2014年7月25日金曜日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」の了解を得て配信します。
Inside U.S. Trade  2001年7月18日

米政府は、日本との市場アクセス問題での交渉条件を、10月に他のすべてのTPP交渉参加国に開示することを決定

201年7月17日掲載

情報筋によると先週、米日両政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で11月までに意義ある結果を得るために、交渉を強く押し進めていることを示すシグナルとして、他のすべてのTPP交渉諸国に対して、両国の市場アクセスに関する二国間協議の詳細を、10月に開示し、TPP12カ国間での集中関税交渉の新たな段階を開始するようにすることを約束した。

同情報筋によれば、米日両政府の担当者がこの約束を表明したのは7月3-12日にオタワ非公式協議の場であった。別の情報筋によると、このような展開は、他のTPP交渉国の共通の合意(不満)すなわち、市場アクセスをめぐる米日二国間の協議の交渉結果(成果)はTPP参加国すべてが共有し、またそれは最終的なTPP合意案に近いものであるべきだ、という主張がもたらしたものだ。

もし米国と日本が本当に10月までに市場アクセス分野で合意に達成することが出来れば、その開示は、他の10交渉国にとって、牛肉、豚肉、乳製品などセンシティブな農産物品目で一体、日本政府が米国にどのような譲歩を申し出たのかを理解することができる。

この情報開示は、TPP交渉の新局面を開くことになる。米日両国以外のすべてのTPP参加国―とくに農産物輸出国であるニュージーランド、オーストリアリア、カナダ、チリ、メキシコなど―が今度は、日本が米国に対して申し出た内容と同じ待遇を自分たちにも提供するよう説得しはじめることになる...と複数の情報筋が指摘する。もしこれらの国々が日本から同じ待遇を獲得することができなければ、各国は市場アクセス分野とルール問題について提案を考えていた譲歩のレベルを下げてくることになろうと、ある情報筋はのべた。

米日政府の市場アクセス交渉の詳細を10月に開示しようという計画は、米政府の、11月までに何らかのTPPの実質的成果を出そうとする、米国政府によるより広範な圧力の一環のようである。つまり11月10-11日に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をふくめ、TPP交渉国首脳がアジアで予定されている一連の会議に参加する11月までに成果を出そうとする試みである。

その目標はオバマ大統領が先月ニュージーランドのジョン・キー首相との会談の後、公に設定したものである。ただし米通商代表部(USTR)はそのあとすぐに、米政府が特定の交渉期限にむけて動いているという見方は慎重にあつかってもらうように働きかけた。(Inside U.S. Trade, 6月27日)。

この計画のもう一つの問題要素は、米国がおしすすめようとしているアグレッシブな会議スケジュールである。複数の情報筋によると、オタワで、米国は8月に一連のTPPの技術的細目の事務局会議を開催し、続けて9月に首席交渉官の会議、10月に閣僚会議を開くことを提案したと伝えられる。しかし、同じ情報筋によれば、他のTPP諸国はまだこのスケジュールを検討はするも同意していないという。

他方、TPP交渉を観測し続けているグループからは逆に、この新しい提案(米日二国間交渉開示)を考慮に入れれば、11月合意という目標が達成できるかどうか懐疑的であるとの見方が今週だされた。そもそも、まず第一に、米国と日本が現実に10月までに市場アクセスについての最終取り決めに到達できるか疑問だとの複数の声がある。

第二に、もし本当に10月に日米交渉の詳細を参加国に明らかにするというスケジュールだと、この米日両政府間の機密情報(sensitive information)を11月4日の米議会中間選挙に先立って他のTPP当事国に配布するということになる。そのような情報はほぼ確実にリークされ、おそらく米国の農業関係者から大きな反対を引き起こし、そうなると中間選挙においては民主党に政治的ダメージを与える可能性がある。

ある情報筋は、オバマ政権は、政治的反動を恐れて、中間選挙の前にはTPPで譲歩することには特別な注意を払っていると述べた。

米日両政府の二国間交渉内容の発表計画にくわしい複数の情報筋は、米国の民間部門が協議の詳細について騒ぎたてる時間をできるだけ少なくするために、情報が公表されるときとTPP最終合意が決着するときまでの間をできるだけ短時間にしようと、オバマ政権は明確にねらっていると言っている。

米国政府は日本と注意深くバランスをとらなければならないという難題に直面している。米国は一方で、日本の複数のセンシティブな農業部門に対する関税全面撤廃は要求しないという譲歩をすでに行なっている。他方、米国政府は、米国内の生産者が交渉結果を支持してくれるか、或いは、すくなくとも議会に働きかけて協定を葬るような行為をしないように、彼らにとって経済的に意義をもたらす取り決めを作る必要がある。

第3に、たとえ米日政府の二国間交渉の詳細を10月に開示しても、市場アクセス交渉を完結させ、また懸案となっている主要なルール問題を解決するのに必要とされる時間を考慮すれば、他のTPP交渉10カ国が11月までに交渉を終結するのに充分な時間があるかどうか、TPP交渉を監視しているグループからは疑問の声が聞こえる。しかし一方では、TPPの市場アクセス部分についてのみ11月までに取決め合意することならば、可能かもしれないとの見方が複数の情報筋から示されている。

しかしながら、市場アクセス分野だけでも、交渉終結を1か月で決着をはかるのは、いくつかの理由で難しいかもしれない。1つは、ニュージーランドなど他の農業輸出国は米日の交渉結果に異議を呈するかもしれないし、あらかじめ決められた結果の受け入れを強制されることに抵抗するかもしれない。もうひとつの理由は、たとえTPP当事国すべてが日本との間では決着が成立したとしても、今度は、米国やニュージーランドなどいくつかの国は、カナダとの乳製品や鶏肉の市場アクセスについての交渉をしたいといいだすからである。それは容易ではなさそうである。

米国と日本が両国間の市場アクセス交渉の内容を10月に明らかにするとの公約は、オタワ非公式協議のもっとも意義のある結果のように見える。さもなければこの会議は、政治的対立の多い問題を避けて「技術的」ルール問題の解決だけに終始したはずだ。

7月12日オタワで日本の報道陣むけにおこなわれたブリーフィングで、鶴岡公二(つるおか・こうじ)首席交渉官は、TPP交渉国のひとつが技術的問題だと見ていることが別の国にとっては政治的問題かもしれないので、オタワ会議で進展を見るのは容易ではなかったとのべた。鶴岡氏はまた、首席交渉官交渉では労働者の権利、食品衛生・植物検疫(SPS)分野の諸問題では前進したと主張した。

SPSについてTPP首席交渉官たちは、その章が規定する義務をめぐる論点をいかに取り扱うかについて、まだこの問題での合意はできていないものの、意見の相違はせばめたと、先週情報筋が語った(Inside U.S. Trade, 7月11日)。

7月12日オタワで10日間開かれた非公式協議の終りに、カナダ政府が発表した最新情報は、交渉で各国が前進したかどうかについての示唆も、次の会合をいつ開くつもりであるかについての情報もなかった。

その代わりカナダ外務国際貿易省(DFATD)のウエブサイトに掲載された最新情報は、内容が非公式協議で首席交渉官たちが討議した題目およびその間におこなわれた実務グループの会合についての基本的な情報のみであり、そのほとんどはすでに公表されているものであった。

同じウエブサイトの別のページ上でDFATDは、今後のTPP交渉会合はスケジュールができているが日時と場所は確認されなかったことをほのめかした。「現時点で、次の交渉官会合の日取りと場所は確認されなかった。閣僚会合の日程も現時点で予定されていない」とのべた。

「各国首席交渉官は7月4日から12日まで会合をひらき、労働、国有企業、サービス諸分野、投資、すべての分野の市場アクセスなどを討議」したとDFSTDはウエブサイトでのべた。「これらの討議は、残されたルール作りを前進させる目的で開いた少人数の実務レベル、技術担当者グループの会合と並行しておこなわれた」。

「会合をおこなった実務者グループは、知的財産権(IP)が7月6-10日、国有企業(SOEs)が7月9-12日、原産地規則(ROO)/繊維が7月3-9日におこなわれた。カナダは交渉のいくつかの分野をまたがってわが国の利益を前進させるために複数の2国間会合を開いた」とDFATDのウエブサイトはのべた。

DFATDも米通商代表部(USTR)も、交渉の終了にあたって報道発表(press release)を出しておらず、USTRの報道官はオタワで見られた進展についてのコメントを繰り返し求められたが、一切応じなかった。

マシュー・シューエル(Matthew Schewel)記

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録 (米議会下院前広場 2014年7月9日)

翻訳をされた「TPP阻止国民会議」のご厚意と了解をいただいて配信しています。

環太平洋経済連携協定(TPP)に関する記者会見の発言記録
米議会下院前広場 2014年7月9日 午前10時15分


【概要】 オタワでTPP交渉に出席している米代表が最終決着をはかろうとしているときも、米議会の古参議員や新しい市民社会の各分野の代表者もTPP反対に加わるようになり、米国でTPP反対の高まりを浮き彫りにした。発言した議員のなかには、議会で、協定への多数の支持を得るためにはどのような条件が必要かをのべた100人余の下院議員が署名した一連の重要なTPP書簡のスポンサーが含まれていた

-    TPPにおける強制力のある通貨規制条項は、下院議員230人、上院議員60人の要求であった。TPPはこの条件がなければ、即却下されてしまうが、いまのところこの問題は交渉でとりあげられていない。 
-    労働者の権利:下院議員153人が、ベトナム、マレーシア、メキシコ、ブルネイなど労働者の権利にかかわる重大な問題を抱えている国々にについて、労働者および労働組合の条件が改善されない限り、また改善されるまでは、いかなるTPPの商業的利益も効力を発生させることに反対することを明らかにした。
-    ブルネイの人権/シャリア(イスラム刑法)にかんする書簡:民主党議員120人がブルネイとのTPP交渉を中止させるよう求めた。
-    環境問題での書簡―下院議員130人がTPPを支持する条件として制裁実施可能な環境ルールを求めた。
-    バイアメリカンの原則に基づく調達に制限をもうけてはならない
-    入手しやすい薬品へのアクセスについて、また、医薬品の特許期間延長と薬品処方集の利用制限についての米通商代表部の要求に反対する複数の書簡
-    米国憲法のもとでは議会は貿易協定を承認または拒否する権限をもっているが、現在にいたるまで米交渉代表はTPPについてのこのような要求を無視してきた。TPP交渉の方向にたいする不快感が議会で広がっていることからオバマ大統領が最近、11月10-11日のAPEC首脳会議を協定の新しい期限とすると発表したことは驚きであった。

発言者は以下の通り:ローザ・デローロ下院議員(民主党・コネチカット州選出)、ジョージ・ミラー下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ルイーズ・スローター下院議員(民主党・ニューヨーク州)、ロレッタ・サンチェス下院議員(民主党・カリフォルニア州)、ピーター・デファツィオ下院議員(民主党・オレゴン州)、マーク・ポカン下院議員(民主党・ウィスコンシン州)、ドナ・エドワーズ下院議員・メリーランド州)、ドゥオン・チャン=ブロガー・市民社会活動家・VOICE(Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ)、ゲイリン・バロー=フェミニストマジョリティ、ジェラミ・デイビス=PAW=Pride at Work(仕事に誇りを).

