2014年11月16日日曜日

11月7日に「いま言いたい!TPP交渉」開催!100名が参加しました

TPP交渉はできるだけ早期の「大筋合意」をめざして、各級交渉会合が展開され、中国で開催されるAPECに平行して閣僚会議も開かれる。米国議会の中間選挙で野党・共和党が上下両院で圧勝したこの時期に約100名の参加者を得て上記院内集会が開かれた。

 主催は「リレートーク いま言いたい!TPP交渉」実行委員会で、その共同代表には「TPP交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聡、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子、「主婦連合会」の山根香織の3名が名を連ねた。

1)まず、本実行委員会共同代表の醍醐聡さんより開会あいさつがあり、各国の規制を「非関税障壁だ」として撤廃しようとするのがTPPの本質であること、日本も高齢化時代の老後破産に象徴される貧困化の状態はTPPによって拍車がかかる、と危機感を訴えた。11月8日を中心に反TPP国際共同行動も行われており、その一環として今日はTPP阻止のために闘おうとの行動提起があった。国会議員も駆けつけ、グローバル化の問題点を指摘した。共産党の紙智子議員は日豪EPAが11月6日に参議院の外交防衛委員会と農林水産委員会の合同審議の後、外交防衛委員会で採択され(その後参議院本会議で採択の後、国会で批准した)、豪州産牛肉の関税が早くも2015年4月から10%も引き下げられ、国内の牛肉価格が下落する恐れがあること、関税はTPPの関税率に合わせて引き下げられる条項もあることを批判した。

共産党の田村智子議員は、TPP交渉の中で医療面において医薬品メーカーの意向をうけ規制緩和され、健康保険制度が保険会社の意向を受けて改悪されようとしている、と訴えた。
 同じく共産党の吉良よし子議員は、安倍政権は地方再生を掲げているが、TPPは本来あるべき地方再生を破壊するものでしかない、と批判した。


 民主党議員で「TPPを慎重に考える会」の篠原孝会長は、韓国でも韓米FTAに盛り込まれたISD条項は主権の侵害だ、との批判が多く出ている。先進国間の日豪EPAにはないが、日本は新興国とのEPAには盛り込み、現地の暴動による進出企業の利益を図るためなどとしている。しかしISD条項は、日本国憲法76条の司法権を侵害し各国においても主権を侵害するものであると、TPPに盛り込むことは問題だとした。同日参議院本会議があり、参加予定の、社民党の吉田党首、民主党徳永議員、民主党郡議員、生活の党畑こうじ議員は参加できなかったが、それぞれの秘書の方々も本集会に参加した。

2)次に、各界代表からのリレートークに移った。
全国農協青年組織協議会からは、TPPで地方は衰退し、疲弊してしまう。政府はTPP交渉においては不退転の決意で臨んでほしい、とのメッセージが届けられた。
 全国保険医団体連合会の住江会長は、TPP交渉では事前交渉を含め、新薬の薬価を市場価格で高く設定すること、SPS協定分野でも新薬の危険性に対して予防原則による事前規制を認めないル―ルがまかり通ること、知的財産権分野では、また特許の範囲を薬だけでなく診断方法や手術方法にまで拡大すること、すでに日本で実施され始めた混合診療によって事業者が儲ける仕組みが作られており、今後国民の健康・生命を米国に引き渡すことになる、特許の保護期間に関して日本政府は昨年の態度を変えて米国とともに特許保護期間の延長を主張している、と批判した。
 千葉県農民連の大木会長は、農家は安全・安心な米作りを続けてきたが今年の米価暴落はTPPの先取りであること、米価安定のための「ナラシ対策」は農家が参加しておらず、現実的ではないこと、農協は米代金の概算金を農家に払うだけで、追加金の支払いは全く期待できず、農家は販売しても生産コストをまかなえない。このままでは後継者もおらず耕作放棄地は増え地域は疲弊する一方だと、現状を訴えた。
 建設政策研究所の村松専務理事は、国内企業は海外への進出傾向が高まり、地域社会や労働者にとってもその悪影響が出ている。その状況に加えて、TPPは公共調達の開放を促そうとしており、自治体の公契約条例への介入、PFIへの米国企業の参入、入札において資材の品質基準を相互承認できるなど基準の緩和を行おうとしているなど、国内建設業への影響は大きい、と危惧した。
 郵政産業労働者ユニオンの須藤書記長は、米国USTRの外国貿易障壁報告書などで以前より郵政民営化への攻撃が続いてきたが、すでに保険・貯金の新商品の販売は禁止され、米国アフラック保険は日本へ進出している。今や、郵便貯金、簡保生命の約300兆円の資産が米国企業によって狙われている。労働分野においては労働者派遣法の改悪、労働法の改悪によって「限定正社員」の導入、成果主義の給与制度などが強引に行われようとしており、これらはTPPの先取りといえる、と訴えた。
 主婦連合会の河村事務局長は、消費者団体として一貫してTPPに反対してきたが、それは、競争市場ルールによって不公平な貿易ルールが押しつけられ関税が撤廃され、暮らしの安全が損なわれるからだ。またTPPの秘密交渉も大問題だ。これは日本の消費者にとってもメリットはなく、今後も国際連帯行動を伴う反対運動を展開したい、と決意を述べた。
 大学教員の会の大西慶大教授は、TPPをめぐる利害対立は日米などの国益ばかりでなく、日本国内における自動車など輸出を拡大している産業と農業、保険、医療などとの対立がその背後に存在することをみなければならない。また日本の輸出産業はアベノミクスが進める円安によって利益を得ていることを忘れてはならない、と分析した。
 星野全農協労連書記は、共済研究会として、共済制度に対してTPPからの攻撃が激しくなっている。国内法的にも適用除外とされる農協共済などとは異なり、とりわけPTA共済や障害者共済などの助け合い、相互扶助の理念が強い制度は、無認可保険だなどとの攻撃がしかけられ民間保険への誘導が進められている。TPPは助け合い精神を破壊するものだ、と訴えた。
 弁護士ネットワークの和田弁護士は、米国からは司法制度への攻撃がすでにかけられてきたが、中間選挙で圧勝した共和党の主張はレームダック化したオバマ政権に日本への強い攻撃となって現れてくるだろう。これに対して弁護士ネットとして反対を続けていく。国民の貧困化をいっそう進めるTPP交渉の差し止めを求めて、個人の取り組みにおいても、「違憲訴訟」も進める、と述べた。

3)会場との意見交換では、TPPのメリット・デメリットをめぐって、TPPの先取りである国家戦略特区制度、ISD条項批判、11月8日を中心とした国際反TPPデイの状況、などが討議された。

4)最後に本実行委員会の事務局の坂口さんより、今日の議論でTPPの内容として人々にはメリットがないこと、手続きとしても交渉の秘密主義が問題であることが明らかになった。これまでTPP交渉を合意させなかったのは、人々の協働の成果でもある。まず年内の妥結を阻止しよう、との閉会挨拶があり集会を締めくくった。
(記 山浦康明)


2014年11月4日火曜日

11月4日(火)18:30〜STOP TPP!! 官邸前アクション TPP反対!国際統一アクションデー

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STOP TPP!! 官邸前アクション
TPP反対!国際統一アクションデー

“なし崩しの交渉妥結は許さない!
  官邸前でSTOP TPP!!”

2014.11.4(火)18:30~20:00
※時間が変更になっていますのでご注意ください

http://tpp.jimdo.com/2014/10/31/11-4-kanteimae/
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 9月23日、24日の日米関税協議が物別れに終わって以降、10月のオーストラリアでの首席交渉官会合と閣僚会合が開かれましたが、ここでも交渉に大きな進展はなかったと報じられています。
 しかし、11月4日の米国中間選挙、そして中国でのAPECなどの動きの中で、年内に妥結をめざそうとする動きは完全に止まったわけではありません。また並行する形で、国会では日豪EPA採択の流れがさらに進められています。
 一見、停滞しているかのように見られる交渉ですが、秘密交渉の中でどのような議論がされているか、また日本は日米協議にてどこまでの譲歩案を米国に提示したのか、私たちは知ることができません。日米関税協議が進めばTPP交渉が大きく進展してしまう危険性もあります。これ以上、無理な交渉を重ねて国民を裏切ることは許せません。
 国際的にも、TPP交渉の山場が11月の米国中間選挙後ととらえ、11月8日を「国際統一アクションデー」として、米国やオーストラリア、ニュージーランドで市民による大規模なアクションが予定されています。今回の官邸前アクションは、この国際アクションの一環として、より幅広い方々への参加を呼びかけます。


●日時:2014年11月4日(火)18:30~20:00
  ※通常より開始時間が30分遅くなっていますのでご注意ください。

●場所:首相官邸前(国会記者会館側)
    丸ノ内線・千代田線「国会議事堂前」駅 3番出口(徒歩1分)
    地図:http://yahoo.jp/v1pfet

●内容:呼びかけ人、ゲスト、国会議員によるスピーチ
    路上演劇 他

●呼びかけ人
安部芳裕(プロジェクト99%)/内田聖子(アジア太平洋資料センター〈PARC〉)/こみねまいこ(プロジェクト99%)/坂口正明(全国食健連)/まつだよしこ(TPPって何?)/安田美絵(『サルでもわかるTPP』著者)

【主催・お問合せ】
STOP TPP!! 官邸前アクション実行委員会
〒101-0063 千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
アジア太平洋資料センター(PARC) 気付
TEL.03-5209-3455
FAX.03-5209-3453

