主性を高め、最貧層の人々のニーズに呼応するための改革を後押してきました。

当委員会の民主党首席委員になって以来、私は、国際的な取り組みとして特に、懸案中のIMFにおける一連の出資・議決権・融資枠の割当額改革案を強く支持すること、 また最近では、米国企業が国際輸出市場において今後も公正に競争できるよう、米国輸出入銀行の再認可のためにあらゆる手を尽くしてきました。

また、グローバルな経済協力の重要性を認識した米国貿易政策を、公正性を推進するという手法で構築することにも携わってきました。そしてそのなかで、本書簡―金融規制とTPPの問題について―をしたためるに至った次第です。 マイケル・フロマン米通商代表は今春、下院民主党執行部と会談した際、TPP協定案が金融規制に向けた各国政府の政策立案の余地を制限することにもなり得る、という我々の多くがもつ懸念を退けました。

フロマン代表は、“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”について-本規制は、米国の貿易協定において各国政府に対してプルデンシャル(金融の健全性保全)を理由とする規制を容認する旨の標準的条項ですがーこれに言及しながら、現政権なら連邦議会が制定を希望する新たな金融安定装置に加えて、2008年度の金融危機に対して可決された抜本的ドッド・フランク金融規制改革法を首尾よく守り抜ける、と我々を説得しようと努めました。

ドッド・フランク金融規制改革法は、実際、本質的に金融の健全性を保全するものであると私は認めており、この問題に対する現政権の自信のほどを歓迎します。一方で、残念ながら私は、米国の貿易協定の文言、とりわけ“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”を見る限り、この自信に疑念を感じざるを得ません。

まず、ご存じの様に“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”が有している意味、範囲、適用については、法学者や貿易関連専門家らがこれまで活発に議論してきました。 専門家の中には、この例外の文言で金融の健全性を保つための金融規制を十分に守ることができると信じている人もいますが、殆どはこの文言が、精一杯解釈に努めたとしても、曖昧なものであると結論づけています。 また“プルデンシャル”という用語は米国の貿易協定においてどこにも定義されておらず、WTOにおいても同様です。 例外という用語が紛争処理委員会によっとどのように解釈されうるのか、様々な可能性の余地を作り出すことが懸念されます。

さらに、“プルデンシャル”という用語は時間及び文脈と共に変化するものです。 このように基盤が変化することは、紛争処理委員会で例外の適用がいかに解釈され得るのかを予測しようとしている、各国政府にとっても不確実性を生み出します。 “プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”に関してWTOで裁定されたことがなく、それゆえ公的記録には本条項の公式の解釈はないという事実からも、この不確実性はますます高くなります。

しかしながら、最も重要な点は、異議を申し立てられた金融政策もしくは政府の措置が正当な“プルデンシャル(金融の健全性保全)”を理由とするものなのか、そして“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”によって実際にその金融政策や政府の措置が保護されるのか否かの判断が、最終的に民間の国際仲裁委員会によって下されるところにあります。 現在提案されている様に、TPP協定ではISDS(投資家対国家間紛争解決)を通じて、金融規制に対して他国の政府のみならず個々の金融機関からも異議申し立てを容認することになっています。 ISDS法廷はいかなる政府当局からも独立して開廷され、下される採決の多くは予測不可能であり、判例にも縛られず、実際上控訴に晒されることもありません。

金融制度全体にかかわる重要事項-つまり国際金融システムの安全性及び安定性の問題―に我々が日々取り組んでいるなかで、昨今ますます異論が噴出している、その場限りの民間仲裁委員による投資の審査に委ねられる、曖昧な“プルデンシャル(金融の健全性保全上の)例外”を信頼するというのは、あまりに見当違いであるように思えます。

一般論として、私は、ISDSを米国の貿易協定に採り入れることに対し強い懸念を抱いています。 しかし少なくとも、ISDSを含めTPP投資条項は金融政策には適用されないようにすることを大統領に強く訴えたいと思います。 そうすれば、消費者を守り、金融システムの安定性を維持しようと懸命に闘ってきた我々の取り組みを後退させることにも決してならないでしょう。

下院金融委員会筆頭理事
マクシーン・ウォーターズ

以下は民主党下院ウォータ-ズ議員の大統領あて書簡及び6月5日付けのプレスリリースの英文原本へのリンク
http://democrats.financialservices.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=399165

(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり)

2015年7月13日月曜日

TPP『合意』は許さない!7.22 緊急国会行動

最大の山場。国会決議違反・秘密交渉は許さない!
総力を結集して、政府へ国会へ

TPP『合意』は許さない!
7.22 緊急国会行動
日時:17 時座り込み 19 時~20 時/大アピール行動
場所:衆議院第2議員会館前を中心に


 アメリカ議会でのTPA法成立を受けて、安倍内閣は「7 月末合意が可能だ」とコメントし、アメリカとともに「合意」へ主導的役割を果たそうとしています。7 月9 日から日米協議が、24 日からはハワイで12 カ国首席交渉官会合、引き続き28 日から閣僚会合が予定されています。

 しかし、他の国を見ると、「TPA成立は合意が近いことを意味しない」と語る国もあるように、一路「合意」へ向かっているわけではありません。新聞報道などでは、日本政府はすでに国会決議に踏み込んでいる可能性も高く、秘密交渉のまま「合意」に走ることは許されるものではありません。

 TPP交渉最大の山場・・全国各地でTPP反対・懸念の運動を進めている団体・個人がよびかけあって、「合意など許さない!」の声を、政府に国会に、社会に向けてアピールしましょう!