【発言記録】
(記録のコピーをお求めの方はダン・ホックスミス dhocksmith※citizen.orgまで ←※を@に)

ローザ・デローロ下院議員(コネチカット下院第3選挙区)

おはようございます。郵便局同様、雨・みぞれでも雪でも、私たちはやってきます。集まった皆さん、ありがとうございます。今朝ここには同僚議員が来ています。下院のジョージ・ミラーさん、ロレッタ・サンチェスさん、リック・ノランさん、マーク・ポカンさんです。このほかにもこれから来る議員もいます。さらに、私たちとともにVOICEのドゥオン・チャンさん、「仕事に誇りを」(Pride at Work)のジェラミ・デイビスさんも来ています。「フェミニスト・マジョリティ」のエリー・スミールさんも加わるはずです。

TPP協定にかかわる諸問題―雇用から労働者の諸権利、食品の安全にいたるまでの諸問題について皆さんの声をあげていただきありがとうございます。ちょうどいま、NAFTA(北米自由貿易協定)型の協定に取り組んでいる米国を含む12カ国の貿易担当者が、なんらかの合意にこぎつけようと交渉を続けています。これらの交渉者、あるいは米政権も、議会や一般国民の間でおきているTPPの一括承認促進(fast-tracking)への強い反対を考慮に入れている様子はありません。この協定を結ぶことが労働者や家族にどう影響するのかについて、私たちが多くの懸念をとりあげてきても、それらに耳を傾ける様子もありません。

米政府および米通商代表あてにこの2年間に送られてきた書簡のサンプリングを紹介させていただきます。

私の仲間でありますドナ・エドワーズさんとニック・ラホールさんは他の67人の方々とともに大統領にたいして、バイ・アメリカン(Buy American=米国製品優先購入)法にしたがった調達の諸政策をこの協定のなかで規制しないようにと迫りました。これらの政策はもしTPPが調印されれば無くなってしまいます。

マイク・ミショードさん[下院議員]は、雇用を犠牲にし、赤字を増大させる通貨操作を抑えることを検討するよう大統領に求め、230人の下院議員とともに書簡を送る先頭に立ちました。しかし私たちの知る限り、これは討議にさえ付されていません。

ジョージ・ミラー下院議員は米通商代表にたいして労働者の権利を保護するよう求める書簡を153人のメンバー(下院議員)とともに送る先頭にたちました。

ヤン・シャコウスキ―下院議員[女性]は、USTR(米通商代表部)にたいして、開発途上諸国でジェネリック医薬品(後発医薬品)へのアクセスができるいおおうにすることを求めました。

アール・ブルメンアウア議員、ピーター・デファツィオ議員、サンディ・レビン議員をはじめとする122人の下院議員は通商代表部にたいし、天然資源を保護し気候変動に取り組めるようにするための強制力ある環境条項をつらぬくよう求めました。

下院議員119人がブルネイにたいし、いかなる取り決めにも合意する前に、非難されるべき人権侵害に取り組むことを要求するよう、ケリー(国務)長官に求めました。

下院議員151人が、私とジョージ・ミラー下院議員、ルイーズ・スローター下院議員と一緒に貿易促進権限(Fast Track authority)を大統領に付与することに反対を表明しました。

交渉をまとめる前にこの法案で提起された、多くの食品の安全についての懸念に取り組むよう求める超党派の書簡をウォルター・ジョーンズ下院議員、メアリ・ランドリュ上院議員とともに先頭に立って提出する機会をえました。

この書簡についてちょっとのべさせていただきます。このほかの書簡については他の方々が述べられます。ひとつの例ですが、食品医薬品局(FDA)の試験で、ベトナムからの輸入海産食品が以上に高いレベルの残留抗生物質(antibiotic residue )、微生物汚染(microbial contaminations)などの食品安全問題におかされていることが確認されています。2012年にベトナムからの海産食品が、汚染、腐食、残留薬品、未承認食品添加物、サルモネラ菌などの懸念を理由として206回上陸(entry)拒否されました。

提案される取り決めはこれらの食品の安全性の問題や、私が言及しなかったものもふくめてTPPによって提起された、その他、知財産から金融規制にいたるまですべての問題に対処しなければなりません。

悲しい事実としてこの協定は規制を後退させてしまう、環境基準や、私たちが利用する医薬品、私たちが食べる食品、子どもたちに与える玩具の安全性を守る法律を後退させてしまうのです。

また、連邦議会や州議会議員が将来的に協定のダメージを緩和できないようにするため無数の分野で法的拘束力をもつ政策をつくりだすことになります。

米国民の3分の2近くがファスト・トラック(貿易促進権限)を付与することに反対しているのも当然ですし、下院議員の(民主、共和)両党の178人が公然と反対を表明しています。

米通商代表部と政権は、協定および貿易交渉において決定的に重要な意味を持つ監督の役割をになう議会を、この交渉のあいだじゅう真っ暗闇におくのではなく、わたしたち(議員)とアメリカ国民がこの提案された協定についてもっている多くの懸念に取り組むべきです。

以上をもって、ジョージ・ミラー下院議員を紹介したいと思います。

ジョージ・ミラー下院議員(カリフォルニア大11選挙区)

ローザ、ありがとう。きょう私たちと一緒に集まってくれた同僚議員のみなさん、そしてチャンさん、ジェラミ・デイビスさん、ありがとう。

TPP交渉諸国の貿易交渉代表は、私たちがのべたとおり、きょうオタワに集まってTPPの取り決めを現実のものにしようとしています。しかし現実にはTPPはアメリカあるいは他のTPP諸国の勤労家族にとってよい取り決めになるには何光年もかかります。ここに立っている私たちはみな、TPPはアメリカの労働者と家族を保護し、他の国々の労働者が基本権を侵害されないようなものでなければならないということで一致しています。

貿易担当高官がオタワに集まりますが、そのような取り決めには近づいてはいません。明らかに、近づいていません。アメリカ国民の間では近づいていないのです。米合衆国議会においても近づいていません。いかなるTPP協定も、賃金から医療にいたるまで、アメリカの家族に影響を及ぼします。

私たちはきょう、アメリカの勤労者家族を脅かすようないかなる協定、つまり無謀なウォール街の取引を可能にする協定、環境基準を引き下げてしまい私たちが利用する医薬品や、私たちが食べる食品、子どもたちに与えるおもちゃの安全性をまもっている法律を弱めてしまいかねないいかなる取り決めにも反対して共に立ち上がっています。

ベトナム、マレーシア、ブルネイ、メキシコはひどい労働者の権利侵害が行われている国で、それはわたしたち集団の意識に衝撃を与えています。児童労働、肉体的暴力、強制労働、超長時間労働など、これらの侵害はTPP協定をすすめるまえになくさねばなりません。

私たちはNAFTA(北米自由貿易協定)やコロンビアとの自由貿易協定など、自由貿易取り決から厳しい教訓を学びました。労働者保護措置は、それがあとからの付け足しとして扱われると、また付帯協定の一部とされると機能しません。私たちはこの協定で、教訓を学びなおさなければならないというようなことになるべきではありません。

大企業がTPPの取り決めを推進しているのは、アメリカの労働者や家族を犠牲にしてでも自分たちの利益になることを知っているからです。一方、労働者や人権擁護者、環境保護団体、米連邦議会議員は蚊帳の外におかれています。

昨年、150人以上の連邦議会議員が透明性を高めるよう要求し、貿易促進権限(ファスト・トラック)の活用や貿易交渉における議会の権限を無視するようなTPPの承認手続きをとることに明確に反対を表明しました。

今年これまでに153人の連邦議会議員がフロマン大使[米通商代表]にたいし、TPPで強力な強制力のある労働者保護措置を確実にするという、よりよい仕事をするよう要請しました。

連邦議会議員たちは声を大にして明確に発言しています。フロマン大使よく聞きなさい。

この取り決めで意味のある改善がはかられるまで、また議会が検討する機会を得るまでは、最終合意はありません。

私たちはいまのような協定で、私たちの(アメリカの)家族の権利、外国の労働者の権利が傷つけられること、私たちの国家が傷付けられることを深く懸念しています。だから私たちは反対し続けるのです。

オタワでの成功を願っていますが、かれら[交渉代表]はこの国の国民と議会を念頭に置かなければならないのです。ありがとうございます。次にマーク・ポカン議員を紹介します。

マーク・ポカン下院議員(ウィスコンシン第2選挙区)

ジョージ、ありがとうございます。同僚議員の皆さんと一緒にここに立ってTPPについてお話しできることをうれしく思っています。労働基準から環境問題、食品の安全性、通貨操作、さらには人権にいたるまで多くの理由でTPPに反対しています。

ブルネイはTPP交渉に参加している国のひとつですが、最近シャリア法を採択しました。これは同性愛や不倫その他女性の権利にかかわる問題などにたいする罰として石打ちを求めるという厳しい法律です。