2014年10月31日金曜日

11月7日(金)11:00〜「TPPって何?」が院内集会開催

 STOP TPP!! 市民アクションの構成団体でもあるFacebookグループ「TPPって何?」が11月7日に議員会館でイベントを開催します。

           ☆ ★ ☆

 Facebookグループ「TPPって何?」は2011年8月発足当初から、少ない公開資料やリーク文書、国内外の団体との情報・意見交換を通して、TPP協定交渉の内容について情報を収集し、分析してきました。産業界からの強い要望で始まったこのTPP協定ですが、政府の説明によれば、TPP協定交渉は通商条約ではなく「交渉参加国による新グローバル経済秩序構築の過程」と位置づけられているそうです。言い換えれば新しい経済のルールを決める交渉をしており、協定の行方によっては我が国の国民生活に大きく影響を与えるものになる可能性が高いものです。

 日米両政府の強い希望により、早期妥結を目指すTPP協定交渉の節目となり得るAPEC首脳会合を前に、11月8日を中心として世界各地の一般国民からなる団体などによるTPPを始めとする自由貿易協定に関する様々な催しが予定されています。

 そこでこの機会に、私たち「TPPって何?」では改めてTPP協定が国民生活にとって、どのような影響を与えるのかを中心に、これまでの調査結果を共有し合い、議論を進めるための集会を開きたいと考えています。そして最終的にはこのTPP協定を始めとする自由貿易協定で決まっていくとされる新しいグローバル経済秩序が、どのような姿になれば産業界だけでなく、我が国の国民生活、ひいては協定圏の国々の一般の人々の生活を真に豊かにしていくことができるのか、生活者としての視点で政府対策本部に対する提言を行っていくことを目的としています。

《集会概要》
日時: 2014年11月7日 11:00~13:00
場所: 参議院議員会館 地下1階B109会議室 〒100-0014 東京都 千代田区永田町2-1-1
主催: Facebookグループ「TPPって何?」
https://www.facebook.com/groups/whatisTPP/

※参加希望者は当日10:30に参議院議員会館入口に集合してください。入口で「TPPが国民生活に与える影響について考えるための勉強会」というサインを持ったスタッフから入館証を受け取り、入館してください。

※入館の際、手荷物検査がありますので、時間には余裕を持ってお越しください。

2014年10月26日日曜日

11月7日(金)10:30〜リレートーク 「いま言いたい!TPP交渉」を開催!

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉は、11月「大筋合意」をめざして、各級交渉会合が展開されています。
 しかし、交渉の秘密主義は解決されず、TPPについて様々な分野から発せられている懸念は払拭されていません。それどころか、衆参農林水産委員会における国会決議が守られた交渉になっているのかさえ、定かではありません。
 私たちは、このままTPP交渉が「合意」されることを受け入れることはできません。
 いまこそ、日本を含む参加各国の人々の暮らしや健康、雇用、地域を脅かしかねないTPP交渉に対して、「秘密交渉のまま合意することは許されない」という世論を喚起するため、各界の思いを政府に、国会に、そして社会にアピールすべき時だと考え、標記リレートークの場を設定し、参加を呼びかけることとしました。
 TPP交渉へのスタンスは、「反対」「慎重に」あるいは「国会決議実現」などいろいろとは思いますが、秘密交渉のまま11月「大筋合意」は許されないの思いを共有し、アピールしたいと考えています。なお、この時期、参加各国の市民組織も、TPP交渉への思いをアピールする国際行動を予定しており、私たちのリレートークもまた国際的なアピールの場にもなると考えています。

【開催概要】
日時:2014年11月7日(金)10時30分~12時30分
場所:参議院議員会館「101号室」
内容:①各界からのアピール(各5分)
   ②超党派国会議員からのアピール・決意(各5分)
   ③マスコミからの取材・質疑

リレートーク「いま言いたい!TPP交渉」実行委員会
共同代表:醍醐聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)     
     中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)                 
     山根香織(主婦連合会)
事務局:STOP TPP!! 市民アクション
連絡先:全国食健連(〒151-0053 渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階)
    電話03-3372-6112/FAX 03-3370-8329

2014年9月1日月曜日

TPPをめぐる運動のこれからを考える 9.27全国交流集会のご案内

TPPをめぐる運動のこれからを考える
9.27全国交流集会のご案内

 2010年秋、当時の菅首相が「TPPへの参加」を言い出してから4年、全国でTPP参加に反対する、あるいは慎重に、さらには国会決議を守れという運動が精力的に進められています。しかも、各界・各層の人たち、団体が共同して運動をすすめていることが大きな特徴です。政府に最終的な「妥協」・「合意」を許していない力になっています。

 この中で、交渉が秘密主義のゆえに先行きが見えにくいことも反映して、「これからの運動をどう進めるか」「各地の経験にも学びたい」という声が聞かれます。昨年の「これでいいのか?!TPP12.8大行動」、今年の「もうやめよう!TPP交渉3.30大行動」をよびかけた、大学教員の会、弁護士ネットワーク、主婦連などが中心になって、これらの声に応えて、全国的な交流集会を開催することにしました。

 オバマ大統領が主張しているように、この年末もまた、「合意」の目標にされ、大きな山場になろうとしています。「もうやめよう!TPP交渉」の声をさらに強めるために、ぜひたくさんの方々、団体のご参加をよびかけます。

【全体会会場の地図】
《日時》:
2014年9月27日(土)11~19時

《場所》:
東京御茶ノ水「明治大学リバティータワー 1022教室」ほか

《内容》:
 11時~12時30分 全体会での報告
   *「いま世界と日本の流れの中でのTPPの意義」
    鈴木宣弘さん(東京大学大学院教授 )
  *「TPP交渉はじめ通商交渉の現局面と国際的な対抗運動」
    内田聖子さん (アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長)
   *「各界・各層を結集した共同運動の実践報告」(要請中)          

 13時30分~16時 分科会
    ①「TPPやその先取りの動きへの対抗運動」
    ②「地域での共同運動を前進させるために」
    ③「秘密主義の克服、情報共有のために」
    ④「全国的な運動や国際連帯強化のために」
    をテーマに、各分科会でレポートを受け討論します。 
 *各分科会での活動紹介や今後の運動に関するレポートを募集します。

 16時~17時  全体会(分科会報告とまとめ)
【懇親会会場の地図】
17時20分~19時 懇親会(各地の美味しいものを持ち寄りましょう)
 (場所は「在日本韓国YMCA・アジア青少年センター」に移動)

《参加費》:
集会資料代500円
懇親会参加費3,000円

《主催》:
TPPをめぐる運動のこれからを考える全国交流集会実行委員会

《共同代表》:
 醍醐 聰(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会)
 中野和子(TPPに反対する弁護士ネットワーク)
 山根香織(主婦連合会)

《事務局連絡先・申し込み先》:
※「申込書」をダウンロードし、必要事項を明記の上、以下の宛先へお送り下さい。
■申込書(wordファイル)
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/927moushikomi.doc

全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)
〒151-0053 
東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階
TEL 03-3372-6112 
FAX 03-3370-8329
Eメール:center※shokkenren.jp(※を@に)

2014年8月23日土曜日

TPP等の貿易協定発効前に 交渉参加国に対して法律変更を求める 米国の法的「承認手続き」に関するQ&A


TPP等の貿易協定発効前に
交渉参加国に対して法律変更を求める
米国の法的「承認手続き」に関するQ&A


Q&A ON THE US LEGAL REQUIREMENT FOR 'CERTIFICATION' OF
TRADE PARTNERS’ COMPLIANCE
BEFORE AN AGREEMENT LIKE THE TPPA GOES INTO EFFECT

Professor Jane Kelsey, Faculty of Law, The University of Auckland, New Zealand and
Sanya Reid Smith, Legal Adviser and Senior Researcher, Third World Network

2014年8月20日
STOP TPP!! 市民アクション

PDF版ダウンロード>
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/140821_Certification.pdf

* * *


日本語版翻訳にあたって

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に日本が参加してから丸1年が経った。
 日本が参加した後、ブルネイでの全体交渉会合(2013年8月以来開かれていない)や各分野別会合、首席交渉官会合などが重ねられ、またAPEC等の国際会合に合わせて閣僚級会合も持たれてきた。さらに各国は、二国間での交渉を並行して進めている。
 しかし、常に「年内妥結」という目標が掲げられるものの、交渉の実態は困難に満ちている。
 最大の論点といわれる日米の関税交渉、知的財産、環境、国有企業などの懸案分野の妥結の目処は立たず、2014年夏のカナダ・オタワでの交渉会合を経てもその行く末は見えていない。
 秘密交渉であるTPP交渉については、そもそも交渉テキスト(条文)は非公開であり、各参加国が交渉参加前に交わす「保秘契約」があるため、政府交渉官は自国のステークホルダーはもちろん、同じ政権与党の国会議員にすら交渉の詳細を明らかにできないことになっている。各国の市民社会、国民・住民に交渉の中身がほとんど知らされていないことはいうまでもない。