<緊急行動内容>
17:00~19:00 国会議員会館前座り込み行動
 *怒りのリレートーク *お散歩デモなど
19:00~20:00 「TPP『合意』は許さない!」アピール行動 
 *各界からのアピール *緊急アピール採択

<よびかけ人(50 音順)>
天笠啓祐(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表)/石田敦史(パルシステム生活協同組合連合会理事長)/内田聖子(アジア太平洋資料センターPARC事務局長)/加藤好一(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長理事)/坂口正明(全国食健連事務局長)/鈴木宣弘(東京大学大学院教授)/住江憲勇(全国保険医団体連合会会長)/醍醐聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会よびかけ人)/中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長)/庭野吉也(東都生活協同組合理事長)/原中勝征(TPP阻止国民会議代表世話人)/藤田和芳(大地を守る会会長)/本田宏(外科医、医療制度研究会副理事長)/山下惣一(TPPに反対する人々の運動共同代表・農民作家)/山田正彦(TPP差止・違憲訴訟の会幹事長)/山根香織(主婦連合会参与)

賛同団体を募ります・・7 月21 日までに下記事務局FAXかメールアドレスへ。
賛同と当日の参加を大いに広げましょう!

<共同事務局>
□TPP阻止国民会議(連絡先:山田正彦法律事務所)
千代田区平河町2-14-13 中津川マンション201(℡03-5211-6880 FAX03-5211-6886)

□STOP TPP!!市民アクション(連絡先:全国食健連)
渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3 階(℡03-3372-6112 FAX03-3370-8329)メールで連絡の場合・・・・ center※shokkenren.jp (※マークを@に変更して送付ください)

2015年7月3日金曜日

GE、インテル、ジェネリック業界…USTRのメール交信報告から浮かぶ産業界のTPP人脈図

スイスに拠点を置く交際的なNGOで、国際的な知的財産に関する政策のもたらす影響などを紹介、報告をしている「知的財産ウォッチ」が米国の情報公開法Freedom of Information Actに基づいて入手したUSTRと産業界側の“顧問”(TPP交渉の助言者として認められた数百人もの業界代表)との間での電子メール交信についての概要報告の翻訳です。内容はTPPそのものの秘密情報を含むものではありません。しかし、これまで“数百人もの企業を代表するTPP交渉顧問”と言われていた面々が、実際USTRとの間でどんなことをしているのか、その一部の断面が実に生き生きと伺われる愉快なレポートです。 (翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)

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産業界の秘密・緊密なTPP関与、米通商代表部(USTR)の機密メールで明らかに

米国と12の貿易相手国が秘密裏に交渉している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の結果によって、あらゆる利害関係者が影響を受けうる一方で、企業代表は交渉テーブルの特等席に着いてきたことが、「知的財産ウォッチ」が入手した米通商代表部USTRの数百ページに及ぶ機密メールから明らかになった。このメールから、USTRでどのように政策が形成されていったかに関する貴重で興味深い知見が得られた。

交渉開始から数年、TPPは妥結間近であり、米国議会における大統領のファストトラック包括交渉権限(この権限下では、議会の役割は賛否の採決に限定される)の更新に関する討議における課題であると言われてきた。しかし、TPPの文書は、これまで決して―その一部が時折リークされたことを除けば―交渉参加国の市民に公開されてこなかった。ゆえに、今回の電子メール入手は上記の討議にとって時宜を得たものとなった。

「知的財産ウォッチ」は、情報公開法(FOIA)に基づく請求によって、USTR職員と業界側の顧問が交わした400ページあまりに渡る電子メールを入手した。その殆どは黒塗りの編集が施されていたが、それでもなお、これまでの経緯を理解するのに役立つ。

今回はじめて一般に公表された電子メール(2010~2013年)
(1), (2), (3), (4) [all pdf].

上記情報公開法による請求は、「知的財産ウォッチ」のためにイェール法科大学院「報道の自由と情報公開」専門法律相談所Media Freedom and Information Access Clinic により訴訟の対象として持ち込まれたものである。「知的財産ウォッチ」は貿易交渉そのものへの見解は示さず、TPP交渉における極端な秘密主義によって、この交渉についてなんらかの意味のある記事を執筆することができない、と主張してきた。TPPに関する報道は大抵、詳細に触れず会議の日程と課題を挙げるのみである。

[注:今回のメール公開を引き出したイェール大と「知的財産ウォッチ」による訴訟は進行中で、TPP文書自体の公開を目指しており、裁判所の判決を待っているところである。]

今回のメールで特筆すべきは、政府交渉者が業界の大物達に専門的知見や助言を求めたことではない。交渉者と業界側の顧問達が、彼ら以外のどんな利害関係者とも比べようがないほど緊密な関係にあることが暴かれたことである。

「知的財産ウォッチ」は、議会メンバー、中小企業、公益活動団体、学術団体、その他の”非認可”顧問との関わりの記録は請求しなかったので、それらとの緊密度を直接比較することは出来ない。しかし、例えば、公益全般を代弁する活動家が、いかに専門家として認められていたとしても、このレベルの近しい待遇を受けるとは想像しにくい。

メール交信に登場する”認可”顧問は、企業、業界団体から法律事務所までに及ぶ。彼らの中には、アメリカレコード協会、米国研究製薬工業協会PhRMA、ゼネラル・エレクトリック、インテル、シスコ、ホワイト&ケース(法律事務所)、高度医療技術協会(AdvaMed)、アメリカ映画協会、ウィレイ・レイン(法律事務所)、エンターテインメントソフトウェア協会、ファンウッド・ケミカル、米国化学工業協会、クロップライフ(アグリビジネス業界団体)、メドトロニック(医療機器メーカー)、アメリカン・コンチネンタル・グループ(コンサルティング会社)、アボット(医薬品メーカー)が含まれる(順不同)。ジェネリック医薬品業界の代表とのメール交信もある。

これら産業界の代表の多くは、USTRのOBである。

メール交換の例

USTR職員と産業界のメール交換は、交渉期間中に言及されたTPPに影響を与え得るあらゆる話題を網羅している。例えば、日本や他国を含めるようなTPP参加国の拡大、交渉参加国間の透明性に関する協定、医薬品アクセスに関するUSTRの公式声明、カナダとその文化、米国特許改革法案、知的財産権と環境問題に関する情報、ソフトウエアの特許適格性、EU・他の貿易協定・国際開発との関係、そして、予想通り、協定草案の構成要素に関する膨大な協議である。