人権を侵害し権利の平等を制限し続けている国々にたいして私たちは通商上の特権を与えるべきではありません。米国は世界の指導者として世界中の人権状況を改善しようとその影響力を行使するという伝統を持っていますが、TPPにおいて私たち[米国]はそれと真逆のことをやっています。

ですから119人の連邦議会議員は、きょうここに参加しているすべての議員を含め、「人権キャンペーン」(Human Rights Campaign)、「仕事に誇りを」(Pride at Work)などLGBT(性的少数者,lesbian, gay, bisexual, and transgender)諸組織を含む議会外団体とともに、米通商代表とケリー(国務)長官にたいし、あのひどい法律が廃棄されない限りブルネイをTPP交渉に参加させないようにと要求しました。

ここでこの要請に参加したもう一つの団体、「仕事に誇りを」(Pride at Work)を紹介したいと思います。きょう私たちとともにここにきている事務局長(executive director)のジェレミ・デービスさんがこの問題について彼の視点からお話しします。

「仕事に誇りを」(Pride at Work)事務局長ジェレミ・デービス

(ポカン)議員、ありがとう。まず始めに、ポカン下院議員とともに、デローロ下院議員にたいしこの問題でリーダーシップを取られていることに感謝したいと思います。おふたりはこの恐ろしい貿易取り決め反対の取り組みで、非常に大きな存在としてやってきました。ポカン議員がのべたとおり、私の名前はジェラミ・デービスです。「仕事に誇りを」(Pride at Work)の事務局長(executive director)です。私たちは労働組合のLGBTのメンバーからなる全米組織です。

6月には「仕事に誇りを」(Pride at Work)は全米ゲイ・レスビアン・タスクフォース(National Gay and Lesbian Taskforce)、人権キャンペーン (Human Rights Campaign)、全米性転換者同権センター(National Center for Transgender Equality)も加わってオバマ大統領あての書簡を書きました。その書簡で私たちはオバマ大統領に可能なあらゆる手段をつうじて世界中のLGBTの人々の基本的人権を守るという約束をまもるよう要請しました。

私たちはTPP交渉は、これらの法律にたいする責任をブルネイに負わせるための手段であると考えます。(ポカン)議員が述べたようにこれらの法律は、LGBTの人々を石打ちによって死刑にするとの規定を含んでおり、人権と基本的な品性を傷つけるものであります。私たちは人権を乱用するものは米国の最恵国待遇(preferential treatment)を受けるべきでないと考えます。

2週間前、私はワシントンDCのブルネイ大使館の外側での抗議に参加しました。50人近くの人々が集まってこれらの新しい法律に抗議し、UNITE/HERE[労働組合]が私たちに加わってロサンゼルスはじめ世界中にあるブルネイ保有のホテルで行われている労働組合つぶしに抗議しました。LGBTの人々、有色の人々、アメリカのすばらしい多様性全体がこの抗議行動にみられました。しかしひとつ私が感動したことがありました。それは、ラテン系の女性が子ども2人を連れて抗議に参加したのですが、それは問題が彼女とその家族にとっても非常に重要な問題であると考えるからでした。

わが国はLGBTの権利の平等に向けて大きな歩みをしてきており、もし私たちが、ブルネイの新法に特有のひどい虐待をみのがし、同国に特権的な貿易上の地位を与えたとすれば甚大な一歩後退となります。ブルネイはTPPをめぐる大きな問題の一片にすぎませんが、国民の基本的人権の乱用をおこなっている国ぐにを含む取り決めは意味のないものと言うべきです。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
さてベトナム系コーカス共同議長のロレッタ・サンチェス下院議員に、次の発言者を招待していただきます。

ロレッタ・サンチェス下院議員(カリフォルニア第46選挙区)

同僚議員はじめお集まりのすべてのみなさん、ありがとうございます。デロ―ロ議員、ミラー議員、ありがとうございます。私は長い間ベトナムにおける人権問題に関して活動してまいりました。

私はTPPについて、本気で反対しなければいけないと思っています。人権とりわけ労働者の権利にかんして交渉がうまくいっていないからです。

ベトナムとの貿易取り決めをするときはいつも、ベトナム側がいろいろな約束をしますが、実際の人権状況はなんら改善していません。

これまで20年だけ見ても、ベトナムではこんにちの労働条件を理由に5,000件を超える労働者のストライキが発生しました。人々は1日12時間から15時間の労働を余儀なくされています。彼らの賃金は月70ドル以下です。未払いのケースも多くあります。彼らは健康保険がなく、職場では無権利です。

じっさい、米労働省はベトナムを、強制労働もしくは児童契約労働によって服飾が生産されていると見られる理由がある4カ国のうちのひとつに挙げています。

ですから、もし私たちが自由、正義、人権を真に支持するのであれば、私たちは現在交渉されているようなこの貿易協定に反対すべきです。私がここで強調したのは、私たちは、とくにベトナムにおけるこれら労働者の権利を無視するわけにはいかないということであります。

今日、ドゥオン・チャン(Doan Trang)さんが一緒に参加してくださっています。彼女はブロガーで市民社会活動家、在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)のメンバーです。彼女はきょうここにVOICEを代表して参加しており、ベトナムにおける労働条件の現状についてお話しします。

ドゥオン・チャン(Doan Trang)―VOICE

皆さんおはようございます。私はチャン(Trang)と申します。私はベトナム出身のジャーナリストでブロガーです。ベトナムにおける労働者の権利について、またなぜTPPが成功の見込みがないかについてお話しさせていただくことに感謝します。

みなさん、6月26日、29歳の労働者の権利擁護活動家が刑務所から釈放されました。これは朗報です。しかしながら、これで労働者の権利、土地の権利、表現の自由の権利という3つの権利がベトナムでもっとも広範にもっともひどく侵害されているという事実が変わるわけではありません。

ベトナムでは毎日、何百件もの労働者のストライキがあり、そのうちの95%は違法ストとみなされています。なぜ違法ストなのか。それは現在の労働法および労働組合法は自主労組の存在を認めておらず、そうした法律のもとでストライキは適法ではないからです。

ベトナムのすべての労働組合が、ベトナム労働総同盟(VGCL)を除いて非合法であるというのが実態なのです。VGCLは政権党、(ベトナム)共産党傘下にあります。CGCLの役員はすべて党の役員で、規約で党の利益に奉仕することと規定しています。私たちは、VGCLがストライキを指導した人と逮捕し罰するよう警察に求めていることを示す内部文書を入手しています。

労働法はまた、労働者が適法的にストライキを行えるようにするまえには仲裁、調停がおこなわれなければならないと規定しています。ですから、そのような厳しい要件のもとではベトナムにおけるストライキの95%が違法とみなされているというのは理解できることだということがわかるでしょう。また、ベトナムのストライキの95%が低賃金、低所得と関連しているのです。ベトナムは2008年以来、不況で推移してきました。労働者は農民で、最悪の犠牲者にかぞえられます。労働者はより多くの収入を得るために残業をしますが不払いになっています。社会保険も加入させてもらえません。多くの場合、とくに民間部門では、保険、医療プログラムを受けられないでいます。

また、労働条件は低下させられ集団食中毒も広がってきました。わずか1週間あまり前、ホーチミン市のある会社で200人以上の従業員が食中毒にかかりました。それより前、5月15日には、会社が出した飲料水で500人余りが中毒にかかりました。これは明るみになったものだけです。似たようなケースで知られないままになっているものが沢山あり、いまでもこうした集団食中毒にたいしてだれも責任をとわれていません。

さらに強制労働という労働者の権利侵害があります。私たちのところには刑務所で服役者に服飾や家具、カシューナッツなどを製造させて搾取している問題についての元政治囚からの報告があります。
みなさん、私たちは、ベトナムが労働者の権利侵害をやめさせたいといっていると理解しています。しかし、そうしていません。かれらは税金を引き上げるのではなくただ罰金を払うだけにしたいのです。私たちはまた、人権擁護活動家、労働者の権利擁護活動家を釈放することによって彼らは世界に向けて労働者の権利要求を尊重しているふりをしようとしているのです。しかし沢山の似たようなケースがあります。9年間の服役中の2人の仲間ように。

ベトナムにおける人権侵害についてお話ししましたが、それでもトンネルの先に光が見えます。最後に、それはフェイスブックなどインターネットを利用した活動であることを指摘しておきたいと思います・

ベトナムで労働者の権利擁護のために積極的に活動しているNGOや認証を受けていないNGOが数十あります。私たちがそれを知っているのは在外ベトナム人の良心向上イニシアチブ(VOICE=Vietnamese Overseas Initiative for Conscience Empowerment)がこれらの団体と連絡を取ってきているからです。

VOICEを代表して私が申し上げたいことは、労働者の権利が強制的に実行できないようないかなる貿易協定も受け入れてはなりません。

いかなる貿易協定も、労働者の権利の実施を前提としてください。

わが(ベトナム)国民は経済的繁栄を望んでいますが、それは自由と相まってすすめなければなりません。どうか、私たちとともに歩んでください。ありがとうございました。

デロ―ロ下院議員:
つぎに、フェミニスト・マジョリティのゲイリン・バローさんが、書簡についてお話しします。

ゲイリン・バロー―フェミニスト・マジョリティ

みなさん、お早うございます。私はゲイリン・バローと申します。私はフェミニスト・マジョリティの政策部長 (policy director)をやっており、スルタンが支配するブルネイで、布告によるタリバン流の刑を強行したことに反対しています。この法律は、全面的に実施されると石打ちによる死刑を求めるものです。繰り返します。ゲイ、レスビアンの人々や不倫で有罪になった人々にたいしては石打ちの死刑、妊娠中絶をした人にたいしては後悔むち打ちが科されます。

この法律は人権侵害であります。私たちは議員の皆さんが今日ここで、この重要な時に立ちあがってくださっていることに感謝したいと思います。

TPPはまさに、成功の見込みがないものです。人権は利潤を得たり貿易をおこなったりするために後景に追いやられるべきものではありません。

フェミニスト・マジョリティは、いくつかの人権・男女同権をかかげる組織と一緒にオバマ政権にむかって、ブルネイのスルタンが刑法を廃止するまではTPP交渉を停止するよう求めてきました。