 そんな中、TPPに反対する国際NGOグループは、日常的には情報交換や行動戦略を練り、また交渉官会合・閣僚会合が行われる際には現地に赴き情報収集に努めている。日本の市民グループ「STOP TPP!!市民アクション」のメンバーも、その一員である。
 7月のオタワ会合を経た後、国際NGO主要メンバーより、米国内の貿易協定発効までの承認手続き(Certification)が実行されれば、米国以外の交渉参加国の国内法や政策の変更が強いられる危険性があるとして、広く周知を行う呼びかけがあった。
 すでに様々な自由貿易協定(FTA)にて「活用」されているこの承認手続きについては、各国の市民はもちろんのこと、法曹界、ジャーナリスト、国会議員の間でも十分に知られていない。しかし80年代以降に数々と結ばれてきたFTAとそれを認めるための承認手続きにおいて、米国がいかに強く他国の法律変更を要求し、自らの要求を実現してきたか。国際NGOメンバーによる本ペーパーは、その驚くべき実態を詳細にレポートしている。
 承認手続きによって、米国はそもそも協定文書に書かれていない内容についてまでも、相手国に法律変更を要求してきた。知的財産権、テレコミュニケーション、税関、農産品、紛争解決、外国企業のための措置、医薬製造承認におけるデータ保護期間の変更などじつに多岐にわたる分野である。
 いうまでもなく、TPP交渉においても米国はこの「承認手続き」を用いて、他の交渉参加国に対して国内法・制度・慣行の変更を要求するものと思われる。その際のターゲットの筆頭が、日本である、というのが本ペーパーの主旨でもある。そもそもTPP交渉以前から、米国は『貿易障壁報告書』等で日本の様々な法制や規制、慣行を「貿易の障壁だ」と列挙してきた。これら「壊すべき規制」は、TPP交渉と並行させられながら、仮に協定文に具体的な文言として盛り込まれていなかったとしても、この承認手続きのプロセスにおいて、強硬に「変更を強いられる」ことは間違いない。
TPP反対運動の関係者はもちろん、弁護士、国会議員、一般の人たちへ周知のため、ここに問題提起を行いたい。
 国際NGOグループは、すでに英文のウェブサイト(http://tppnocertification.org/)を立ち上げ、様々な文書を発信している。本ペーパーの日本語版についても、近日中に同ウェブサイトに掲載予定である。
 
STOP TPP!! 市民アクション
アジア太平洋資料センター(PARC) 内田聖子

* * *


【INDEX】
1.承認手続きとは何か?
2.承認手続きという制度はいつ、なぜ導入されたのか?
3.なぜ承認手続きは、近年になってより長期間を要するようになっているのか?
4.承認手続きの法的権限は何か?
5.同様な法的義務がTPPAにも適用されることになるのか?
6.承認手続きは、ファスト・トラックとどう違うのか?
7.もし米国大統領がファスト・トラック権限を持っていても、なお議会はTPPA最終条文の変更ができるのか?
8.為替操作のような規則が、何らかの形でTPPに含まれることがあるのか?
9.議会メンバーは協定相手国と直接交渉できるのか?
10.もし大統領がファスト・トラックを賦与され、さらに議会がTPPを承認したら、承認手続きは自動的に達成されたことになるのか?
11.もし大統領がファスト・トラック権限を有しない場合はどうなるか?
12.実際に承認手続きとはどのように動くのか?
13.このことは、米国が過去に結んだFTA相手国にとって実際的に何を意味したのか?
14.米国政府担当官達が協定参加他国の法案作成に関わるというのは本当か?
15.米国企業がこの承認手続きプロセスで果たす役割は何か?
16.米国市民社会もまた、承認手続きプロセスに影響力を行使できるのか?
17.米国政府による他の協定諸国の諸法案作成に対する介入は公になるのか?
18.承認手続きにはどれくらいの時間をかけることができるのか?
19.承認手続きは正式な法制度にだけ適用されるのか?
20.協定の条文が曖昧で解釈の余地がある場合はどうなるのか?
21.協定内容を国内法制に反映させる仕組みが異なる場合、承認手続きはそれに対処できるのか?
22.協定内容を上回るような要求を米国はおこなっているか?
23.米国の主張を裏づけるエビデンス(証拠)は別途必要なのか?
24.そのような合意がなされた際に交渉に参加していなかった国の扱いは?
25.TPPの参加協議での合意事項を米国は利用できるか?
26.米国とのTPP並行交渉の設置は参加承認の条件となっているか?
27.米国の要求を拒んだらどうなるか?
28.米国が要求する法制度の変更を拒んだらどうなるか?
29.米国のFTAは相手国の民主的プロセスにどのような影響を及ぼしてきたか?
30.米国を相手に再交渉をおこなうことは可能か?
31.承認手続きは米国の干渉に対する国内の反発を引き起こさないのか?
32.TPPのような複数国間協定でも個別の承認となるのか?
33.原産地規則は非承認国をどのように扱うのか?
34.承認手続きの過程で米国はTPPでの約束事項を変更することができるのか?
35.他の交渉参加国は、自国の承認手続きを米国に要求できるのか?
36.どのような法律が承認手続きで狙われてきたのか?

* * *


1.承認手続きとは何か?
米国大統領は、自由貿易協定(FTA)の合意相手国が協定を遵守するのに必要となる国内諸法や諸政策を、米国側の期待を満足させるものに変更していると米国政府が承認するまで、自国の国内承認プロセスを完了したという相手国への公式通知を保留する。
このことが意味するところは、仮に米国議会が環太平洋連携協定(TPP)を承認し、さらに他の締結国が独自の国内承認過程を完了したとしてもなお、米国政府が「他国が協定内容を実施した」と承認しない限り、また承認するまでTPPは発効しないということである。
 この承認プロセスは、米国政府に対してすでに交渉を通じて達した合意を書き換えさせる「テコ」を与え、また協定が署名された後にさらに追加的な譲歩を確実に獲得させることになる可能性を持つ。

2.承認手続きという制度はいつ、なぜ導入されたのか?
「承認手続き」という条文は、米国議会が関税や輸入割当量を超えて拡大された諸内容を含む「通商」協定を承認するようになって以来、アメリカの通商協定実施法に含まれるようになった。それが最初に適用されたのは1988年のカナダ・アメリカ自由貿易協定(CUFTA)であり、次いで1993年の北米自由貿易協定(FTA)であった(註1)。承認手続き規定の条文は、その後ほとんど同じ形で維持されてきた。その重大な含意にも関わらず、米国のこの承認手続きは、その犠牲者となった諸国を除けば、良く知られていない。

3.なぜ承認手続きは、近年になってより長期間を要するようになっているのか?
チリ政府は、米国-チリFTAにおける知的財産権について、米国側がチリの義務だと考える事柄を遵守するために、米国からの圧力に直面した。チリ政府は米国とのFTAが効力を発揮した後にそのような変更を行なうことを拒否した。また米国からは、オーストラリアが医薬品と知的財産権に関する米豪FTAの諸義務を、オーストラリアが果たしていないという懸念が報告された(註2)。それ以来、企業があからさまに要求した諸変更をさせることにより多くの焦点があてられるようになっており、そのため以下に論じるような長期間の遅延が生じるようになったのである。

4.承認手続きの法的権限は何か?
承認手続きは、米国大統領に対して法的拘束力を持った義務である。それは過去26年間に米国が締結した各FTA実施のために議会を通過した法律に含まれている。最近の例として米韓FTAの実施法があるが、そこでは以下のように明言している。
協定発効のための諸条件:本協定が発効する期日に効力を発揮する本協定の諸条項を遵守するために必要な諸手段を韓国政府が措置したと米国大統領が判断した時にはじめて、2012年1月1日ないしそれ以降に、米国大統領は韓国政府との間で本協定が米国に関して発効する旨を記載した覚書を交換する権限を与えられる(註3)。

5.同様な法的義務がTPPにも適用されることになるのか?
同様の一方的な承認手続き義務が、TPPにも適用される可能性がある。実際、承認手続き義務が達成されているかどうについてUSTRが議会と協議するための新たで追加的な諸義務が、大統領にファスト・トラック権限を与えるための議会提出法案に含まれている。2014年1月にTPPのためのファスト・トラックを賦与すべく提案された「2014年超党派通商優先事項法(キャンプ・ボーカス法案の名でも知られている)」は,第4項(a)(2)として,以下の条文を含んでいる。
発効する前の協議:通商協定を発効するための覚書を交換する前に、USTRは密接かつ時宜を得た形でパラグラフ(1)に特定した議会および同委員会メンバーと協議を行ない、協定相手国が当該協定が発効する期日に当該協定の諸条文を遵守するために効力を発する措置を全面的に通知し続けること。

6.承認手続きは、ファスト・トラック(TPA)とどう違うのか?
承認手続きは、ファスト・トラック(つまり貿易促進権限:TPA)とは別のプロセスである。ファスト・トラックとは、議会が米国大統領に対して、議会での採択前にある協定の交渉・署名・および加入の権限を与え、その上で議会が当該FTAを一括承認するか否決するかを90日以内に投票することを保証するものである。ファスト・トラックは協定についていかなる修正も許さないだけでなく、協定について議会が審議する時間をも制限し、それらによって迅速な通過を確実にしようとするものである(註4)。

7.もし大統領がファスト・トラック権限を持っていても、議会はTPP最終条文の変更ができるのか?
大統領にファスト・トラックが賦与されていても、議会の多数派はTPPに変更を加えることができると主張している。実際彼らはそうしてきた。例えば2007年にジョージ・W・ブッシュ大統領が署名した米韓FTAが一例である。2011年に大統領が署名した同協定が議会を通過しないことが明白になると、バラク・オバマ大統領は自動車と農産物の貿易に関する追加的な譲歩を韓国に要求した(註5)。もし韓国がそれに同意していなければ、韓国は承認手続きの前提条件として「変更を行なうように」という新たな圧力を受けていただろう。