例を挙げると、ゼネラル・エレクトリックの航空部門代表タヌジャ・ガーデは「“商行為に関わる秘密保護trade secret”に関して、君が提出した文章をシェアするか、電話で話せないか?」と依頼し、これに対してUSTRの職員プロビア・メータは「チャットしよう。月曜のどこかは?」と答えている。他の箇所では、ガーデはメータに「ダラスでの提出分について聞いたよ。いい内容だった。会議所には報告したか?(※米国商工会議所、産業界の団体)」と書き、メータは「有難う、タヌジャ。本当に君とジョーのおかげだよ!(※USTRの職員ジョー・ホワイトロックのこと)米国商工会議所の「TPPと知的財産」作業部会で先週報告したところだ。」と返している。

“商行為に関わる秘密保護”に関する議論には、他の大企業も参加している。デュポン、コーニング、マイクロソフト、クアルコムなどだ。

他の例では、エンターテインメントソフトウェア協会(ESA)の副会長ステーブン・ミッチェルが、交渉中の技術保護手段(TPM)に関するESAの分析の草案を提供している。USTRはこれに対し、「来週のどこかでランチの時間がとれるか?」と返答している。

シスコ・システムのジェニファー・スタンフォードはTPPとサプライ・チェーンの問題に関わっている。インテルのグレッグ・スレイターはまだ公開されていない課題に関するメモを提供している。ウィレイ・レイン法律事務所のティモシー・ブライトビルは省庁をまたがる提案のための国有企業(SOE)に関する文案を至急提供するよう依頼されている。

RIAA(アメリカレコード協会)は、電気通信の章を検討して質問し、”情報処理技術勉強会(ITAC)の選抜メンバーによる著作権法と施行に関するTPP草案”について議論し、インターネット・サービス・プロバイダーに関する文案にコメントし、ニュージーランドで行われている適法なオンライン音楽サービスの情報を提供している。国際知財同盟International IP Allianceも著作権とその施行に関与している。更に、著作権関連産業の代表らは、著作権の制限・例外、副次的責任の選択肢、安全ルールに関する彼らの見解を送付している。

ITACは、産業部門毎にいくつかあるUSTRの産業貿易諮問委員会である。

早い段階で、クロップライフのドゥグ・ネルソンは、彼のチームがクアランプールとベトナムで両国の官僚に対し、農業用化学品のデータ保護に関するロビー活動を行ってきており、「彼らが、データ独占重視のTRIPS協定第39条3項を受け入れることは確実である」と述べている。彼は、クロップライフが、ニュージーランドでの次のTPP会合でプレゼンの機会を持つか、あるいは米国代表団の一員として参加出来ないか問い合わせている。USTR職員のスタン・マッコイは、ニュージーランド政府が民間セクターの並行会合をどう扱うか知らないと回答している。

2011年のメールでは、マッコイはGEのロビイストに「特許改革法案の調印式にGEのCEOが出席するなら、ニュージーランドの貿易大臣ティム・グローサーが出席することを知っておいて欲しい。ニュージーランドにTPPで強力な知的財産(保護)の章を支持するよう勧める素晴らしい機会になるだろう。」と伝えている。

他には、ファンウッド化学のジム・デリスが原産地規則の草案を見て、言っている。「USTRに借りができた。この規則なら我々の規則と同じだ・・・喜ばしいことに。」

さらなる例として、AdvaMedのラルフ・アイブスは、USTRのバーバラ・ワイゼルとTPPに関するあるCEOの書簡について意見交換をしている。ワイゼルは、その書簡を見るまではコメント出来とした上で、「お気遣いに感謝するけれども、書簡の中の交渉人の名前は明かさないで欲しい」と言っている。アイブスは明らかに書簡の草稿と共に返答している。「(草稿に)手を入れてくれとは言わないが、こんな感じで送ってよいか教えて欲しい」。ワイゼルは、それに関して自分と会って話すよう要請しつつ返答し、さらに会合を設定するとしている。他の箇所では、AdvaMedが貿易に関する技術的障壁(TBT)の議論に参加している。

オーストラリアの医療産業協会が、USTR職員との直接の交信に加わっている。

今回の電子メールから明らかになったことで特筆すべきは、交渉官、そして業界の代表は、週末も休日も、数え切れないほど世界中を旅しつつ、非常にハ熱心に長時間働いていることだ。
USTR職員が定められた規則を守ろうと努力していることも、その交渉の秘密の度合いに同意すらしていないのかもしれないことも明らかになったようだ。2012年のある時点で、USTR「知的財産と革新」部長のヤード・レグランドはあるロビイストに伝えている。「あなたや関係者の皆さんと、必要ならすぐ連絡がとれるようになったことは喜ばしい。ご存知の通り、実際のところ、私は“非認可顧問”とは草案について話せないので。」

また他のところでは、USTRの首席交渉官バーバラ・ワイゼルから産業界に、同じことを何度も繰り返さないようにとの要請がなされたとの記載もある。(翻訳: 西本 裕美/監修:廣内 かおり)

2015年6月26日金曜日

日本政府の TPP 交渉にかかる出張旅費9億円超え(PARCプレスリリース)

当グループの構成団体である「アジア太平洋資料センター(PARC)」が24日、情報公開請求をした日本政府のTPP交渉にかかる出張旅費を発表しました。作業の一部を市民アクションも担当しました。以下に情報を掲載します。


【日本政府の TPP 交渉にかかる出張旅費、9億円を超える(アジア太平洋資料センターHPより転載/2015/06/24)】

このたびNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)は、日本がTPP交渉に参加して以降の政府交渉官の出張旅費・会議費について、関係する4省庁に情報開示請求を行いました。その結果、2013年3月~2015年2月末までの2年間で、9億円を超えていることがわかりました。長期化する交渉が、経費を増加させていることがデータから読み取れます。この経費の財源は私たちの税金であるわけですが、9億を超す額であるにもかかわらず、交渉内容が一貫して秘密であることは国民からすれば納得いくものではありません。米国議会ではTPA(貿易促進権限)法案の動きも流動的で交渉が漂流する可能性も指摘される中で、この「コスト」は、果たして日本にとって本当にメリットとなるのか、「ムダ金」に終わるのか、私たちは改めて政府に交渉内容の十分な説明を求めます。