米国はブルネイといつものとおりビジネスをおこなうことによってこれらの種類の法律を許すべきではありません。私たちはこの新しい刑法を変えるようスルタンに圧力をかけるためにあらゆる入手可能な、また適切な政策的道具を利用すること追求しなければなりません。

ブルネイがこの新刑法を採択するなかでTPP交渉を継続することは受け入れがたいことです。この刑法は米国の原理、目標、価値観に真っ向から対立するものです。

文明社会においては、ゲイを殺す、女性にむち打ち刑を加える刑法は許されません。わが国の外交政策や通商政策は女性の権利、人権、基本的尊厳を守るという私たちの決意を反映しなければなりません。

デロ―ロ下院議員:
ドナ・エドワーズ下院議員はアメリカの製造業をまもることについて。

ドナ・エドワーズ下院議員(メリーランド第4選挙区)

どうもありがとう。

沢山の発言を聞きました。そのメッセージはほんとうに非常に簡潔です。読めばわかります。[スローガンを掲げる反TPP抗議参加者に向かって]ミドルクラスをダメにしてはいけない!アメリカの雇用と製造業をまもれ!人を優先させよ!人権尊重を!私たちの環境を守れ!これらは簡潔なメッセージです。

20年ほどの間、アメリカは公正な貿易ではない自由貿易のでたらめを信じ込まされてきました。いまこそそれを止めなければなりません。

私は同僚議員とともにTPP交渉をめぐる政策、手続きを深く懸念しているということを申し上げたいと思います。

1933年にバイアメリカン法(米国製品優先購入法)が制定されたとき、その条項は、米政府は税金を米国の雇用を支援し、刷新(innovation)を促進し、米国の製造業部門を強化するために使うことを保証するというものでした。過去の自由貿易協定は締約国にたいし、国内の政府調達契約の入札に外国の企業が同等に参加できるようにすることをもとめていました、

現在進行中の交渉はバイアメリカン政策を大幅に制限する条項が提案されていて懸念されており、その結果アメリカの雇用、労働者、製造業者に大きな影響を与えています。

2012年5月、私は下院の68人の同僚議員とともに書簡をつくり大統領にたいしTPP協定ではバイアメリカン政策をまもり貿易協定によって米国民がお金を米国製品やサービスに使う権利を制限しないよう保証することを要請しました。

残念ながら私たちは私たちの製造業部門を支援し良質の高賃金雇用を創出するためには、引き続き政府調達を利用することが必要です。

私はとくに、私たちが聞いているベトナムにおける多くの中国企業のように、TPP諸国につくられる企業がバイアメリカン政策の義務免除を得てしまうこととなり、依然として人権蹂躙をおこなうことを憂慮しています。

これでは、私たちが税金で納めたドルが他の国々の製造業部門をつよめこそすれ、米国の製造業は強化しないことに投資されてしまいます。

さらに、米国の政府調達市場はTPPの調達市場を全部あわせてより10倍以上大きいのです。繰り返します。米国の調達市場はTPPの調達市場全部あわせたより10倍以上も大きいのです。

それが意味するのは、米連邦政府調達5560億ドルへの米国企業の優先的アクセスを、わずか530億ドルの他の国々の新たな調達市場と引き換えに売り払うということです。それは受け入れがたいものであり、米国の製造業を完全に危険に陥れるものです。それはこのいわゆる協定のもとでは1ドルの利益にたいして10ドル以上を失うことになります。一部の米国企業のTPP諸国における契約入札へのアクセスは、調達のバイアメリカン優先を除外するという本当にひどい相殺です。

各年、私のメリーランド州の納税者は連邦政府が110億ドルという巨額の買い物をするのに融資するのです。それはメリーランド州納税者1人あたり2,364ドルを米政府に送って調達にあてていることになります。なぜそれが米国の製造業にとっての損失になるのでしょうか。TPPは実際には悪循環を断ち、より多くの外国の企業が、メリーランド住民が納めた税金をめぐって競争できるようにしますが、それは米国じゅうの住民も同じことです。

議会が雇用創出や米国製造業の基盤再活性化を重視しなければならないときに、貿易協定が、私たちが米ドルを米国製品やサービスを購入する権利を制限することでその基盤を崩すようなことがあってはなりません。

そこで、私は「メイドインアメリカ」製品、米合衆国で製造された製品にyesと言いましょう、アメリカの雇用にyes、良い高賃金の雇用にyesと言いましょう、というよびかけをもって発言を終えたいと思います。それはすなわちTPPのバイアメリカン条項禁止にたいして「絶対ノー」と言わなければならないということなのです。
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デロ―ロ下院議員:
オレゴン州選出のピーター・デファチオ下院議員は、環境問題とTPP

デロ―ロ下院議員 (オレゴン州第4選挙区)

ローザさん、来ていただきありがとう。フロマン大使(通商代表)からのステートメントがありますが、非常に強力なものでした。「われわれはTPPのなかの、断固とした、充分に実行可能な環境分野を主張し、それなしにはわれわれは協定に同意しない」。私は大賛成です。

残念ながら、リークされた交渉分野、また、もちろんここにある「TPP:テキストを公開せよ」からわかるように、私たちは、この協定の状況がどうなっているのか知りません。

選挙でえらばれえた代表(議員)は、もし望むならば、通商代表部にこの文書を議員事務所に持ってこさせることができます。スタッフは同席できず、ノートも取れない、しかし文書をぱらぱらとめくってみることはできます。

500人の企業代表者はリアルタイムで、安全が確保されたインターネットをアクセスできるのに、私たち(議員)はそれができないのです。

これはたいへん異常です。彼らは何を隠そうとしているのでしょうか。

リークされた環境分野は常軌を逸した内容です。それはジョージ・ブッシュ(政権)時代の超党派による、これらの貿易協定のなかの商業上の基準と同じように執行可能な基準ができるような将来の貿易取り決めにかんする5月10日の合意から後退させるものです。

私たちにはTPPにかんしてここでまたとない機会があります。私たちは基本的に、将来、規制を受けない漁、毎年漁獲量の20%ぐらいと推定される海洋資源の枯渇を止め始めるためのロードマップ(行程表)をつくることができます。それは持続可能なものではなく、法律、条約の外で行われているものです。

私たちは中国その他の象牙の取引で巨大な市場になった一連の条約締約国に対処することができます。そして今、私たちは、劇的な措置が採られないかぎり野生のゾウがいなくなる可能性に注目しています。

私たちは違法伐採、森林に注意を払っています。それは国内、われわれ自身の森林の生産業に影響を与えるからであり、沢山の収穫をするところだからであり、その問題をTPPでも取り扱ってしかるべきだからです。ですから私たちには、考えられないぐらい強力で充分に執行可能な環境分野の問題にTPPのなかでとり組んでしかるべき一連の関心事があります。

私たちは、労働問題や環境問題で拘束力のない付属協定がつくられたNAFTAの轍を踏むことはできないのです。NAFTAでは後に是正されることになっていましたが、じっさいには行われませんでした。

デロ―ロ下院議員:
ニューヨーク州選出のルイーズ・スロータ―下院議員は、貿易投資全体について

Rep. Louise Slaughter (NY-25) ルイーズ・スロータ―下院議員(ニューヨーク州第25選挙区)

みなさんはファスト・トラックの意味をご存知だと思います。私たちがファスト・トラックを取り上げたとき私は議事運営委員会の議長でしたからよく知っています。煮詰めて言えば、議会はそれにかかわることはできなかったのです。交渉は秘密でおこなわれています。

私たちが聞いている噂では、経済の一定の部分がこれらの交渉をおこなって自助努力をしているということです。私たちは選挙区を代表して発言することはできません。

ファスト・トラックのもとで私たちが得られるのは、政権が交渉してきた完成法案だけで、それに賛成票あるいは反対票を投じるのです。これはとんでもないことで、私たちは、それはもはやできません。

私たち(米国)が世界最大の製造業を誇っていた70年代だったらよかったのですが、いまはもはやそのような状況ではありません。

私たちが失った雇用は驚くべきものです。NAFTAの20周年を迎えたばかりですが、祝えたものではありませんでした。NAFTAはかつて私たちが見たこともない最悪の交渉でした。私の地区で私たちはニューヨーク州西部で25万の雇用ができると約束されました。NAFTAが調印された当時、イーストマン・コダック社には62,000人ほどの従業員がおりました。いまでは約4,000人です。経営破たんもしました。私たちは約束された雇用を得られませんでした。まさに雇用破壊であり、今年、米韓自由貿易協定の交渉で私たちはふたたびそれを見ました。

あの、韓国との協定は本当にやっかいなものでした。おそらく私が一番懸念した協定であり、大統領とも話し合いました。韓国側はアメリカの自動車を売+らなくなります。韓国には自動車販売会社が26ありますが、米国車も販売しています。ですから韓国との貿易不均衡はすでに大きくなっていましたが、新しい自由貿易協定後、不均衡はさらに広がりました。貿易赤字は47%増えて206億ドルという史上最高になりました。

忘れてならないことは、もしどこかの国が韓国を攻撃したら、条約によってわれわれは韓国のために戦う義務を負っている。でも、韓国は米国製品を買うのでしょうか?断じてNoです。

真実はといえば、私が議会に選出されて以来、政府によってつくられた貿易協定でアメリカの製造業者あるいはアメリカの従業員に利益をもたらし、これを続けるのを私は見たことがありません。

この貿易協定によって私たちが受けるダメージは非常に深いので、食品の安全の面だけでも、私たちがのぞむ、また私たちが大切にしているその他のすべてで、私たちが承認した正常な空気、清浄な水に関する法律が危うくなるのです。私たちはそういうことを望んでいません。私たちが法律を守り、国の法制度を無視して貿易協定に国が調印するのを私たちは望みません。狂気の沙汰です。