8.為替操作のような規則が、何らかの形でTPPに含まれることがあるのか?
TPPがすべての協定国に普遍的に適用される、いわゆる為替操作に対する規則を含まないで署名された場合、米国政府が署名後に追加的な要求としてそれを求める可能性はある。韓米FTA署名の4年後に起きた事態のように、米国政府担当官達が「追加的な譲歩なしには署名された協定を議会で通過させることができない」と表明することになるだろう。米国政府が定義した追加的な規則が、新たな条文を付与する附属合意書をつうじて追加され、TPPAの中核条文に一体化され、その附属合意書の実効化に伴って完全な強制力を持つことが可能となる。

9.議会メンバーは協定相手国と直接に交渉できるのか?
公式には、行政府が外国政府との交渉において米国国家を代表する。しかし実際には、議会メンバーは、自分達がFTA実施法案を支持する条件としてさらなる譲歩を外国政府に対して直接に要求するという行動に関与してきた。
例えば、当時のブッシュ大統領が対ペルーFTAに署名してから何年も経ってから、議会下院歳入委員会は同大統領に労働および環境分野に新たな条文を追加するよう圧力をかけた。同時にペルー政府に対して、労働、森林、およびその他の法律や措置について、彼らが同FTAを遵守するために必要だと考える内容を指定して要求する文書を提出したのだ。ペルー政府は明らかにそれらに応じる態度を見せ、変更のいくつかを実際に措置した。このようにしてFTAは議会を通過したのだった。しかし歳入委員会メンバーはなお、彼らの要求リストすべてが達成されない限り、ブッシュ大統領が承認手続きをすべきではないと主張したのである。
ブッシュ大統領は、医薬品ロビイ団体が承認手続きの条件として要求していた知的財産権について、ペルー政府が変更をしたことを強調したが、最終的に歳入委員会が承認手続き前に実行されるべきだとした労働、環境・森林に関する変更リストすべてを要求することはしなかった。その結果、今では今後の通商権限には、協定が発効となる前にいっそう強力な承認手続き諸義務を含むことについての超党派による賛同が存在している。

10.もし大統領がファスト・トラックを賦与され、さらに議会がTPPを承認したら、承認手続きは自動的に達成されたことになるのか?
そうではない。協定が議会を通過した後でさえ、協定相手諸国が米国が考える協定遵守を満たしたと米国が承認しない限り、協定は発効しない。承認手続きは、米国議会と米国産業界に対して、協定が署名され承認された後でさえ、協定相手諸国に対して追加的な譲歩を実現させるための追加的な「テコ」を賦与するものなのである。

11.もし大統領がファスト・トラック権限を持たない場合はどうなるか?
オバマ大統領は現在、ファスト・トラックを有していない。実際、過去20年間で議会がこの特別な権限を大統領に付与したのは2002~2007年の計5年間に過ぎない。ファスト・トラックがない場合、通常の議会投票手続きが適用される。第一に、下院と上院の該当委員会がTPP実施法案に修正提案をすることができ、協定条文に追加的な内容を盛り込ませたり、米国政府が行なった譲歩を取り除かせたりすることを、実施法案成立の条件にすることになる。あるいはまた該当委員会は、署名された協定そのものを単純に否決ないし承認するかもしれないが、その場合、当該協定は米国については実施される法的強制力を持たないことになってしまうことを意味する。
次いで上院本会議での審議について言えば、単純に、審議を終えたら承認のために100名の上院議員のうち60人の圧倒的多数の賛成が必要となる。もしこのハードルがクリアされたら、どの上院議員も本会議で修正を提案できる。下院では、議事運営員会がいくつの修正提案を本会議で審議することを許容するかを決定する。

12.実際に承認手続きとはどのように動くのか?
米国政府担当官達が協定が発効することを許容する前に、米国政府が協定相手諸国に対して、米国政府が要求する各国国内諸法および諸政策変更リストを伝達する。それから米国政府担当官達はそれらが遵守されているかを監視し、米国の目からして変更すべき内容を満たすまで、相手国政府に対してその国内諸法や諸政策を変えるよう圧力をかける。USTRは2009年に次のように表明している。「USTRは,FTAへの遵守が達成されるまで,遵守に関する承認をしないという我が国の法的義務を非常に良く認識している」と(註6)。

13.このことは、米国が過去に結んだFTA相手国にとって実際的に何を意味したのか?
米国政府が他国に対して、各国で提案されている実施法案すべてを報告するよう要求し、それを米国が精査しコメントできるようにするという、共通したパターンがある。それに続いて、それら実施法案について米国政府との何ヶ月もの交渉が行なわれる。この交渉会合は当該国および米国の両方で行なわれる。
報告された多くの事例がある。エルサルバドルは少なくとも3回の交渉を持たされた(うち2回は米国にて)。高官レベルの政府代表団、さらに農業および経済大臣までもが、そもそも中米FTA条文には含まれていなかった米国の畜肉・家禽検査を受け入れろという要求への交渉のために派遣された(後述)(註7)。
米国政府は、コスタリカの7つの法律について条文を承認したが、それはコスタリカ自身がそれらを採択するより前のことだった。それらの法律とは、外国企業のための知的財産権、著作権、電気通信、税関手続き、農業、刑事訴訟手続き、および流通システム作りに関連するものだった。米国政府は,それら法案の最終版に何ら変更がないことを確証するために、検閲していたのである(註8)。
ニカラグアは中米FTAを実施するために成立させた法律を、なんとニカラグア大統領が署名する前に米国政府に検閲のために送っていた。米国政府は、ニカラグアがすべての実施プロセスを完遂するのを確実に保障するために、同法を公開するよう要求したのだった。米国政府は、あからさまに法案の中の数々の運用諸措置を明確化させようとした(註9)。
パナマ政府の担当官達は、USTRと「密接に作業している」と述べていた(註10)。
ドミニカ共和国の中米FTA承認手続きをめぐって、米国政府は同国の7つの中米FTA実施法の条文を事前承認し、さらに承認手続きに達する以前にいかなる変更もなされていないことを確証するために最終法を検閲していた(註11)。
グアテマラは2006年5月下旬に中米FTAを発効させるための法律を成立させたが、それはUSTRとの密接な協議を経てのことであり、しかしなお法律が米国政府の諸条件に合致しているかをUSTRが確認するために数ヶ月も待たされたのだった(註12)。

14.米国政府担当官達が協定参加他国の法案作成に関わるというのは本当か?
このことを文書で示している最もよい事例は、ペルーのケースである。2008年にUSTR代表代行がペルーに向かい、米国政府が要求していた「35の新たな法案をペルー政府が仕上げるのを支援した」ことが報じられた。おまけに、2チームの米国政府法律顧問がペルー政府が環境およびビジネス法案を作成するのを支援したのである(註13)。報告によれば、この35の法律には医薬品のデータ保護、投資家紛争処理、先住民族の土地所有権および教育システムへの変更が含まれていた(註14)。
米国情報自由法によって公開された諸文書が、さらに詳細な内容を提供している(註15)。付録Aの文書は、USTRスタッフ、リマの米国大使館スタッフ、その他の米国政府担当官、およびペルー政府担当官の間で2008年と2009年の期間、すなわち米国・ペルーFTAにおいて、ペルーが米国政府の期待を満たすために自国の諸法律や諸規制を変更するよう要求されていた時期に交わされたコミュニケーションからの抜粋である。
これらの変更は、ペルーが同FTAを2009年2月1日に発効させる前提条件として義務づけられた事項を達成したとする、米国政府の一方的承認を得るために行なわれたものである。
それらコミュニケーションのほとんどが、特にFTAの要求についてのUSTRの解釈をペルーが遵守するために採用された論争的な法令、すなわちペルー森林・野生動物法LD1090をめぐるものだった。それらは特に表記がない限りUSTR内部でのコミュニケーションである。

15.米国企業がこの承認手続きプロセスで果たす役割は何か?
報道によれば、米国の法律がFTAを承認する場合に求める詳細に加えて、米国企業の利害が承認手続きプロセスでの米国政府の要求の背景になっていることを示している。これら米国企業の利害には、米国のコメや豚肉産業(註16)、全米繊維産業団体評議会(註17)、シェブロン(訳注:巨大石油企業)(註18)、アルコール産業(註19)、国際知的財産同盟(註20)、米国研究製薬工業協会(註21)、そして全米肉牛生産者協会,全米豚肉生産者評議会,家禽肉輸出業者が含まれる(註22)。

16.米国市民社会も承認手続きプロセスに影響力を行使できるのか?
米国の諸労働組合は、米国政府担当官が対ペルーFTAを遵守するために必要と考えていた以上に、ペルーの労働諸法の追加的な変更を追求していた。労働組合と環境保護NGO組織の双方が、彼らが解釈するところの同FTAに合致するための諸法律が変更されない限り承認手続きに反対するという議論をしていた(註23)。
オバマ大統領は、コロンビア政府が合意された労働アクションプランを完全に実施していないにも関わらず、米国とのFTA遵守を承認してしまった。これが、民主党議員達が共和党議員達と同様に、彼らがTPPを遵守していると見なすことを確実に保障するために承認手続きを利用すると判断した理由の一つである。