■はじめに―調査の概要

◆情報開示請求の概要◆
★対象期間:2013年3月~2015年2月末(2年間)
★対象省庁:内閣官房、財務省、農水省、経済産業省、外務省の5省庁
※外務省についてはTPP交渉と、日米二国間協議交渉の2つを担当しているため、2件の情報開示請求を行った。
★請求内容:①TPP交渉の閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため出張した職員の旅費
※出張旅費には、航空券代、宿泊費、国内交通費、変更に伴うキャンセル料が含まれる。
②国内での会議費(会場費、水代など)
★作業はSTOP TPP!!市民アクション(http://stoptppaction.blogspot.jp/)の協力を得て実施した。

TPP交渉の分野は多岐にわたるため、日本政府は内閣官房内に「TPP政府対策本部」を設置し、関係する各省庁からの交渉官を統括している。ただ交渉会合への参加経費については、各省庁からの支出となるため、「内閣官房」「農林水産省」「経済産業省」「財務省」「外務省」の主要4省庁への情報開示請求を行った。開示請求を行ったのは2015年3月6日。どの省庁からも1か月の開示延長がなされ、最終的な開示がなされたのは5月中旬~下旬であった。
情報開示請求の内容は、①TPP交渉の閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため出張した職員の旅費、②国内での会議費など(会場費、水代など)とした。対象期間は2013年3月~2015年2月末の2年間である。 開示の結果、そのほとんどが出張旅費であった。5省庁からの領収書は1570件にも及んだが、そのすべてを入力・集計した。今回調べた省庁の他にも国土交通省や金融庁なども少人数ながらTPP交渉に職員を派遣している。

以下、詳細はアジア太平洋資料センターHPへ。
http://www.parc-jp.org/teigen/2015/tpp_research20150624.html

【緊急アピール】「国会決議違反、民意を無視したTPP「合意」は許されない!」

<緊急アピール>

国会決議違反、民意を無視したTPP「合意」は許されない!
-TPP交渉は最大の山場に、みんなの力を発揮しましょう-
2015年6月26日

醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会よびかけ人)
中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長)
山根香織(主婦連合会参与)

            TPPに関するフォーラム実行委員会有志

 アメリカ連邦議会上院でTPA法(貿易促進権限法)が可決されたことを受けて、甘利担当大臣は「7月下旬には閣僚会合で大筋合意も可能だ」とコメントし、大手マスコミもそれが当然の流れであるかのように伝えていますが、とんでもありません。
 アメリカ議会でTPA法案が迷走の末成立したのは、TPPが多国籍大企業の利益を保障する一方で、99%の人たちには害悪をまき散らすものでしかないことが明らかとなるなか、労働組合や市民団体の反対運動や反対の世論が強まってきたからであり、TPPの危険性が弱まったからでも、アメリカの市民社会がTPPを受け入れたからでもありません。
 交渉権限を手にしたオバマ政権が、今後、交渉の「大筋合意」をめざして、TPAを成立させた議会の圧力も背景に、参加国に対してより強力に譲歩を迫ってくることは明らかであり、一層理不尽な内容を押しつけられる危険はむしろ強まったと言うべきです。
しかし、この事態を受けて、アメリカのメディアやTPPに反対してきた人々は、TPA法の成立で貿易紛争が終わるどころか、TPPをめぐる全面戦争が始まることを予告しています。また、いくつかの参加国は、「TPAの成立はTPPの妥結が近いことを意味するものではない」とコメントしていることも伝えられています。
 その一方、安倍内閣は、「合意」の環境は整ったとばかりに、日米合意を先行させ、オバマ政権と連携を強めてTPP交渉の「大筋合意」に主導的役割を果たそうとしています。自らの公約も破って交渉参加に踏み切った安倍内閣が、いよいよ「国会決議」も「説明不足」や反対を表明する民意も無視して「合意」に向けて暴走することは許されるものではありません。
 私たちは、TPPはいのちと暮らし、地域、人権や主権まで脅かすものだと考え、これまで全国の多くのみなさんと力を合わせて、共同行動やフォーラムなどを展開してきました。いま、TPP交渉最大の山場を迎えて、改めて呼びかけます。全国各地で共同の力を発揮し、「国会決議を踏みにじるTPP交渉合意は許さない!」の声と行動を強めましょう。国会議員には、自らの責任において行った「決議」を守るために行動をとるよう求めましょう。

以上


【連絡先事務局・お問い合わせ】全国食健連
 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階 
℡03-3372-6112、FAX03-3370-8329 Eメール:center※shokkenren.jp(※を@に変換ください)

2015年5月26日火曜日

米国パブリック・シチズンによるTPA法案分析「2002年ファーストトラックが復活」


4月16日に公表された米国パブリック・シチズンによるTPA法案の分析です。市民アクション翻訳チームが翻訳しました。

この分析は、今回上程されたTPA法案が2002年~07年のTPAおよび廃案となった2014年の法案の焼き直しにすぎないなど多岐にわたる指摘をしています。その内容は、議会の権能や要求を記しているものの、いったん妥結すれば他の参加国が同意しなければ日程上も行使する条件の無いもので、貿易協定に関する憲法上の議会の権限を奪うものでしかなく、また一部の新たな内容もそれを担保する措置が盛り込まれていないことなどを批判しています。そして実際に、過去の貿易協定では結局議会の要求は考慮もされず、協定に盛り込まれることはなかったとしています。さらに透明性の点においても今回の法案は、過去の、例えば1988年ファーストトラックにおいて交渉経過などが都度公開され、議員や議会職員が自由に閲覧できたこと、必要な場合にファーストトラック権限をはく奪する場合の手続きなどに比較すれば不充分なものでしかない、と批判しています。
その上で、昨年来の米国議会の根強いTPA批判、現在も不透明な議会の情勢などから成立の可能性は低いと断じています。(2015年5月25日時点)
先に翻訳をして紹介した、米議会委員会によるTPA法案の節ごとの概要説明と合わせて読んでいただくのもよいと思います。
この間の米国議会での攻防、TPA法案の内容と取り扱われ方をフォロ-しながら、法案としての不充分さよりも、議会と行政府との関係、貿易協定の進められ方など民主主義の観点からは問題点だらけで抜本的な見直しがされてしかるべきであり、そのことは当然日本にも当てはまることを感じた次第です。(2015年5月25日:翻訳グループリーダー・近藤康男)(翻訳:清水 亮子/監修:廣内 かおり)