私たちは、どんなことが起きるか分かっています。もっとたくさんの雇用が失われるのです。貿易赤字がもっと増え、賃金が下がり雇用保障がよわまるのです。

どれだけ多くのこういう協定をつくったら私たちはじっさいにそのような教訓を学ぶことができるのでしょうか?この橋を渡るにはあまりにも長い時間がかかっています。私たちはこの協定を支持するわけにはいきません。

私たちは教訓をまなぶところに近付きつつあると思います。今朝ここに集まったみなさんにお会いして嬉しくおもうとともに、この問題で一所懸命活動してきたわたしの同僚議員に感謝します。

ピーターが言った通りです。私の地区に残った企業のひとつは、ベトナムとの貿易協定を懸念していました。私は、私たちのためにどんなことがくわだてられているのかを知りたいと求めたのですが、私のスタッフを伴うことができず―私には歳入委員会の人が何人かいたのですが。2人の女性が私のところにやってきてスプレッドシートを見せてくれたのですが、中身のないものでした。

国民によって選挙された代表(議員)に対しておこなわれていることがこういうことです。私たちひとりひとりが代表している800,000人は。これらの貿易協定にとりくむなかで基本的に発言権がないのです。このようなことをやめさせなければなりません。すすめ方においてこれをやめさせなければなりません。

 国際貿易の問題は」おわっていません。わたしたちは逆戻りしようと思っているのではありません。しかし米国にとって公正なものにするときです。実行可能な貿易協定を作成することによってそれができます。

もし私たちが強制力を貿易協定にもりこみ、もしルールが目に見えない障壁その他のトリックによって蹂躙され、われわれ(アメリカ)の製品を買わないようにするなら協定を停止できるようになります。そうなれば、ほとんどの友人や同僚議員が満足して見ることができる唯一の貿易協定になります。

デロ―ロ下院議員 
ルイーズさん、ありがとう。今朝ここに集まっている議員や各代表者のみなさんは、沢山の人々を代表しています。この手紙の束(TPPにかんする議会の手紙の分厚い束をかかげて)はこの2年間のものですが、きわめて大きな困難をかかえファスト・トラックに反対し、明るみにだされたいろいろな問題を理由にこの条約そのものに反対している議会の(民主、共和)両党の議員のみなさんです。それが食品の安全、環境保護、金融規制、通貨操作、人権 ―全般―のいずれについてであっても、みなさん協定に反対しているのです。私たちは、この問題での私たちの声が引き続き届くようにします。

充分に感謝を申し上げられません、議員だけではありません。今日ここにあつまったのは諸組織のみなさんです。ドゥオンさん、ジェラミさん、ゲイリンさんそれにエリー・スミ―ルさん、この取り組みに参加してくださってありがとうございます。

そしてすべてのみなさんに、これらのしるしは意味のない論評ではありません。その一つは議会メンバーの気持ちを代弁していますがもっと重要なことは、この国の国民の気持ちを表しているということです。ありがとう。では質問をどうぞ。

【質疑応答】

ジム・バーガー(ワシントン・トレード・デイリーWashington Trade Daily)

 私が理解しているところでは、ひとつだけ議員のみなさんがこの協定についてわかっていることは、それが大詰めに来ているということです。議会で反対票を数えてみましたか?

デロ―ロ下院議員
ファスト・トラックの部分については、調べています。反対が圧倒的で、成功の見込みがないといいことです。事実、議員は―ここにおられる同僚のみなさんにもお願いするのですが―私たち議員は、責任ある行動をしようとしています。だれも文書を見たことがありません。ですから人々は、文書を見てみよう、と言いたいのです。それは非常に理にかなっていると思います。文書をだせ!私たちはみな、通商代表部の前などで座り込みをするなど同じ経験をしてきました。それでも文書は秘密扱いになっています。文書をみるために座り込みをする人々が必要です。しかし、率直にいって、これらの問題に取り組むうえで議員たちは信頼されていません。ですが、わたしたちは、それぞれが代表する人々の名において日々取り組みます。

デファチオ下院議員:
私たち(議員)が信頼されていないという問題ではないのです。問題は私たちに知られたくない、なぜなら情報を選挙区に伝えてしまう、そうすると選挙区の人々は呆れて反対する、からなのです。反対のうねりが増大します。あなたの質問にもっと端的にお答えすれば、これは超党派の反対表明なのです。ここでは超党派的なものはそんなに見られません。特にファスト・トラックに反対している共和党の議員はかなりの数いますが、彼らが理解しているこの協定にも反対しています。ですから私はいま、最終段階にあるとは思っていません。彼らはファスト・トラックなしに最終段階にもっていくことができるとは思いません。なぜなら、協定のなかには議会が取り除きたいと考えるようなとんでもない条項があるからです。また、アメリカが主張しているように、ニュージーランドとオーストラリアがそれぞれの医療制度を医薬品産業のために放棄するというとんでもない条項があるのです。他の国々も別の問題で譲歩をせまられています。白昼にこの問題がまるごと消滅します。

(質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員:
7月4日(独立記念日)の休日からもどってきましたが、通常ひとびとがそれぞれの選挙区の議員と連絡をとりあっているときうねりがおきるのですが、ファスト・トラックへの反対、この協定そのものにはもっと多くの人々が反対しています。ですから現場での取り組みが必須です。多くの団体がこのことやどんな損害がでるかなどを語っています。そしてそうした団体は通常、それについて考えていたりあるいは決めかねていたりしてこれから態度を決めようとしている議員からの回答を得られるのです。デファチオさんが指摘した、非常によいコメントです。ファスト・トラックへの反対はかなりあります。TPPそのものにたいする反対も同様だと思います。

アイラ・テノウィッツ(Mlex)
もしファスト・トラックがなければ、あなたがたはいろいろな修正を提案しますか?その場合のプロセスはどんなものになるでしょう?

デロ―ロ下院議員
私はTPPに修正を加えることができる機会があることを期待しています。デファチオ議員が指摘したように、私たちはそこまで到達しないかもしれないと思います。最終文書がどんなふうになるかについてなんの保証もないのであれば、この努力をしている他の国々が
この取り決めに決着をつける意思があるかどうか、私にはわかりません。でも確かに、私たちは、下院でも上院でもおなじだと思いますが、提案される法案を修正できる機会を望みます。

 (質問聴取不能)

デロ―ロ下院議員
政権はTPPにかんしてさまざまな期限を口にしてきました。私はこれからも政権はそうするだろうと思います。彼らは議会がダックになればそれをひとつの機会と見るでしょう。ですから、私たちはいまやっていること、ファスト・トラックに欲求はないという革新をもち続けます。私は貿易協定に全面的に反対しなければならないと確信します。

みなさん、ここに立っておられる議員のみなさん、どうもありがとうございました。私たちは大きな弾みを得ましたので続けていきます。私たちはNAFTAや韓国との協定、その他の貿易協定で起きたのと同じことでミドルクラスや勤労世帯の生活、食品の安全、われわれの環境保護規制、金融規制を狂わせ、人々の能力をあやうくし、かれらの製薬業界をわが国の製薬業界に屈伏させるといったことを許さないことをめざしています。それは間違った方向であり、それをワ達したちは阻止するのです。ありがとうございます。

以上

2014年7月10日木曜日

オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

日本でも報道されましたが、訪米中のニュージーランドのキー首相との会談後、オバマ大統領は記者団に対し、従来と少し異なる内容で、「11月のアジアで首脳会談でのTPPについて一定の合意を期待している」ことを語りました。先に各国から早期妥結の意欲が様々に表明されている一方、年明けまでは無理だろうとの見方が報道されています。

またTPP交渉のけん引役でもあるニュージーランドや豪州、シンガポールの首脳からは、改めて日本の市場開放を求め、年内妥結を促す発言が続いています。そしてオバマ発言の前日19日にはTPPとTPAに関して大きな影響力を持つ米国下院・歳入委員会の委員長デイビッド・キャンプ議員(共和党)から、TPP交渉の妥結を促しつつ、その前提としてのTPA法案の早期成立とTPPへの米国議会の強い要求(国有企業、ISDS、知財、為替操作規制等々)を求め、かつ市場アクセスでの日本・カナダへの厳しい姿勢が表明されています。

一方TPPに批判的なチリの新大統領が6月30日から7月第一週に米国・シンガポールを訪問し、首脳会談が行われます。8月いっぱいの米国議会閉会、中間選挙を前に、TPPも首脳レベルでのせめぎあいが動きつつあるようです。今までとは少し異なる展開に中止する必要があるかも知れません。

以下は6月20日のオバマ大統領の発言を軸にした報道記事の翻訳です。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

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オバマ大統領、TPPで11月に成果を期待(ロイタ-2014年6月20日)

 オバマ大統領は6月20日、「11月には、TPP関係国が国民、利害関係者に対して何らかの合意を明らかに出来ることを期待している」と語った。
  大統領は、11月15~16日のG20首脳会合出席を含むアジア訪問時に、関係各国の首脳と議論をするための何らかの文書を用意することが目標だと語った。同じ時期にAPEC首脳会合も中国で開催される。

 米国は11月4日に中間選挙を予定しており、多くの貿易専門家は、雇用への影響を懸念する労働組合を支持基盤に持つ民主党への選挙での影響を考えると、今年中の妥結は絶望的と見ていた。
  オバマ大統領は、TPP参加国でありワシントンを訪問中のニュージーランドのキー首相と今年中の妥結の時間軸について議論したと語った。ちなみにTPP参加12ヶ国の経済規模は世界のGDPの5分の2、貿易の3分の1を占めている。
  大統領はキー首相との会談後、2人が再度11月に会うまでに、議会とも協議がなされ、国民への閲覧という手順を踏んだ何らかの文書を用意し、協議を前進させて妥結するための説得力ある議論が出来るようにしたい、と述べた。