17.米国政府による他の協定諸国の諸法案作成に対する介入は公になるのか?
公式の記録を見いだすのは困難である。利用可能な情報のほとんどは報道メディア、主要にはInside US Trade誌で提供されるものである。同誌は米国の業界の視点、米国あるいは米国の標的になっている国の政府担当官や政治家達のコメントを報道している。
米国政府と他のTPP協定参加国政府の間のコミュニケーションもまた、協定が発効してから4年後までは背景文書類の公表が妨げられるという同交渉の秘密条項の対象になってしまう可能性がある。この秘密条項が適用される文書類の分類もまた秘密であるがゆえに、何らかの確定的なことを述べるのは不可能なのだ。
いくつかのTPP交渉諸国内では、各国政府間のコミュニケーションは厳格な保秘義務に従うことになり、情報の自由法による公開対象にすらならないとされている。したがって他のTPPA交渉国の一般公衆はもとより国会議員にとってさえ、米国が各国の諸法律や諸政策の立案に関与していたり関与したことがあること、あるいはどのような異なる解釈が提案されたか、また自分達の政府が妥協したのかどうかについて知ることが不可能になるかもしれないのである。

18.承認手続きにはどれくらいの時間をかけることができるのか?
表Aに示すように、各国が批准のために必要な手続きをおこなってから、何年も後まで承認手続きを先延ばしにすることが可能である。米・パナマFTAの場合、パナマの議会承認は2007年であるが、米国議会の最終的な承認までには4年以上かかった。さらに、米国は(協定の発効に必要な)正式な通知をもう1年保留した。特許、著作権、金融サービス、電気通信、政府調達、税関手続き、貿易救済などの面で、パナマの法制度の変更が、米国を満足させるものではなかったのがその理由である。
つまり、米国のFTA実施法案が作成される過程では、この承認手続きにより協定の発効が無期限で保留される可能性がある。(TPPとのかかわりで)ベトナム、ブルネイなどの国々にこのような扱いを求める書簡が、2014年5月に米国の超党派の議員154名によって提出された。書簡は、以下のようにTPPの労働分野での義務化を問題にしている。
米国政府は、著しく不適切な労働基準を断じて認めてはならず、これらの国々が自国の労働法制の変更を受け入れ、その実施に向けて積極的な行動をとるまでは、協定の履行を保留すべきである(註24)。

表A                
FTA相手国    相手国の
議会承認など    米国の
実施法案成立    協定発効    遅延期間
エルサルバドル    2004年12月17日    2005年7月28日    2006年3月1日    7ヶ月
ホンジュラス    2005年3月3日    2005年7月28日    2006年4月1日    8ヶ月
ニカラグア    2005年10月9日    2005年7月28日    2006年4月1日    6ヶ月
グアテマラ    2005年3月10日    2005年7月28日    2006年7月1日    11ヶ月
ドミニカ共和国    2005年9月6日    2005年7月28日    2007年3月1日    18ヶ月
コスタリカ    2007年10月7日    2005年7月28日    2009年1月1日    15ヶ月
ペルー    2006年6月28日    2007年11月4日    2009年2月1日    14ヶ月
パナマ    2007年7月11日    2011年10月12日    2012年10月31日    12ヶ月
韓国    2011年11月22日    2011年10月12日    2012年3月15日    3ヶ月
注:1)コスタリカの承認日は国民投票がおこなわれた日付である。   
  2)遅延期間は相手国または米国の後の方の承認日と発効日から計算している。
  3)米韓FTAは2007年6月30日に署名したが、米国議会の主張により、自動車の追加的な市場アクセスで再交渉がおこなわれた。米国議会は、ファスト・トラックがあったにもかかわらず、FTA実施法案を承認する条件として再交渉を要求した(註25)。


19.承認手続きは正式な法制度にだけ適用されるのか?
否である。もっと広範囲の措置に適用される。これまでに知られているものを挙げれば、規制措置(註26)、制度・規制上の取り決め事項(註27)、国際協定(註28)、政令(註29)も対象になっている。

20.協定の条文が曖昧で解釈の余地がある場合はどうなるのか?
FTA協定の条文は、難航した問題であればあるほど、曖昧で不明瞭な妥協の産物となっており、各国が好ましいように解釈する余地が残されている。だからこそ、加盟国はFTAの条文に同意しているのである。米国は、そのような条文の解釈の仕方は有効だと主張している。

21.協定内容を国内法制に反映させる仕組みが異なる場合、承認手続きはそれに対処できるのか?
ひじょうに難しい。2006年に下院歳入委員会の民主党筆頭理事だったチャールズ・ランゲル議員は、CAFTAの実施が遅れた事情を次のように述べている。
CAFTAの実施が遅れたのは、USTRと中米諸国の間で、法解釈に根本的な相違があったことも要因である。FTAの署名国は、知的財産や農産品の市場アクセスといったすべての事項について、協定の内容を反映させて国内法制を変更しなければならない、とUSTRは主張した。逆に、中米諸国は自国の立法体系の下で、FTAが国内法制よりも上位にあるとはいえない、と反論したのである。(註30)
その結果、USTRは問題に応じて対処の仕方を変えた。知的財産分野ではCAFTAに参加する中米諸国に国内法制の変更を求めたものの、国際労働協定の遵守については、それを国内法制に導入するだけで十分である、とした(註31)。

22.協定内容を上回るような要求を米国はおこなっているか?
確かにおこなっている。協定本文に書かれていないことであっても、相手国が合意したと米国が考えているものは臆せず要求している。
CAFTAの場合、米国の食品製造施設の検査基準に同意するよう、中米諸国に要求している。そのことは協定本文には書かれていなかったが、USTRによれば合意事項であり、協定の発効前にこの米国基準に同意する必要があることをこれら中米諸国も認識していた、と主張していた。CAFTAの経験から引き出される教訓は、加盟国はもっと明瞭なかたちで、文書でそれをおこなうことを含めて、実施約束をすべきだと指摘する者もいる(註32)。
民主党議員で、上院財政委員会のチャールズ・グラッスリー委員長の認識も同じである。協定本文に記載はないが、中米諸国は協定の実施に先立って「同等の措置」(米国の食品製造施設の検査基準に同意すること)を受け入れなければならないことを認識していた、と言う。グラッスリー議員は、この問題が対処されるまでCAFTAの実施を急ぐ必要はない、とも述べている(註33)。
 過去にも、協定本文に含まれていないが、単なる「口約束」ではないとUSTRが主張する譲歩を獲得するために、米国は協定の承認を拒んだことがある。このような「荒っぽい交渉」のひとつの例として、グアテマラが医薬品に3年間のデータ保護を措置したことが挙げられる。これもCAFTAの本文にはなかったことである(註34)。

23.米国の主張を裏づけるエビデンス(証拠)は別途必要なのか?
米国は、協定本文の内容をはみだすような口頭の合意事項が存在していることを主張するわけだが、それを裏づけるようなエビデンス(証拠)が必要であるとは思っていないようだ。これまでも、米国の政府関係者は合意事項の存在を一方的に断定してきた。例えば、CAFTAをめぐっては、ファスト・トラック法が規定しているFTAの利害にかかわる米国の声明を、グラッスリー議員が引き合いに出したことがある。そこではこう書かれていた。
2005年6月にCAFTAの実施法案が上程された際、加盟国による「同等性」の判断は差し迫ったものであった。したがって、議会によるCAFTAの承認も、米国の食肉検査システムの「同等性」を加盟国が認めるだろうという見込みに基づいたものであった。(註35)

24.そのような合意がなされた際に交渉に参加していなかった国の扱いは?
TPPのように後から追加的な参加国が生まれている場合、このような米国の振る舞いはそうした参加国にとって問題となる。後から参加した国は、それまでに合意した事項をすべて受け入れることが求められているようだ。しかしこうした国々は、合意事項をめぐってどのような議論がおこなわれたのかを知らない。議事録があったとしても、それがどの程度詳細なものなのか、そして準備作業にかかわる正式な記録があるのかどうかは不明瞭である。もしそうしたものがあったとしても、米国は口頭の合意事項の存在を理由に、多くの対応を迫ってくるのである。

25.TPPの参加協議での合意事項を米国は利用できるか?
TPP交渉の参加条件として、後からの参加国は協議のプロセスを経る必要がある。そのプロセスで取り上げられるのは、TPPで十分な対処できそうにないと米国が考える事項、相手国の実施に曖昧性のある事項、米国が考えるようには相手国が十分な変更をおこなってこなかった事項などである。具体的には、食品の安全基準、自動車の排ガス基準、国有企業改革を含む競争法に関連した事項、電気通信規制などである。

26.米国とのTPP並行交渉の設置は参加承認の条件となっているか?
まさにそうなっている。CAFTAの場合、SPS分野で米国の食品検査制度の「同等性」を認めることは、協定に含まれていなかった。このことは、SPS分野の並行交渉で取り上げられたのである(註36)。
TPPでは、日本がこの面で深刻な問題を抱えている。並行交渉の設置は、米国が日本のTPP交渉参加を承認するための条件だったが、未だに日米間で大きな隔たりがある。そこで取り上げられているのは、日本の農産品重要5品目と自動車の非関税措置、食品の安全基準、 知財、国有企業(特に日本郵政)、投資、国内規制などである。