 
TPA法案分析:ハッチ法案で議会と人々から幅広く反対を受けた、意見の分かれる
2002年ファーストトラックが復活

 2015年のハッチ法案(ハッチ上院財政委員長主導のTPA法案)は、廃案となった2014年ファーストトラック法の文言の焼き直しであり、9120億ドルの貿易赤字、製造業における何百万人もの失業、公共の利益のための政策への攻撃をもたらしたものと同じ、破たんした貿易モデルの拡大版となる。

2015年4月16日】
本日(4月16日)上院財政委員会に提出されたハッチ・ファーストトラック法案は、ほとんど全ての民主党下院議員とかなりの数の共和党下院議員がすでに反対を表明している、意見の分かれるファーストトラック手続きを復活させるものである。
ハッチ・ファーストトラック法案の条文のほとんどは、2002年のファーストトラック法の焼き直しだった2014年のファーストトラック法案を一字一句複製している。
今回の法案は、祖父条項(※注)として、ほぼ合意に至っているTPPにファーストトラックを適用することを明示し、ファーストトラックの手続きの3~6年の延長を可能にしようとするものである。また、強制力を持つ通貨操作規制をTPPに盛り込むべきとする超党派でかつ上院・下院の垣根を越えた要求を、オバマ政権が却下した後でさえ、なお、この法案によって議会の憲法上の貿易権限を奪おうとするものである。
※注「祖父条項」:ある法律制定前に既に合意されている法律や既得権などが優先される。

本日上程された法案は、上院財政委員のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)、下院歳入委員長ポール・ライアン(共和党、ウィスコンシン州)、上院財政委員会筆頭理事ロン・ワイデン(民主党、オレゴン州)が提案したものだが、下院民主党の提案者は一人もいなかった。
過去21年の間にこのようなファーストトラック権限が議会で承認されたのは2002~07年のもの一度しかない。1998年には、当時のビル・クリントン大統領のファーストトラックが71人の共和党議員と171人の民主党下院議員に反対され否決された。

本日上程の法案によって、以下のようなことが起こる可能性がある。

・行政府にいっそう強い権限が与えられ、貿易協定の相手国を一方的に選び、交渉を通じて協定の内容を決定し、署名し、妥結させることができるようになる。議会の交渉目的に適合するかどうかに関わらず、これらのことが全て、議会による協定内容承認のための採決前に可能となる。

・行政府には、ホワイトハウスが協定の施行のために「必要あるいは適切」と決定したあらゆる条項が盛り込まれた法律を作成する権限が与えられる。このような法律は、議会の通常の委員会による審議にかけられることはない。つまり今の政権と今後の政権は、ファーストトラック権限を伴う貿易協定の交渉において、思うがままの条項を盛り込むことが可能となる。

・両院とも90日以内の採決が求められる。議会の交渉目標に合うかどうかにかかわらず、いかなる修正も認められず、審議はそれぞれ20時間以内に制限される。   

新しい「高速道路の出口」を作るのではなく、過去のファーストトラック法案にあった実施不可能な条件と同じものを、この法案は文字通り複製している。つまり、ある協定をファーストトラックから除外する「手続き否認」の仕組みを使えなくするような条件である。それを実施する決議は、上院財政委員会と下院歳入委員会の両方で承認され、その後60日以内に両院で可決しなければならない。(Sec.6(b)(1-2)) この点に関するこの法案の新しい特徴は、新しい“協議と法案遵守“手続きであるが、この手続きは協定が署名・妥結されて初めて使うことができる。しかしこの時点では、協定の変更は、すべての交渉相手国が再交渉の再開と条文の変更に合意した場合のみ可能である(おそらくは米国の更なる譲歩をも引き出した後になるだろう)。(Sec. 6(b)(3-4))この手続きにおいては、ファーストトラックの要件からある協定を除外するには、60人の上院議員の承認が必要である(※注)。上院議員の単純過半数の「反対」票が、協定そのものに対して同じ効力を持つにも関わらず、である。これとは対照的に、1988年のファーストトラックは、下院歳入委員会と上院財政委員会のいずれかの単純過半数の採決で協定をファーストトラックの要件から除外することが出来、かつ本会議での採決をしなくてもできるようにしている。そして、そのような否認行為は、大統領が貿易協定に署名・妥結する前に可能とされていた。 (19 USC 2903(c)(2)(B))
※注「60人」は単純過半数の50票以上である。
※注“協議と法案遵守“手続き:TPA法案の第6節は大統領が法案に定めたいくつかの条項を遵守しなかった場合、議会がファースト権限手続きを撤回出来ることについて定めている。

ハッチ法案の分析: 中心的な条項は2002年ファーストトラックと同一
2014年ハッチ・キャンプ・ボーカス・ファーストトラック法案と同様に、今回の2015年のハッチ法案は2002年に承認され2007年に失効したファーストトラックに含まれた手続きを複製している。

大統領には、一方的に交渉相手を選び、ファーストトラック手続きの適用される協定の交渉を始める権限が与えられる。2002年のファーストトラックと同様に、今回のハッチ法案では、この権限には形式的な協議、及び交渉が始まる90日前(休日を含む)に議会に通告するという条件がついているだけだ。2002年ファーストトラックを複製しており、この法案は、どの交渉相手国に対してファーストトラックによる対応が開始されるか選択する役割を議会に与えていない。