 「もちろん、それまでになすべきことは山積している」

 オバマ政権は、米国のアジアへのシフトという戦略の一環として昨年中のTPP妥結を期待していたが、日本の農産物関税の問題で行き詰った。日本政府が米、小麦、酪農製品、砂糖類、そして牛・豚肉製品を守ろうとする一方、米国政府は市場競争力を強化している日本車から米国の自動車業界を守ろうとしている。
 しかし、4月の日米首脳会談後、交渉に新たな勢いが出てきたと交渉筋は伝えている。メキシコの関係者はロイターに、複数の国が遅くとも9月の妥結に向けて交渉を押しすすめている、と語った。ただ他の国々はそれほど楽観的ではない。
 6月の第2週に米国を訪問した豪州の貿易担当相ロブ氏は6月18日、「今年中の妥結はあり得ないだろう。しかし来年前半の妥結は期待出来るかも知れない」と述べたという。
 「(市場アクセスについて)妥協できないのなら日本はTPP交渉から除外されるべき」と語ったニュージーランドのキー首相は、高水準で包括的なTPPを達成できると確信している、と語った。
「どのような交渉でも、参加各国間でガップリ組んだ腕相撲状態になる時期はあるものだし、一瞬、夜明け前のもっとも暗い時間のように感じることもあるものだ」

 TPP交渉には、米・日・豪・NZ以外に、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、そしてベトナムが参加している。(翻訳:近藤康男/監修:廣内かおり)

2014年7月6日日曜日

アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)

オバマ大統領が「年内合意のための文書」について記者会見で述べた前日の6月19日、議会の重鎮であり、またTPA法案の共同提出者である下院歳入委員会の委員長であるディビッド・キャンプ議員(共和党)が“グロ-バル・ビジネス対話”に所見を寄せ、TPA、TPP、更にはTTIP環大西洋貿易投資パ-トナ-シップ協定、TISA(WTO有志国・地域によるサービス貿易協定)に関する考え方を展開しています。

6月から7月冒頭に掛けて、豪州、ニュージ-ランド、チリの首脳が米国を訪問し、TPPについて発言をしています。

カナダのオタワで始まった首席交渉官会合の行方、更にはその後の展開を読みとる上でポイントとなる記事の一つと思われます。(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)

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アメリカ連邦議会下院歳入委員会デイヴ・キャンプ委員長が6月 19日「グローバル・ビジネス対話」に寄せた所見(文書)


おはようございます。サラさん、ご紹介ありがとうございます。モリス審査員及び「グローバル・ビジネス対話」に対しても、アメリカ通商課題の将来について話をさせていただく機会をいただいたことに感謝申し上げます。「グローバル・ビジネス対話」は有益な計画と分析を通して貿易政策を大いに前進させてきました。私は本日参加させていただきうれしく思っています。

私が下院の歳入委員会委員長になって以来、私たちは自由貿易協定の実施に大成功を収めてきました。米国内における実績のある効果的な雇用の創出―これはここ米国内で生産された物とサービスが世界中に輸出されうることを保証するものです。私たちはすでにコロンビア、韓国そしてパナマとの協定から相当の利益を享受しています。このことは超党派の強い支持を得ています。なぜなら議会とアメリカ国民が最優先と考えるものをこれらの協定が反映しているからです。

アメリカが通商協定の交渉に際して我々の潜在力を全面的に開花させることを保証するための鍵は、貿易促進権限であり、それは過去2年間、通商問題における私の最高の優先事項であり続けました。我々は現在、3つの大きな通商交渉の最中にあります。すなわち TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ協定)、および TISA(WTOの有志国・地域によるサービス貿易協定)の交渉です。しかしもし貿易促進権限がなければ,我々はこれらの協定がアメリカにもたらしうる大きな景気の押し上げを実現できないことになるでしょう。

理由は簡単です。貿易促進権限がなければ,わが国の交渉官達は手を縛られたままとなるからです。貿易促進権限なしでも確かに交渉を前進させることはできますが、どんな政権もそれなしにアメリカ人にとって完全な実現しうる最善の協定を得ることはできません。貿易促進権限型の法律制定が繰り返された80年の歴史は、貿易促進権限なしに主要な通商協定を妥結することができたことは一度たりともなかったことを物語っています。連邦議員としての 20年間に、私はNAFTAを含む、それ以降の全ての通商協定に賛成してきました。私は民主党政権と共和党政権にまたがってUSTRと密接に協力し働いてきました。これらの経験から、実現しうる最善の協定は貿易促進権限なしには達成できないことは明らかなのです。

フランクリン・ルーズベルト以来全ての大統領は、貿易相手国に対して、貿易促進権限があるがゆえに連邦議会が自分のパートナーであると述べ、そしてそれら貿易相手国に、アメリカ政府は真剣であり、形ばかりのポーズを取ったり気弱なオファーをするのは止める時が来たと明示することができました。しかしオバマ大統領は、残念ながらまだそうすることができていません。それは当然のこととして、オバマ大統領が最善の協定を妥結できないことを意味します。要するに、我々にとっての優先諸事項を反映し、わが国の製造業、サービス業、農業者、労働者の利益を創出するような最善の通商協定に至る唯一の道は、貿易促進権限だということです。

これは何を意味するのでしょうか?TPPのような主要な通商諸協定を妥結する前に、貿易促進権限が審議されなければならないということです。さもなければ、議会がそのような協定を支持しないであろうし、支持するべきではないという、非常に現実的なリスクを生み出すことになります。それには2つの理由があります。

第1に、どうして我々がアメリカ国民にとって実現しうる最善の協定以外のものを承諾しようとするでしょうか?

第2に、議会は貿易促進権限を欠いたまま通商協定を妥結することは、議会の優先権と( ※貿易促進権限法に書き込まれる)協定交渉の諸目的をないがしろにし、さらに議会の憲法上の役割を無視するものだと見なすだろうからです。

そこで私は問わなければなりません。オバマ大統領はなぜ彼の自由になるあらゆる手段を講じて交渉を妥結するよう試みないのか?
大統領は、なぜ協定交渉に有用な手段を持たないまま妥結しようとするのでしょう?オバマ政権は、最善の協定ではないような協定を本気で結ぼうとしているのでしょうか?私はそうでないことを望みます。そして議会も同様です。我々はアメリカ国民にとって最善のものを求めます。アメリカ国民はまさにそれにふさわしい国民です。

以下のことをはっきりさせておきたいと思います。もしオバマ政権が私の TPPへの支持を望むなら、政権は TPP妥結前に議会で貿易促進権限法を成立させることを確実にすべきです。もし私に貿易促進権限を支持して欲しいなら,その(法成立)前に TPPを妥結させてはなりません。私の見解に疑問を持たれる方には、私は議会下院歳入委員の仲間や、共和党の指導部や、下院議員の過半数が同じ考えであることをはっきり示すことができます。

では貿易促進権限法を成立させるために何をしなければならないか?今年1月に私がハッチ上院議員と当時の上院議員ボーカス氏とともに提案した貿易促進権限法案は史上最強のものです。それは我が国の輸出に対する障壁に対処するための、超党派の合意を反映した交渉諸目的を設定しています。それは政権が、議会およびアメリカ国民と十分かつ効果的に(合意に至る)協議をすることを確保しています。しかしオバマ大統領は未だに沈黙を守っています。我々はオバマ大統領が積極的かつ個人的にも献身的に取り組まない限り、同法案を議会で成立させるつもりはありません。さらに法案それ自体が答えを出していない疑問など、何一つ提示されていません。前下院議長のペロシ氏の意見はごもっともですが、私は人々に法案に何が書いてあるかを是非知って欲しいのです。そうすれば我々はそれを成立させることができます。―その逆ではありません。

しかし成立のためには、共和党、民主党、ホワイトハウス、および財界が取り組まなければなりません。財界の多くの人々が、オバマ政権があまりに受け身なので、(これら通商協定から)熱意を失いつつあることを認めています。しかし大統領が集中力を失っているからといって、財界がそのレーザー光線の焦点を捨て去るべきだということにはなりません。そんなことをしたら、我々はグローバル競争で生き残ることができなくなるだけです。大統領も財界も、議会民主党に対して( ※貿易促進権限法に)しっかり取り組むよう圧力をかけるための鍵となります。

私は上院財政委員会ワイデン委員長(民主党)と協力して、超党派による法案に早急に取りかかることができるよう前進する道を見いだすことを望んでいます。民主党の中には(貿易権限法審議を)中間選挙後にしたいと望む議員もいますが、我々は党の主要な支持者が困惑するかも知れないというだけの理由で、アメリカ経済を留め置くことはできません。我々が後れを取っている間に他の諸国が機会をうまく利用するのを、わきに座って見ているわけにはいかないのです。もし仮に貿易権限法案が議会の「死に体会期」( ※事実上 8月 1日~ 9月7日の夏休み終了後,再開された議会は,中間選挙投票前は何も大きなことは決められない)までは審議されないとしても、中間選挙終了後直ちに動くことができるように今の時点で支持陣営を固めておかなければなりません。

政権が、議会と密接に協力し、情報への完全なアクセスを議会に供与するとともに交渉の対等なパートナーとして扱えば、議会に通商協定を通過させ、実施させることに成功することは出来ます。我々(議員)の役割はパートナーとして、政策と戦略の観点から議会とアメリカ国民が支持するような分析と指針を提供することです。そのためには、何が今起こっているかを我々は知る必要があります。そうでないと、我々は憲法上の役割を果たすことはできません。平たく言えば、政権は通商政策に関して議会から受けた憲法上の代理権限の下で交渉に当たるのであって、その逆はありえないのです。

私は今日、通商促進権限についてだけ話に来たわけではなく、まずはこれを取り上げなければならないということです。そうしなければその他の保留中の通商諸問題に移れないのです。その重要な問題の一つがTPPです。TPPは大きく前進を遂げていますが、“高水準”の内容に合致しない諸国との協定を妥結してはなりません。

とりわけ私は、日本が自国の農産物と自動車市場へのわが国の参入を阻害している厳しい規制の全面的撤廃をかたくなに拒否していることに、深い懸念を抱いています。日本はあまりにも長く閉鎖的でしたが、ついにそれらの市場への本格的な参入を実現する時がきました。我々は、日本が農産物関税を完全に撤廃する約束をしない限り、日本を含めた TPPを前に進めることはできません。関税撤廃からの例外は議会の反対を意味し、非農業分野も含めた協定の広範な領域に渡る強い期待をつぶすことになります。