27.米国の要求を拒んだらどうなるか?
すべての交渉参加国は自国の法制度を決定する主権と、それを解釈する権限を有している。もしも米国がFTAの承認を拒んだなら、相手国は関税引き下げのようなメリットを米国から享受できなくなるだろう。
しかしながらTPPの場合、事態はもっと複雑である。もしも米国以外の国々の間でTPPが発効したとしても、知財分野のジェネリック医薬品に関するルールや国有企業の規律を各国は遵守しなければならない。米国がTPPの承認を拒んだらなら、米国という最も魅力的な市場は失われることになるが、その時でも米国以外の国々の間ではTPPは発効し、国内法制の変更が義務づけられることになるだろう。それは各国における新法として有効なものとなり、米国は何らの譲歩をおこなうことなく、その利益を獲得することができるのである。

28.米国が要求する法制度の変更を拒んだらどうなるか?
その場合、米国大統領が協定の承認を拒否することになり、TPPは発効しないだろう。

29.米国のFTAは相手国の民主的プロセスにどのような影響を及ぼしてきたか?
ペルーの場合、議会の承認がなくとも法律を制定する権限が、特例措置によって大統領に180日間与えられた(註37)。2008年7月4日の時点で、98もの法律がこの特例措置により成立していた(註38)。ペルー政府は、米ペルーFTAとは無関係の法改正でもこの権限を用いたと非難された。
パナマも行政上の権限を用いて多くの措置を実施している(註39)。

30.米国を相手に再交渉をおこなうことは可能か?
米国は再交渉を受け入れなければならず、貿易促進権限法が成立した場合であっても追加交渉が認められることになるだろう。米国が追加交渉に同意すれば、相手国は交渉による変更の代償として、いっそうの譲歩をせざるを得なくなるだろう。このことは、米国に新たな要求をおこなう余地を与えることになる。ただし、重大な変更があれば新たな議会の議決が必要だろう。
新たな譲歩の内容次第であるが、その国との協定が発効していない国々も、そこから利益を引き出そうと画策するだろう。

31.承認手続きは米国の干渉に対する国内の反発を引き起こさないのか?
承認手続きに伴う諸問題は、その国の政府が対処すべき国内問題として扱われる。ペルーの例を挙げれば、大統領が議会を無視して法制定をおこなう権限をもつことに抗議するべく、野党勢力と市民社会組織が全国規模のストライキを呼びかけた。先住民達も、鉱山開発と森林破壊に対する彼らの関与を薄れさせるような土地法制に抗議した。労働組合の反対行動も、中小企業法制の変更が労働者の権利を奪うことに向けられた(註40)。
ペルーは米国とのFTAに従い、アマゾン流域での石油・ガス開発と森林伐採に関連した投資措置を成立させた。2009年6月5日、ペルーの治安部隊は抗議行動をおこなっていたアワジュン族とワンビス族に対する武力行使をおこなった。そこには女性や子供も含まれていた。後に「バグア虐殺」と呼ばれるようになったこの衝突で、30人以上の人命が失われた(註41)。彼らは、大統領に与えられた法制定の特権の取消を求めて道路を封鎖していた。この虐殺の4日前に交わされた米国の外交公電を、ウィキリークスが暴露している。それによれば、ペルー政府が「寛大」な態度をとっていることを米国は問題視し、先住民の要求に屈することはFTAに「影響」を与えることになる、と警告を発していた。
コスタリカでは、生物多様性に影響を及ぼす知財ルールの制定を違憲とする判決を、最高裁が下した。このルールは先住民との協議を一切おこなわずに制定され、(先住民の権利を規定した)ILO第169号条約に違反している。しかし、この判決は軽視され、制定を押し止めることはできなかった(註42)。最高裁には再審理が要請され、最終的には合憲との判断を下したのである(註43)。
グアテマラでも、ジェネリック医薬品産業が知財法制に異議を唱えた(註44)。

32.TPPのような複数国間協定でも個別の承認となるのか?
前掲表に示したように、米国は相手国によって異なる時点でCAFTAを承認している。そのことは、米国の要求に従う相手国の意思次第である。TPPでも同じことになるだろう。

33.原産地規則は非承認国をどのように扱うのか?
この問題が生じたのはCAFTAである。すでに協定を実施していた国は、繊維製品で「累積」ルールを利用しようとしたが、まだ米国が承認していない国をそこに含めることはできなかった(註45)。CAFTAの中米諸国は、期待していた利益にあずかることなく、協定の実施を余儀なくされた。米国が承認を留保していた国があったからである。

34.承認手続きの過程で米国はTPPでの約束事項を変更することができるのか?
承認手続きというよりも、議会での承認手続きとのかかわりで、このような変更がなされる場合が多い。CAFTAの例を挙げれば、下院がCAFTAを承認しそうにないことが明らかになった時点で、USTRは原産地規則の変更を求めた。その目的は、衣料品のポケット部分で第三国の布地を使用することを排除するためだった。このことは、米国の繊維の業界団体が強く要望していたことでもあった。
CAFTAでは、原産地規則を変更する際には、全加盟国の承認を必要としていた。USTRは個別にこの交渉をおこなった。グアテマラは同意したものの、それと引き換えに米国から交換条件を引き出すことは困難を極めた(註46)。ドミニカ共和国もこれに合意したが、ドミニカに与えられた交換条件は他国に比べて乏しいものとなった。ドミニカとの間では、ズボンとスーツの製造にかかわる追加的な譲歩が、後日与えられるという了解が交わされたに留まった。これによっても、その困難性がうかがえる(註47)。

35.他の交渉参加国は、自国の承認手続きを米国に要求できるのか?
技術的には、他のTPP参加国は、米国に対して抵抗することによって、TPPが効力を持つことを拒絶できる。まず、実際にそれは政治的な影響力を持つ主要国になるだろう(とりわけ日本だろう)。日本にとってでさえ、米国はTPPを通じてアクセスしたい主要な市場である。
米国議会の議論に拘束されているために米国が何の譲歩もしないであろうことは、信じられないことのように見える。相互の承認手続きの結果は、米国以外の国による孤立や後退を意味することになるだろう。TPPのいくつかの内容は、米国の現行法に従うように計画されているということが事実であることを示すことができる。

36.どのような法律が承認手続きで狙われてきたのか?
コメと豚肉に関する輸入承認(グアテマラ、エルサルバドル):米国のコメ・豚肉産業は、グアテマラ、エルサルバドルにおける従来の輸入業者から、輸入承認を取り上げることを要求した。これは、関税割当制度を使って潜在的な購入量を最大にしようという目的のもと、大手業者に直接販売するための輸入承認や権限を割り当てる新たな法律を求める内容であった(註48)。

食用肉の承認を米国のものと同等にすること(グアテマラ、エルサルバドル):米国は、食用肉の輸送の際に、米国にて検疫・承認されたものを明確に受け入れるよう主張した(註49)。これはSPS(衛生植物検疫措置)の章に明記されていなかった。政府担当者は、この要求は「エルサルバドルにとっては、政治的な問題を持ち出されたということである。なぜなら、米国は意のままに新たな特権を要求しているからだ」と述べたといわれている(註50)。USTRは、この要求はCAFTAの内容にはないことは認識していたが、「参加調印した国々はこの内容を守ると約束した」と述べている(註51)。
この要求は、とても簡単には認められない内容だったために、エルサルバドル大統領は他国すべての大統領に対して、SPS問題を議論する会議を呼びかけ、またすべての国の経済産業大臣とのフォローアップ会議も呼びかけた(註52)。結局、エルサルバドルは食用肉と乳製品に関して、米国の食の安全と検査システムに準じることに合意をし、その結果、米国の食用肉と乳製品に必要とされている検査を行なわないことになった(註53)。米国は同様の要求を、ペルーとのFTAに署名する際の条件として提示し、そのことが農業分野の章が発表される際の論争点の一つとなった(註54)。
米国は、米国の基準に適合しないという理由から、その基準に達していない協定参加国からの食肉の輸出に関する相互的な承認を提案しなかった(註55)。

データ保護の期間延長(グアテマラ):CAFTAは5年間のデータ保護を規定している。米国は、たとえ特許がないすでに存在する医薬品であっても、新たな使用がなされた臨床試験データに対してさらに3年間の独占権を付与するように要求した。このことは、仮に特許がなくても、その医薬品が新たに使用される際の独占期間中は、ジェネリック薬品の販売を事実上阻止するものである(註56)。米国はCAFTA交渉中にこれを提案したが、中央アメリカ諸国の交渉官から激しい抵抗にあったために、提案は拒絶された(註57)。それにもかかわらず、グアテマラはこの3年間の独占権を付与することを要求された(註58)。

より多くの医薬品にデータ保護が適用(ドミニカ共和国):CAFTAの条文に書かれていないにもかかわらず、米国はドミニカ共和国に対して「承認手続き」の間、ほとんどすべてが古い成分である医薬品に対してでさえデータ保護を認めるように圧力をかけた。ドミニカ共和国は、これに同意した(註59)。

企業のデータ保護がより簡単に可能に(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに対して、大手の有名製薬メーカーが販売承認登録できた際に、いかなる期間の制限もしないようにすること、またそのメーカーがデータ保護の恩恵を受けられるようにすることを求めた(註60)。これは、グアテマラにてより多くの医薬品のデータ保護が独占され、グアテマラ国民が新薬を手にするまで長い期間待たなくてはいけないという結果をもたらしている。

特許の共通承認(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに対し、グアテマラで特許の申請がなされなくても、米国や他国において特許分野での自動的な承認が可能になるよう圧力をかけた。これはCAFTAの条文で求められている内容でなかったにもかかわらずである(註61)。この変更は、知的所有権に関する法律の中で適用可能である重要なセーフガードを取り除くことにつながる。つまり、何を特許として認めるべきか、そしてその基準を高いものに設定するというその国独自の基準をなくすということを意味している(註62)。