大統領は協定の内容を一方的に左右する権限を与えられるだろう。2002年ファーストトラックと同様、今回のハッチ法案にある議会の定めた貿易交渉の目的を強制することができない。米国の交渉担当者たちが交渉目的のリストを手にしているかどうかにかかわらず、このハッチ法案では、議会が採決する前に貿易協定に署名・妥結する権限を大統領に与ることになる。そしてその際、行政府が協定を実施するための法律を立案出来ること、90日以内に上院と下院で採決されること、修正は一切修正が認められないこと、最長で20時間しか審議の時間がないことは保証済みである。 (Sec.3(b)

民主党も共和党の大統領どちらも歴史的にファーストトラックに盛り込まれた交渉目的を無視してきた。北米自由貿易協定(NAFTA)と世界貿易機関(WTO)の設立のために使われた1988年ファーストトラックには、労働条件に関する交渉目的が含まれていたが、どちらの協定にもそのような条項は盛り込まれなかった。2002年ファーストトラックには、優先事項に通貨操作に対応する仕組みが挙げられたが、このファーストトラック権限のもとで締結されたいかなる協定にもそのような文言は盛り込まれなかった。

大統領には、形式的な協議と暦日90日の事前通告だけを条件とする簡略化された検討で、協定に署名・妥結する権限が与えられる。(Sec. 3(b) and 6(a)) 行政府だけが、交渉がいつ「決着した」かを決定できる。今回のハッチ法案にある議会の「協議」の仕組みは、協定に署名する前に、それが議会の定めた交渉目的に合うものかを認証する何の権限も仕組みも議会に与えていない。

大統領には、署名した協定を実施するための広範囲な法律を立案して、検討にかける権限が与えられるだろう。(Sec. 3(b)) 2002年ファーストトラックのように、このような法律は、議会の委員会による最終審議と修正にかけることになる。2002年ファーストトラックはこの(協定施行のための)法律について、大統領が「そのような貿易協定を実施するために必要あるいは適切とみなす場合は、米国の法律にあらゆる変更を盛り込むことができる」と書かれている。 (19 USC 3803(b)(3)(B)(ii)) 実際、ファーストトラック権限のこの部分に「適切な」という文言を入れたことは、これまでも議論を呼んでいるところである。行政府に多大な自由裁量権を与え、議会が協定の実施にとって必要だと考えるか否かに関わらず、既存の米国の法律を変更できるようなるためである。実際に、「適切な」という文言によって、共和党政権においても民主党政権においても、委員会の最終審議を避けて通り、本会議での修正も受けることなく、本筋ではないような変更を既存の米国の法律に加えることを可能にしてきた。ハッチ法案では、「適切な」という文言を削除する替わりに、2002年ファーストトラックにあった「必要あるいは適切」の文言の前に「厳格に」という無用な修飾語を加えている。 (Sec.3(b)(3)(B)(ii)) 2002年ファーストトラックと同様、実施法案に行き過ぎた条項を盛り込むことに対して異議を申し立てるための議事手続きやその他の仕組みは皆無である。

2002年ファーストトラックと同様、今回のハッチ法案は下院に対して、そのような実施法案について議会開催日60日以内に採決することを要求し、上院ではその後30日以内に採決することを求めている。

2002年ファーストトラックと同じく、今回のハッチ法案では、実施法案について全く修正を認めず、上院・下院での討論の時間は20時間しか許されない。そして上院を含め採決は、単純過半数で可決される (Sec. 3(b)(3)(A))

今回のハッチ法案には、2002年ファーストトラック権限にはなかった交渉目的が含まれる。それらの多くは2014年法案にも含まれていた。しかしながら、この法案で改めて制定しようとしているファーストトラックの内容には、これらの交渉目的を強制する力が全く保証されていない。

本日上程された法案には、人権に関連する交渉目的が盛り込まれている。「国際的に認められた人権尊重の促進」である。 (Sec. 2(a)(11))  
しかし法案は基本的なファーストトラックの内容を変更していないので、大統領はやはり一方的に貿易相手国として深刻な人権侵害を行っている国を選び、交渉を開始し、交渉を決着させ、人権侵害を行っている政府との貿易協定に署名・妥結することができ、議会にはそれを止めるよう大統領に要求する機会は与えられてない。
目的にかなっているかどうかの妥当性を判断するファーストトラックの手続きに加えて、「新しい」ものとして宣伝されている今回のハッチ法案の交渉目的のなかには、実は2014年法案と全く同じものがあり、それは2002年ファーストトラックでも言及されている。たとえば2002年ファーストトラックには、以下のような通貨措置が含まれていた。「貿易協定加盟国の間に、著しくかつ予測しなかった通貨の動きによる貿易上の結果が起きていないか調査し、かつ外国の政府が国際貿易において競争上の優位性を強化するために自国通貨の操作に関与していないか詳細に調査するための協議の仕組みの構築に努める。」(19 USC 3802(c)(12)) 今回のハッチ法案で「新しい」と言われる条文は、2014年法案にあったものを一言一句複製したものだ。「通貨に関する慣行に関する米国の主要な交渉目的は、米国の貿易協定の相手国が、有効な国際収支の調整を妨げるためあるいは不公平な貿易上の優位性を獲得するために為替レートを操作することを、協調のための仕組み、強制力のあるルール、報告、監視、透明性、その他の適切な方法を通じて、回避することにある。」(Sec. 2(b)(11))仮に議会がこの貿易交渉の目的が満たされることを担保する権限を持っていたとしても、この貿易交渉の目的の文言そのものは、ファーストトラック措置を有するTPPその他の貿易協定の中に通貨操作に関する強制力ある規制を盛り込むことを求めてはいない。両院の超党派の過半数の議員からTPPに通貨操作の強制力ある規制を盛り込むべきと要望があるにもかかわらず、今回のハッチ法案の交渉目的は、ファーストトラックを伴うTPPやその他の協定のための、いくつかの拘束力のない選択肢のひとつとして「執行可能なルール」を挙げているにすぎない。