加えて、わが国の自動車メーカーが直面している日本の複雑で執拗な障壁に対処するための日本との自動車協議における合意が、議会の支持を得るには必須です。その合意は我々にとってのモデルである米韓 FTAにおける自動車条項を基にして構築されるでしょう。また市場参入で問題があるのは日本だけではありません。カナダは―正当性もなく―乳製品と家禽類に対する険しい障壁の維持を主張しています。

さらに問題を広げれば、国有企業、 ISDS(投資家対国家の紛争解決)、越境データフロー、知的財産権保護、および為替操作規制のような決定的に重要な諸問題に対処するための規則に関する諸条項についても、まだ相当になすべき作業が残っています。我々はTPP協定への議会の支持を得るためには、高水準の内容を達成しなければなりません。好ましくない協定は議会を通過しないし、させるべきでもありません。

(以下, TTIPについては省略し、TISAについて続ける)

TISA(WTO加盟有志国・地域により昨年来進められている新サービス貿易協定)はアメリカ国内の雇用創出と経済成長に計り知れない潜在力を持っています。全世界に対するサービス提供におけるわが国の主導的役割を考えれば、TISAはわが国の巨大なサービス産業に、さらにはそれらサービスが支えている製造業や農業に、膨大な機会を約束します。他の諸協定と同様、その水準を満たす意思と能力を持つことを示すことの出来る国々だけが、協定に参加すべきです。中国は未だそれが出来ていません。私は我々の水準が満たされない限り中国の加入を支持することはないでしょう。

これら3つの協定交渉に加えて、他の分野においても、米国の物品・サービスに対してグローバル市場を開放すべく、我々は着実な前進を続けています。

(以下, WTOの ITA情報技術協定・環境商品貿易交渉・貿易円滑化境地・紛争処理での勝訴,アメリカの特恵関税制度・アフリカ成長機会法 AGOAについては省略)

(翻訳:磯田宏・戸田光子/監修:近藤康男)

2014年6月23日月曜日

シドニー市議会とウィロビー市議会、TPPに批判的な決議を可決

 この春以降豪州での大衆的なTPP反対の運動が活発になっています。3月には各地で大規模な街頭行動が取り組まれ、私たちの「もう止めよう!TPP交渉 3.30大行動」への連帯のメッセ-ジも送られてきました。5月に入り閣僚会合を前に対政府要請、賛同署名提出などが大規模に取り組まれました。

 以下の翻訳は、AFTINET豪州公正な貿易と投資のためのネットワ-クが現在取り組んでいる地方議会での決議です。普遍的な要求として「情報公開要求」「ISDS反対」を掲げると共に、地域に焦点を宛てて、地域政策に影響を与える条項を協定に含まないよう貿易担当大臣に確約を迫っている点です。

 日本での取り組みの参考にしてよいのではないでしょうか?(翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)


         ☆ ☆ ☆

シドニー市議会とウィロビー市議会、TPPに批判的な決議を可決2014年6月7日(土)

オーストラリアのNGO、AFTINETでは、オーストラリア国内の数百におよぶ全地方議会にTPPに関する書簡を送付したが、現在、可能なかぎり議員達への追跡調査をおこなっている。

以下に、シドニー地域でもっとも重要な2つの市議会、シドニー市議会とウィロビー市議会で可決された決議を示す。

AFTINETメンバーは、他の自治体の議員からも同様の決議に向けて努力中であると聞いているが、まだ結果が出たという報告はない。

この市議会で決議されたことは、

a. 以下に留意する。
i. オーストラリアは現在、米国及び環太平洋10か国とのTPP交渉の最終段階にある。
ii. これらの交渉は内密に行われ、国民やオーストラリア議会は、この協定が署名されるまで交渉の内容を知らないことになる。
iii. TPP最終合意は、地方自治体に影響を与え得るが、実感するのは署名後のことになるだろう。

b. 貿易担当相(※)に対し、内閣による合意に先立ち、国民の意見聴取と議会による審議のために、合意文書の草稿を公開するよう求める。
(※訳注:オーストラリアの現在の体制では、「貿易・投資大臣(Minister for Trade and Investment)」 http://www.australia.or.jp/en/news/cabinet.php)

c. 貿易担当相に対し、以下の条項がこの合意に含まれないことを確実にするよう要求する。
i. 外国人投資家に、市・州・国レベルの政策・法律・規制をめぐる損害賠償請求のための政府や地方議会を相手取った告訴の権限を与える条項
(※訳注:上記のiiはiの誤記と思われる。)
ii.著作権料の対象となる期間の延長、及び/又は、インターネットからの一時的なダウンロード行為に対する制約や罰則を強化する条項
iii.地域の雇用を促進し、地域経済・産業の発展を支援し、適切な雇用の実践と取組を奨励する地方自治体の政策を制約する条項
iv.環境への適切な実践と取組を奨励する地方自治体の政策を制約する条項
v.地方自治体による公共サービスの提供とその規定を制約すること、又は公共サービスの営利化を要求する条項
vi.地域の供給・納入業者を優先する地方自治体の調達方針を妨げる条項
(翻訳:西本 裕美/監修:廣内かおり)

2014年6月22日日曜日

岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) 元通商代表 クレイトン・ヤイター


  米国の政治家の間に配信されているCONGRESS BLOGに寄稿された元通商代表クレイトン・ヤイタ-氏の、TPPの行方に対する見立てを翻訳チ-ムの小幡さんが訳して下さいました。現状、更には通商交渉というものを大きな枠組みでかつ現実的に捉えようとする元通商代表らしい見方のように思われます。彼の見立てのようにTPP交渉の現実が進むのかは誰も断定は出来ませんが、このところ流布される多くの情報が、各国とも着地点を見出すことを意識し始めていること、しかし最大の不確定要素は米国内政治であり、TPPが着地するには未だ時間が掛る可能性を否定できないこと、を示唆しているように思います。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり) 

             ☆ ☆ ☆

岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
元通商代表 クレイトン・ヤイター(2014年6月6日)

TPP交渉が締結に近づくにつれ、疲労といら立ちがつのり始めている。別に驚くことではない。TPPはこれまでにない野心的な貿易交渉の1つなのだ。うまくいけば、世界の貿易と経済成長を著しく増大させることになる。

オバマ大統領が数週間前に日本を訪問したときの優先議題はTPPだった。2ヵ国の首脳が貿易交渉で意見をぶつけ合うというだけでもいささか怖く、当然、他の10ヵ国の首脳は戦々恐々となった。日本とアメリカという2大国家の合意による恩恵が自分たちにまで及ぶとは限らないのだ。しかし通常、貿易交渉は通商大臣らの管轄であり、国家の首脳たちの関与は限られている。結果として、マイケル・フロマン米通商代表が追及されることになった。日本で一体何があったのか、つまり「フロマン代表がやると有言した通り、進展に近づいたのか」と。

他の10ヵ国の通商大臣たちも、米国の手の内を知りたがっている。特に、米国が日本に対し、時間をかけてもあらゆる関税をゼロにするよう要求し続けるのか、米国が軟化したという日本の報道は本当なのか、という点についてだ。米国の主要な利害関係グループも、とりわけ農産物輸出業者は、同様の質問をしている。

不確実な点がある場合は、最悪のシナリオを想定するのが常だ。しかしその結果、他の参加国は、日米間の自動車及び農産物に関する「ミニ交渉」の結果を待ちつつ、自分たちの切り札を握ったまま、という手詰まり状態になる。同時に利害関係者も焦りや不満をつのらせる。例えば、米国の複数の農業団体は、日本が農産物の段階的関税撤廃に難色を示すのであればTPPから脱退させるのみだ、と主張している。また、攻めと守りの両方で思惑があるカナダは、攻めの戦略(牛肉、酪農製品、小麦、ナタネ)を保留のまま、守りの分野(特に家禽類の肉や酪農製品)では、日本を盾に取っている。

誰もが神経を尖らせているいまこそ、TPPについて何が既に達成され、交渉は(混乱状態は除いて)どこまで来ているのか、進展する可能性のある分野とそのペースはどのようなものか、大局的見地に立って概観する時期だろう。

TPPは「21世紀型自由貿易協定」(より正確には、特恵貿易協定)として策定されたものだが、そうした描写に値するものだ。TPPで取り扱う分野は、かつて行われたいかなる主要な貿易交渉をも凌駕しており、既に環境規制、労働者の権利、知的財産、国有企業、貿易円滑化などの分野でかなり進展している。交渉担当官たちは、「全てが合意されるまで何も合意されない」というルールの下で任務を遂行しており、これまでの成果を口にすることはできない。しかし、それぞれの分野は大きく進展している。

典型的な貿易交渉の議題(関税及び非関税障壁)において、参加国はまず低くぶら下がっている(もぎ取りやすい)果実を摘み取る。しかし、そうした戦略をとると、ほとんど進展がなかった分野も進展があるように見えるというリスクが伴う。その結果、TPPでは交渉担当官たちが、2013年内までの交渉妥結の可能性を示唆することに疑問を持たなかったようだが、これは非現実的だった。結局、この暫定期限を守れないことに対する不満がつのり、米国は非難の的になっている。

幸いにも、我々は再び軌道に乗った。オバマ・安倍会談からのメッセージによると、TPPは、最難関に立ち向かう心構えができている。「大詰め」が近づいており、少なくとも日米両国には、もっとも難易度の高い課題についても、見込みのある「着陸地点」が見えてきた。これは励みになる。今こそ、他の8か国もそれぞれ日米両国との交渉を加速させる必要がある。

2014年内の締結はありそうにない。まだやるべきことは山ほどあるのだから。最も困難な問題を進展させるには、時間がかかる。交渉担当官たちは、もし可能なら今年後半に、さもなければ来年早々にも、交渉を終結させられるよう、今まで以上に懸命に働く必要がある。他の参加国もそれぞれの政治日程があるが、米国の我々にとっては、大統領選挙の年(注:2016年)に、賛否の分かれる貿易問題に取り組むことは望ましい戦略ではない。したがって、この歴史的協定の決着は早ければ早いほど良い。