特許の二次使用(グアテマラ):「承認手続き」の中で、米国はグアテマラに、古い医薬品における新たな使用と、既存の化学製品に対して、特許を適用させるように圧力をかけた。
それはCAFTAの条文で求められている内容でなかったにもかかわらず、である(註63)。国連「健康に対する権利」特別報告では、この「エバーグリーン戦略」(訳注:特許を有する企業が実質的に該当医薬品に対する特許権の保護期間を延長し市場を独占できる方法)や、医薬品に関するその他の知的所有権の保護のさらなる強化に対して警鐘を鳴らしている(註64)。

燃料の輸送に関する契約(ドミニカ共和国):米国企業シェブロンは、ドミニカ共和国の2つの法律が、米国企業が燃料輸送サービスを提供することを妨げており、条約と不適合な国内規制などに関する不適合措置(NCM)が適用されていないとして、これら法律に異を唱えた(註65)。
ドミニカ共和国は、これら法律が中米自由貿易協定(CAFTA)に違反しているとは考えておらず、この法律は国家安全保障上、必要であると主張した(註66)。同国は、「米国に対して、この問題については柔軟になるよう求めた。特に、ドミニカ共和国はこれまで繰り返し米国から出されてきた、法律改正の要求に応じてきたからだ。それらは、CAFTAに適合させるための国内法の見直しが正式に終わった後でも行なわれてきたものだ」と語ったとされる。ドミニカ共和国政府がこれらの変更に抵抗し続けてきた理由の一つは、「ある問題が決着した直後に、新たな問題が生じるという、CAFTAの実施手続きに困憊した」からだと推測される(註67)。度重なる米国による圧力の下で、ドミニカ共和国は二つの法律を無効化することに合意した。その数日後、USTRは「ドミニカ共和国は、CAFTA発効に向けたすべての必要条件を満たした」と発表した(註68)。

【註】 ※註に関しては近日中に日本語への翻訳を行いウェブサイトに掲載予定である。

1.See eg the North American Free Trade Agreement Sec. 101(b) CONDITIONS FOR ENTRY INTO FORCE OF THE AGREEMENT — The President is authorized to exchange notes with the Government of Canada or Mexico providing for the entry into force, on or after January 1, 1994, of the Agreement for the United States with respect to such country at such time as— (1) the President—
(A) determines that such country has implemented the statutory changes necessary to bring that country into compliance with its obligations under the Agreement and has made provision to implement the Uniform Regulations provided for under article 511 of the Agreement regarding the interpretation, application, and administration of the rules of origin, and (B) transmits a report to the House of Representatives and the Senate setting forth the determination under subparagraph (A) and including, in the case of Mexico, a description of the specific measures taken by that country to— (i) bring its laws into conformity with the requirements of the Schedule of Mexico in Annex 1904.15 of the Agreement, and (ii) otherwise ensure the effective implementation of the binational panel review process under chapter 19 of the Agreement regarding final antidumping and countervailing duty determinations; and (2) the Government of such country exchanges notes with the United States providing for the entry into force of the North American Agreement on Environmental Cooperation and the North American Agreement on Labor Cooperation for that country and the United States. (H.R. 3450 (103rd), signed by the president December 8, 1993.) Similar language was included in the 1988 Canada-United States Free Trade Agreement Implementation Act Sec. 102(b).
2.USTR Increases Pressure on Guatemala to Drop Data Protection law, Inside US Trade, 14 January 2005
3.United States-Korea Free Trade Agreement Implementation Act, Section 101 (b) (H.R. 3080 (112th), signed by the President on 21 October 2011.
4.Third World Network, ‘The TPP and the US Congress – without Fast Track Authority’ 20 November 2013, http://www.twnside.org.sg/title2/FTAs/General/TPP&USCongress-withoutFastTrackAuthority_21%20Nov2013.doc
5.http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta
6.‘Democrats Urge Caution on Implementing FTA After Peru Passes Legislation’, Inside US Trade, 16 January 2009
7.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
8.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
9.‘Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags’, Inside US Trade, 31 March 2006
10.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
11.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
12.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
13.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society over Labor, Investment’, Inside US Trade, 4 July 2008.
14.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society over Labor, Investment’, Inside US Trade, 4 July 2008.
15.Email communications between staff of the Office of the U.S. Trade Representative, the U.S. Embassy in Lima, other U.S. government officials, and officials of Peru’s Trade Ministry (MINCETUR), July 2008 – January 2009.  Obtained via U.S. Freedom of Information Act request, March 2010.
16.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
17.‘NCTO Steps Up Pressure For Legislation Implementing CAFTA Fixes’, Inside US Trade, 26 May 2006; ‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007
18.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007
19.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007
20.‘Industry Highlights CAFTA Implementation Problems in Costa Rica’, DR, Inside US Trade,16 February 2007
21.‘Industry Highlights CAFTA Implementation Problems in Costa Rica’, DR, Inside US Trade,16 February 2007
22.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
23.‘Democrats Urge Caution on Implementing FTA After Peru Passes Legislation’, Inside US Trade, 16 January 2009
24.Letter to USTR Michael Froman from 153 House Democrats, 29 May 2014, http://democrats.edworkforce.house.gov/sites/democrats.edworkforce.house.gov/files/documents/5.29.14-TPPLettertoFroman.pdf
25.USTR, New Opportunities for U.S. Exporters Under the U.S.-Korea Trade Agreement,  http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta
26.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
27.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
28.Panama was required by the US FTA to adopt the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure of 1077, as amended in 1980s; the Patent Cooperation Treaty of 1970s, as amended in 1979; the Trademark Law Treaty of 1994; and the International Convention for the Protection of New Varieties of Plants of 1991. ‘Panama Touts Progress on IPR Treaties Ahead of Meeting with USTR’, Inside US Trade, 20 July 2012
29.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
30.‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006; see also Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags, Inside US Trade, 31 March 2006
31.‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006
32.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
33.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
34.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
35.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
36.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
37.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
38.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
39.‘Panama Moves Ahead With FTA Implementation As October Goal Nears’, Inside US Trade, 7 September 2012
40.‘New Peru FTA Decrees Anger Civil Society Over Labor, Environment’, Inside US Trade, 4 July 2008
41.‘On the Fifth Anniversary of Peru FTA Bagua Massacre of Indigenous Protestors, State Department Cables Published on Wikileaks Reveal U.S. Role’, Amazon Watch/Public Citizen, 9 June 2014 http://www.citizen.org/documents/press-release-peru-bagua-massacre-amazon-watch.pdf
42.‘Costa Rican High Court Rules Against CAFTA Legislation’, Inside US Trade, 12 September 2008; ‘Costa Rica Pushes For Deadline Extension for CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 19 September 2008; ‘Costa Rica Gets Three More Months to Pass CAFTA Implementing Bill, Inside US Trade, 3 October 2008; ‘Costa Rican Court to Review CAFTA Bill Again; Deadline Looms’, Inside US Trade, 24 October 2008
43.‘Costa Rica Approves Final Bill to Implement CAFTA’, Inside US Trade, 14 November 2008
44.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006
45.‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007; ‘Honduras, Nicaragua May Implement CAFTA Next Month as Guatemala Lags’, Inside US Trade, 31 March 2006
46.‘USTR Calls for Further Steps After Guatemala Approves CAFTA Bill’, Inside US Trade, 26 May 2006; US, Guatemala move closer, 30 June 2006
47.‘U.S., Dominican Republic Fail to Agree on New CAFTA Pocketing Concessions’, Inside US Trade, 2 February 2007; ‘U.S. Says Dominican Republic Fuel Resolution Violates CAFTA’, Inside US Trade, 16 February 2007
48.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
49.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
50.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
51.‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
52.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006; ‘Grassley Backs USTR in SPS Fight With CAFTA Countries’, Inside US Trade, 27 January 2006
53.USTR, National Trade Estimates Report, 2007, 193 http://www.ustr.gov/archive/assets/Document_Library/Reports_Publications/2007/2007_NTE_Report/asset_upload_file13_10942.pdf
54.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
55.‘U.S. Demands on SPS Pose New Obstacles to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 20 January 2006
56.For example aspirin was used as a painkiller and then it was found to be useful in thinning the blood to prevent strokes.  The use of aspirin to prevent strokes is a ‘new use’ of an old medicine.
57.U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
58.‘Bush Announces Start of CAFTA Implementation For El Salvador’, Inside US Trade, 3 March 2006
59.‘Dominican Republic Moves Closer to CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 1 December 2006
60.‘Portman Says CAFTA Implementation By Guatemala Months Away’, Inside US Trade, 7 April 2006; ‘USTR Announces Delay in CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 6 January 2006
61.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
62.The WTO’s Agreement On Trade-Related Aspects Of Intellectual Property Rights (TRIPS) allows member countries, including Guatemala, to set what constitutes new, inventive and industrially applicable, http://www.wto.org/english/docs_e/legal_e/27-trips_01_e.htm. This can be set high (as countries such as India have done), which means that fewer patents are granted, so fewer medicines and other technology are available only at the monopoly prices during the patent.
63.‘U.S., Guatemala Fight on CAFTA TRQ Allocations for Rice, Pork Exports’, Inside US Trade, 3 February 2006
64.http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/HRC/11/12
65.‘Dominican Republic Continues to Work For CAFTA Implementation’, Inside US Trade, 12 January 2007; ‘New Fuel Transportation Resolution Possible CAFTA Violation in DR’, Inside US Trade, 26 January 2007
66.‘New Fuel Transportation Resolution Possible CAFTA Violation in DR’, Inside US Trade, 26 January 2007
67.‘U.S. Says Dominican Republic Fuel Resolution Violates CAFTA’, Inside US Trade, 16 February 2007
68.‘Dominican Republic Implements CAFTA After Concession To U.S.’, Inside US Trade, 2 March 2007