今回の法案における労働と環境に関する交渉目的は、2014年ファーストトラック法案の複製である。2014年ファーストトラック法案の交渉目的は、「2007年5月10日合意」の条項を想起させるものであり、政府の報告書によると効果がないことが判明している。(Sec. 2(b)(10)) 「5月10日合意」の条項が、2002年ファーストトラックの労働に関する貿易目的の範囲を越えている一方で、2014年11月に公表された米国連邦議会行政監査局(GAO)の報告書によれば、調査対象となった5つの自由貿易協定(FTA)の相手国において、FTA協定に「5月10日合意」の労働の条項が盛り込まれている場合もいない場合も含め、広範囲な労働権侵害が確認された。
※注「2007年5月10日合意」:2007年5月10付けの貿易に関する方針についての超党派合意

透明性の拡大ともてはやされている条項は、実のところ、議会職員が貿易協定条文の草案を見るためには機密情報の閲覧許可が必要であるという、受け入れがたい慣行の法的根拠となるようなものであり、ブッシュ政権の貿易交渉でみられた透明性の水準にさえ達していない。

今回のハッチ法案は、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュの両政権下の米国通商代表部(USTR)の過去のやり方にお墨付きを与えるものにすぎない。この法案は、貿易協定が、国家安全保障に関わる機密取扱許可の対象であることを正式に指定し、議会職員が機密取扱許可を受けなければいかなる貿易協定の草案も閲覧できなくするような指針の策定をUSTRに求めている。今回のハッチ法案の他の「透明性」条項は、オバマ政権が異例なまでに透明性を後退させる前の、クリントン政権とブッシュ政権下の状況に戻るにすぎない。例えばNAFTAの交渉の際には、それぞれの交渉会合の後に国会内の機密確保がしっかりとした部屋にNAFTA協定を構成する全条文の最新版が置かれ、議員はそれを自由に閲覧できた。2013年夏、オバマ政権は、TPP条文の草案の閲覧を求める議員からの高まる圧力についに応え、議員が要求した章だけは閲覧できるようになったが、議会職員が(たとえ機密取扱の審査済みでも)同席することも、メモをとることも許されなかった。議員の閲覧がブッシュ政権下と同じ程度に戻っただけで、一般の人や報道関係者が貿易協定の草案を目にすることができないとは、とても褒められた話ではない。(Sec. 4(a)(3))

一般の人々に対する透明性について、今回のハッチ法案は実にブッシュ政権の公開性にすら達していない。ブッシュ政権下の米州自由貿易地域の交渉の際、USTRは各種の交渉中のものを含む条文の草案を誰でも読めるようにUSTRのウェブサイトに公開していた。このハッチ法案には、ファーストトラックを付与された貿易協定の条文の草案を一般に公開するよう求める内容は何も盛り込まれていない。新しい条項では、USTRに対して貿易協定条文のウェブ公開を署名60日前までに求めているが、よく読むとこのタイミングは、協定が仮調印され条文の変更が締め切られた30日後となり、人々や議会が変更を要求するには遅すぎる段階になって初めて条文が公開されることになるのである。

「議会による監督の強化」ともてはやされているものは実際、2002年議会監督グループを「交渉に関する下院助言グループ」および「交渉に関する上院助言グループ」と改名したものにすぎない。

2002年ファーストトラックは、議会幹部たちに指名された議員からなる議会監督グループ(COG)を設置し、そのグループの議員はUSTRから交渉の状況について特別な説明を受け、助言者として交渉に出席することができた。このハッチ法案はCOGを改名して「交渉に関する下院助言グループ」および「交渉に関する上院助言グループ」とし、上院と下院の共同活動と説明している。しかし、議会助言者グループの任命手続きと両院の貿易協議グループの役割の範囲は、2002年ファーストトラックに盛り込まれていたものと同様のものである。そしてまさにこの文言と同じものが、2014年法案にも盛り込まれていた。(Sec. 4(c))    

今回のハッチ法案はUSTRに対し、議会、一般の人々、及び民間部門の助言者との協議のための指針を作成するよう指示している。しかし実際にはこの条項は単に、USTRがこれらの利害関係者との関係をどのように持つのか、あるいは持たないのかを、文書化することを求めているにすぎない。 (Sec. 4(a)(3), Sec. 4(b)(3), Sec. 4(d) and Sec. 4(e))

今回のハッチ法案が第114回議会を通過する公算は低い

本日上程されたハッチ法案は、2014年1月9日下院に提案されたとたんに否決されたハッチ・キャンプ・ボーカス法案に、ほんの細かな修正をしたものにすぎない。ハッチ・キャンプ・ボーカス法案を支持した下院民主党議員は、201人中8人で、文字通り一握りしかいなかった。そして下院共和党議員のうち今回のハッチ法案に「賛成」票を投じるのは、100人に満たないだろう。一方で、2013年にファーストトラックに反対する書簡に署名した議員が27名おり、そのうち20名は再選されて第114回国会に戻ってきている。だからこそ、2014年のハッチ・キャンプ・ボーカス法案は本会議での採決にかけられることはなかったのである。2014年の選挙でも、下院共和党幹部の計算は変わらなかった。2015年1月、ジョン・ベイナー下院議長(共和党・オハイオ州)は、ファーストトラック法案が下院を通過するには、民主党の揺るぎない賛成票が50票必要と述べた。

新人の民主党下院議員17人のうち14人が、議員になって2ヶ月と経たないうちにファーストトラックに反対あるいは懸念を示す書簡に署名した(15人のうち12人が2014年11月の選挙で当選し、2人は2014年の補欠選挙で当選した)。ファーストトラックについて立場を公にしないようオバマ政権から強い圧力がかかっているにもかかわらず、このようなことが起きたのである。そして、過去の議会とは対照的に、かなりの数の共和党新人議員が、企業の働きかけをよそにファーストトラック支持表明を拒んでいる。

2013年の一連の書簡は、2002年ファーストトラックの委任の仕組みに対する幅広い反対を示していたが、今回のハッチ法案はそれを復活させるかもしれない。民主党議員151人がオバマ大統領にあてて送った書簡は、ファーストトラック権限に反対し、貿易協定の交渉と承認のための新たな仕組みの創設を求めた。27人の共和党員もまた、オバマ大統領あての2通の書簡のなかで、ファーストトラック反対を表明した。そして下院歳入委員会の委員を務める民主党議員のほとんどが、共同で追加の書簡を送り、古いファーストトラック手続きがほとんど支持されていないと記した。

本日上程された法案は、ファーストトラックとTPPに対する反対が人々の間で幅広く高まっているにもかかわらず提案された。2015年にワシントンポストとNBCニュースが行った超党派の世論調査によれば、アメリカ人の75%がTPPを拒否あるいは延期すべきと答えている。ここ数週間で、メリーランド、オレゴン、ワシントン、コネチカット、コロラド、その他の州の有権者たちがファーストトラックに抗議し、過去のファーストトラックが地域の雇用、中小企業、農家にもたらした壊滅的影響について訴えている。最近のデータによれば、過去の同様の貿易協定によって既に米国は1兆ドルの貿易赤字という危機的状況に立たさされ、製造業における500万人のアメリカ人の雇用が奪われ、米国における所得の不平等が拡大している。

このハッチ法案はTPP、米国とEU間の環大西洋自由貿易協定(TAFTA)、新サービス協定(TISA)にも祖父条項を適用し、新たな法律の適用を免除している。(Sec. 7)TPPとTAFTAのためのファーストトラックは、特に議論になるところだ。これらの協定には、特許、著作権、金融規制、エネルギー政策、政府調達、食の安全などの分野が含まれ、このような配慮を要する非貿易事項に対する議会や議員の政策の維持あるいは制定を制約しているからだ。ファーストトラックは1970年代に設計されたものであり、そのころは、貿易交渉は関税、数量割り当てなどに狭く限定され、今日の協定のように網羅的に幅広い非貿易的政策が含まれるようなことはなかった。

ファーストトラックは特異な存在である。過去21年で有効であったのは5年にすぎない。

民主党の大統領も共和党の大統領も、ニクソン時代のファーストトラックの仕組みを通じて、憲法上の貿易権限を大統領に委任するよう、議会の説得に躍起になってきた。ファーストトラックが実施されたのは、NAFTAの議会通過とWTO設立協定以降の21年のうち5年間にすぎない(2002年~2007年)。

ビル・クリントン大統領の2期目に、ファーストトラック権限を獲得しようと2年間にわたって取り組んだが、1998年に171人の民主党議員に加えて、当時の共和党ニュート・ギングリッチッチ下院議長に強く抵抗した71人の共和党議員が反対し、上院で否決された。クリントンは在任8年間のうち6年間はファーストトラックを持っていなかったが、それでも100以上の貿易協定を実施した。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2年という時間と膨大な政治的資本をつぎ込み、2002年~2007年のファーストトラックの権限を獲得した。それは、共和党が支配する下院を一票差で通過し、2007年には失効した。新たにファーストトラック権限を獲得しようとしたブッシュの努力は、ブッシュが在任中に本会議の採決にかけられるところまで進むに足る支持を得ることはなかった。
(翻訳:清水 亮子/監修:廣内 かおり)

2015年5月12日火曜日

5.20 TPP緊急国会行動を開催!「 閣僚会合での『合意』は許さない! TPP交渉、最大の山場へ。総力を結集しよう!」

STOP TPP!! 市民アクションも賛同団体となっている「5.20TPP緊急国会行動」を5月20日に開催します。前日19日には日比谷で「TPPを考えるフォーラム 」を開催します。閣僚会合前の行動です。ぜひみなさん参加下さい。
☆ ☆ ☆
 
5.20 TPP緊急国会行動
閣僚会合での『合意』は許さない!
TPP交渉、最大の山場へ。総力を結集しよう!

アメリカの大統領選の本格化を控えて、2015年夏前後に交渉「合意」は「時間切れ」を迎えざるを得ません。これを避けるため、515日からの首席交渉官会合に続いて5月26日からTPP閣僚会合の開催が取りざたされています。
日本政府は、一度は国会議員にだけは交渉テ キストを開示するかのように発表しながら、急遽これを取り消すなど、「合意」のためにはなりふりかまわぬ態度。国会決議違反、秘密交渉、そして人々の暮ら しもいのちも、地域も、そして主権さえ破壊するTPP「合意」は絶対に許されません。
この山場にあたって、これまで全国各地で多様な形でTPP反対の運動を進めてきた団体・個人がよびかけあって、「合意など許されない!」の声を、政府に国会に、社会に向けてアピールする緊急行動に取り組むことを呼びかけます!

5月20日(水)、国会へ、官邸へ、社会に向けて
私たちの声を強く強く届けましょう

<行動内容>
18:45 日比谷公園霞門集合
18:45 デモ出発に当たっての意思統一
19:00 デモ出発・請願
19:45 デモ終了→衆議院第2議員会館前へ移動
20:00 衆議院第2議員会館前アピール行動
=政府あてアピール採択(20:30終了予定)


<よびかけ人(50音順) 58日現在 内田聖子(アジア太平洋資料センターPARC事務局長)/加藤好一(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長)/坂口正明(全国食健連事務局長)/住江憲勇(全国保険医団体連合会会長)/醍醐聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会よびかけ人)/中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局長)/庭野吉也(東都生活協同組合理事長)/藤田和芳(大地を守る会会長)/山田正彦(元農林水産大臣)/山根香織(主婦連合会会長)/山本伸司(パルシステム生活協同組合連合会理事長)

<賛同団体(順不同) 511日現在 STOP TPP!!官邸前アクション/STOP TPP!!市民アクション/TPPに反対する人々の運動/東都生活協同組合/日本消費者連盟/Mamademo/PPIネット・9条の会/フォーラム平和・人権・環境/全日本農民組合連合会/全日本民主医療機関連合会

※当日参加できない・遠方の団体もぜひご賛同ください。賛同金などは発生しません。賛同いただいた団体名はチラシやウェブサイトに記載する他、議員への請願書や政府への要請書に連ねさせていただきます。非公開を希望される場合は公開いたしません。
賛同団体申し込みは↑


<事務局連絡先>
国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)
151-0053 渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3
  ℡03-3372-6112 FAX03-3370-8329
E-mail : center@shokkenren.jp   5.20緊急行動ブログhttp://notppaction.blogspot.jp/