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STOP TPP!! 市民アクション
http://stoptppaction.blogspot.jp/

2014年8月20日
翻訳:磯田 宏(九州大学農学研究院)
内田聖子(アジア太平洋資料センター)
東山 寛(北海道大学)

【本件に関する問い合わせ担当】
アジア太平洋資料センター(PARC)内田聖子
TEL. 03-5209-3455 FAX. 03-5209-3453 E-mail: office※parc-jp.org(※を@に)

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2014年7月25日金曜日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」の了解を得て配信します。
Inside U.S. Trade  2001年7月18日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

201年7月17日掲載

情報筋によると先週、米日両政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で11月までに意義ある結果を得るために、交渉を強く押し進めていることを示すシグナルとして、他のすべてのTPP交渉諸国に対して、両国の市場アクセスに関する二国間協議の詳細を、10月に開示し、TPP12カ国間での集中関税交渉の新たな段階を開始するようにすることを約束した。

同情報筋によれば、米日両政府の担当者がこの約束を表明したのは7月3-12日にオタワ非公式協議の場であった。別の情報筋によると、このような展開は、他のTPP交渉国の共通の合意(不満)すなわち、市場アクセスをめぐる米日二国間の協議の交渉結果(成果)はTPP参加国すべてが共有し、またそれは最終的なTPP合意案に近いものであるべきだ、という主張がもたらしたものだ。

もし米国と日本が本当に10月までに市場アクセス分野で合意に達成することが出来れば、その開示は、他の10交渉国にとって、牛肉、豚肉、乳製品などセンシティブな農産物品目で一体、日本政府が米国にどのような譲歩を申し出たのかを理解することができる。

この情報開示は、TPP交渉の新局面を開くことになる。米日両国以外のすべてのTPP参加国―とくに農産物輸出国であるニュージーランド、オーストリアリア、カナダ、チリ、メキシコなど―が今度は、日本が米国に対して申し出た内容と同じ待遇を自分たちにも提供するよう説得しはじめることになる...と複数の情報筋が指摘する。もしこれらの国々が日本から同じ待遇を獲得することができなければ、各国は市場アクセス分野とルール問題について提案を考えていた譲歩のレベルを下げてくることになろうと、ある情報筋はのべた。

米日政府の市場アクセス交渉の詳細を10月に開示しようという計画は、米政府の、11月までに何らかのTPPの実質的成果を出そうとする、米国政府によるより広範な圧力の一環のようである。つまり11月10-11日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をふくめ、TPP交渉国首脳がアジアで予定されている一連の会議に参加する11月までに成果を出そうとする試みである。

その目標はオバマ大統領が先月ニュージーランドのジョン・キー首相との会談の後、公に設定したものである。ただし米通商代表部(USTR)はそのあとすぐに、米政府が特定の交渉期限にむけて動いているという見方は慎重にあつかってもらうように働きかけた。(Inside U.S. Trade, 6月27日)。

この計画のもう一つの問題要素は、米国がおしすすめようとしているアグレッシブな会議スケジュールである。複数の情報筋によると、オタワで、米国は8月に一連のTPPの技術的細目の事務局会議を開催し、続けて9月に首席交渉官の会議、10月に閣僚会議を開くことを提案したと伝えられる。しかし、同じ情報筋によれば、他のTPP諸国はまだこのスケジュールを検討はするも同意していないという。

他方、TPP交渉を観測し続けているグループからは逆に、この新しい提案(米日二国間交渉開示)を考慮に入れれば、11月合意という目標が達成できるかどうか懐疑的であるとの見方が今週だされた。そもそも、まず第一に、米国と日本が現実に10月までに市場アクセスについての最終取り決めに到達できるか疑問だとの複数の声がある。

第二に、もし本当に10月に日米交渉の詳細を参加国に明らかにするというスケジュールだと、この米日両政府間の機密情報(sensitive information)を11月4日の米議会中間選挙に先立って他のTPP当事国に配布するということになる。そのような情報はほぼ確実にリークされ、おそらく米国の農業関係者から大きな反対を引き起こし、そうなると中間選挙においては民主党に政治的ダメージを与える可能性がある。

ある情報筋は、オバマ政権は、政治的反動を恐れて、中間選挙の前にはTPPで譲歩することには特別な注意を払っていると述べた。

米日両政府の二国間交渉内容の発表計画にくわしい複数の情報筋は、米国の民間部門が協議の詳細について騒ぎたてる時間をできるだけ少なくするために、情報が公表されるときとTPP最終合意が決着するときまでの間をできるだけ短時間にしようと、オバマ政権は明確にねらっていると言っている。

米国政府は日本と注意深くバランスをとらなければならないという難題に直面している。米国は一方で、日本の複数のセンシティブな農業部門に対する関税全面撤廃は要求しないという譲歩をすでに行なっている。他方、米国政府は、米国内の生産者が交渉結果を支持してくれるか、或いは、すくなくとも議会に働きかけて協定を葬るような行為をしないように、彼らにとって経済的に意義をもたらす取り決めを作る必要がある。

第3に、たとえ米日政府の二国間交渉の詳細を10月に開示しても、市場アクセス交渉を完結させ、また懸案となっている主要なルール問題を解決するのに必要とされる時間を考慮すれば、他のTPP交渉10カ国が11月までに交渉を終結するのに充分な時間があるかどうか、TPP交渉を監視しているグループからは疑問の声が聞こえる。しかし一方では、TPPの市場アクセス部分についてのみ11月までに取決め合意することならば、可能かもしれないとの見方が複数の情報筋から示されている。

しかしながら、市場アクセス分野だけでも、交渉終結を1か月で決着をはかるのは、いくつかの理由で難しいかもしれない。1つは、ニュージーランドなど他の農業輸出国は米日の交渉結果に異議を呈するかもしれないし、あらかじめ決められた結果の受け入れを強制されることに抵抗するかもしれない。もうひとつの理由は、たとえTPP当事国すべてが日本との間では決着が成立したとしても、今度は、米国やニュージーランドなどいくつかの国は、カナダとの乳製品や鶏肉の市場アクセスについての交渉をしたいといいだすからである。それは容易ではなさそうである。

米国と日本が両国間の市場アクセス交渉の内容を10月に明らかにするとの公約は、オタワ非公式協議のもっとも意義のある結果のように見える。さもなければこの会議は、政治的対立の多い問題を避けて「技術的」ルール問題の解決だけに終始したはずだ。

7月12日オタワで日本の報道陣むけにおこなわれたブリーフィングで、鶴岡公二(つるおか・こうじ)首席交渉官は、TPP交渉国のひとつが技術的問題だと見ていることが別の国にとっては政治的問題かもしれないので、オタワ会議で進展を見るのは容易ではなかったとのべた。鶴岡氏はまた、首席交渉官交渉では労働者の権利、食品衛生・植物検疫(SPS)分野の諸問題では前進したと主張した。

SPSについてTPP首席交渉官たちは、その章が規定する義務をめぐる論点をいかに取り扱うかについて、まだこの問題での合意はできていないものの、意見の相違はせばめたと、先週情報筋が語った(Inside U.S. Trade, 7月11日)。

7月12日オタワで10日間開かれた非公式協議の終りに、カナダ政府が発表した最新情報は、交渉で各国が前進したかどうかについての示唆も、次の会合をいつ開くつもりであるかについての情報もなかった。

その代わりカナダ外務国際貿易省(DFATD)のウエブサイトに掲載された最新情報は、内容が非公式協議で首席交渉官たちが討議した題目およびその間におこなわれた実務グループの会合についての基本的な情報のみであり、そのほとんどはすでに公表されているものであった。

同じウエブサイトの別のページ上でDFATDは、今後のTPP交渉会合はスケジュールができているが日時と場所は確認されなかったことをほのめかした。「現時点で、次の交渉官会合の日取りと場所は確認されなかった。閣僚会合の日程も現時点で予定されていない」とのべた。

「各国首席交渉官は7月4日から12日まで会合をひらき、労働、国有企業、サービス諸分野、投資、すべての分野の市場アクセスなどを討議」したとDFSTDはウエブサイトでのべた。「これらの討議は、残されたルール作りを前進させる目的で開いた少人数の実務レベル、技術担当者グループの会合と並行しておこなわれた」。

「会合をおこなった実務者グループは、知的財産権(IP)が7月6-10日、国有企業(SOEs)が7月9-12日、原産地規則(ROO)/繊維が7月3-9日におこなわれた。カナダは交渉のいくつかの分野をまたがってわが国の利益を前進させるために複数の2国間会合を開いた」とDFATDのウエブサイトはのべた。

DFATDも米通商代表部(USTR)も、交渉の終了にあたって報道発表(press release)を出しておらず、USTRの報道官はオタワで見られた進展についてのコメントを繰り返し求められたが、一切応じなかった。

マシュー・シューエル(Matthew Schewel)記