TPPはあのドーハ・ラウンドではない。何しろドーハ・ラウンドは10年以上の交渉を経てひどく落胆する結果になった。TPPは遙かに推進力があり、参加全10ヵ国にとって上首尾の結果をもたらすのに十二分の勢いがある。一方、米国は2つの障害に留意しておかなければならない。ひとつは貿易促進権限、即ち「ファスト・トラック」権限の必要性だ。米国の交渉チームの交渉力はずば抜けているが、米国ほど権限を持たない交渉担当官もいない。連邦議会はこの状況を、今年が無理なら来年早々にも是正する必要がある。

2つ目の懸案事項は、米国もしくは相手国がTPP交渉を人質に取り、非現実的な要求をするかもしれないということだ。TPPの下で欲しいものを全て手に入れられるわけではなく、それは他の国も同様である。我々は日本側に、あらゆる関税を徐々にゼロにするよう圧力をかけ続けるべきではあるが、そのようなことは起こりそうにもない。(我々自身も実際のところ、自分たちの関税全てを徐々にゼロにするなど気が進まない。)関税ゼロの可能性がない中で、気に入らないからさっさと止めるという議論も、日本を最終合意から外せと要求する議論も、全くばかげている。自ら損失を招くなど、何の特にもならないのだ。最近、遙かに良い取り組み方法がニュージーランドの通商大臣、ティム・グローサー氏によって提案された。グローサー氏は、交渉担当官たちは段階的関税撤廃に相当する貿易自由化の結果を出すべきだと主張した。つまり、関税がゼロにはならない生産物に対して、関税割当制の自由化を利用することを意味している。フロマン特命大使(USTR代表)も最近、最終的包括案では、有意義でより良い、今後も続く、実際的に価値のある市場アクセスを、早い時期に達成すべきであると提案し、本質的に同じ結論に達した。私が通商代表だったころも、レーガン大統領が、3/4のパンでも全く無いよりは常にましだ、と言及し同じことを主張していた。

向こう数か月間に、少しばかりの実利主義と的確な判断があれば、TPPも現実と成り得る。そうすれば、我々米国人もTPP協定の主な受益者の仲間に入ることになろう。

クレイトン・ヤイター氏はホーガン・ロヴェルズ法律事務所の上級顧問で、国際貿易と投資、及び食料と農業問題に携わっている。1985年~1988年までレーガン大統領政権下で米通商代表を務め、89年~93年までジョージ・ブッシュ大統領政権下で米国農務長官を務めた。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり)     

2014年5月17日土曜日

ブルク・キリック(米国パブリック・シチズン):知的財産権に関する米国の提案と日本の現行法規定との比較分析

今年の2月に、パブリックシチズンの知財担当のブルク・キリックさんがシンガポールでのTPP閣僚会合の後日本に立ち寄って、知的財産権に関するプレゼンテーションをしてくれました。

その時に話のベースになる分析資料を後日送ってくれました。かなり密度が濃く専門的な内容であるため、翻訳チームの池上さん、清水さん、田所さんも苦労して翻訳してくれました。

TPPにおける米国の新たな提案を日本の特許法との関連で分析・批判をしています。特許の対象、特許の実質的な期間に関連する条項、実用性との関連での特許の定義に関わる内容、特許侵害における補償額などについて、米国提案が知的財産を、公益とのバランスを損ない、医療費を増加させ、特許を過度に保護するものと指摘しています。(翻訳:池上明、清水亮子、田所剛/監修:廣内かおり)

環太平洋経済連携協定(TPP)における医療およびイノベーション政策に対する批判:知的財産権に関する米国の提案と日本の現行法規定との比較分析Dr.BurcuKılıç, MiKyoeng Kim & Peter Maybarduk Global Access to Medicines Program/January 2014

※1 この分析では、北海道大学の田村善之氏からもコメント及び助言をいただいている。

※2 推奨サイト:KiliçB.,Kim.M&Maybarduk P.「TPPにおける知的財産権に関するアメリカの提案と日本の現行法規定との比較分析」(パブリックシチズン、2013年7月  www.citizen.org/access)


※3 PDFでのダウンロードは以下をクリック
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/140517_publiccitizen.pdf (翻訳版)
https://dl.dropboxusercontent.com/u/1521351/140517publiccitizeneng.pdf(英語原文)



項目
知的財産権に関するTPPへの
米国の提案・草案3
日本の特許法
1959年、法律第121号)

分析
診断、治療,および手術の方法に関する特許要件

条文QQ.E.1.3 1段落(節)に従い、締約国は以下の発明を特許可能とすべきである:

b)特定の装置、製造物または組成物の使用方法を含む人間または動物を処置するための診断、治療および手術方法

*日本はこの条項に反対
291項「産業上利用することができる発明をした者は、その発明につき特許を受けることができる・・・」

日本の特許法は291項に例外対象をあげていない。しかし、特許および実用新案に関する審査基準には、産業上の発明に該当しないものとして次があげられている:

2.1 産業上非適用になる発明のリスト
・・・
人間への手術、治療または診断の方法は「医療活動」と呼ばれ、通常医師によって行われる

人間への手術、治療処置および診断の方法は、産業上とするにふさわしくないという理由で、特許の保護対象から除外されている。


医療処置に関する特許は、医薬品特許のエバーグリーニング(既存薬の組成や形を変えた医薬品を新薬として特許申請し、独占期間を延長すること)を助長し、患者を処置するために使う方法について外科医などの医療提供者が責任を負う場合でてきて、医療費の上昇を招くことになる。米国の提案では、原則的に、外科医が素手で手術をしない限り、あらゆる手術方法が特許可能だ。米国の法律では特定の医療提供者に特許侵害の免責を与えているが、TPPでの米国提案は、そうした保護条項の規定が欠落しており、TPP交渉国にとってさらに厳しい結果を招く危険性がある。

TRIPS協定(貿易関連の知的所有権に関する協定)は、締約国が診断、治療および手術の方法を特許の対象から除外することを認めている(条文27.3)。日本は、いくつかの例外を除き、概ね医療方法を特許取得の対象から除外している。

米国が提案している条文QQ.E.1.1は、新規用途や方法に特許を与えている。条文QQ.E.1.3は、人体(または動物の体)の治療方法で特許を取得できるとしている。条文QQ.E.10で規定されている実用性試験は範囲が広く、特定の、実体的な、信頼できる実用性があれば実用性を認められるとしている。以上から、これら3つの条文は、結局、医療行為に特許を与えている。

TRIPS協定27.3の例外は道義的および倫理的理由から多くの締約国が承認している重要な弾力条項で、医療施設や医療専門家は標準治療に対して特許料を支払う必要がないとしている。世界で医療方法に対する特許を承認している国は、米国とオーストラリアだけである

同様の人道的見解から、東京高等裁判所6は医師およびその患者に生じうる危険性を強調した。

米国の提案は、TPPを通じて米国の基準に締約国を従わせるものだが、この提案は自国の法律ともバランスがとれていない。米国の法律は、手術方法に対する特許を認めているが、同時に医療行為者がその医療行為に対して特許侵害で訴えられないようにもしている(35 USC 287c))。

しかし医療行為のなかで、特許取得済みの装置、製造物または組成物を使用してその特許を侵害した場合、免責条項は適用されない。特許を取得していない装置を使用した医療行為には、免責が適用される。

すなわち米国では、治療の際に、特許取得済みの装置を追加するたびに、料金を支払わなければならない可能性がある。

米国の提案によって日本にどのような変更が課されるかの判断は複雑である。例えば、日本は体内で手術器具を用いる方法は特許の対象から除外しているが、医療器具の操作方法に対する特許は認めている。

米国提案が、日本の法律で除外されているいくつかの分野について特許の対象にするよう求める可能性は非常に高い。医療行為の例外措置を撤廃すれば、日本の医療制度にのしかかる負担が増すことになるだろう。医療施設および医療行為者は、本来なら無料、かつ公有(知的財産権が発生しない)とされる処置の方法や手順に対して、特許使用料を要求されることになるかもしれない。

猶予期間

条文Q.Q.E.2  各締約国は、情報公開が(a)特許出願者による作成、認定、または由来でなされた場合、(b)締約国の領土内で出願前12カ月以内に行われた場合、発明の新規性や進歩性を判断するために公開された情報は無視すること。

90によれば日本は提案中

「締約国は、特許出願書が誤って公開されたか、あるいは、特許出願書が発明者またはその発明者から直接的または間接的に情報を入手した第三者による名義継承者の同意を得ずに出願されたものでないかぎり、〔知的所有権に関する官報または〕、特許事務所によって公開された特許出願書に記載の情報を無視することを要求されない。
30条特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った発明は、その該当するに至った日から6か月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項および第2項の規定の適用については、同条第1項各号のいずれかに該当するに至らなかったものとみなす。

日本での猶予期間には、発明者自身の公表(発明、実用新案、意匠および商標の官報によって公表されたものを除く)と未承認の第三者による開示にも適用される。

猶予期間は6カ月であり、特許庁に出願した日より起算する。猶予期間を発動させるため、日本の法律は出願者に対して、具体的にどの発明が出願前に開示されたのかを示す証明書類を添え、文書で猶予期間を請求するよう義務付けている。
猶予期間とは、特許が出願される前に一定の開示が行われても特許の新規性は損なわれないとする期間のことである。つまり猶予期間制度の下では、特許が出願される前に、例えば出版物などで公開されたとしても、発明には新規性があり、特許の取得が可能とみなされる可能性がある。もともと猶予期間制度は先願主義の下の特別な救済手段として考えられた。国際的には、猶予期間制度を調和させた例はない。

TPPの米国提案では、特許出願者が承認したか、または特許出願者に由来するあらゆる公表に対して、幅広く猶予期間を設けている。TPPの猶予期間は12か月で日本の倍だ。これは不確定状態の期間を長引かせ、発明が公有になる(特許が消滅する)時期を遅れさせる。

日本では2011年の特許法改定で猶予期間の範囲が拡大された。改定の検討段階において、猶予期間を6カ月で維持するか、12カ月に延長するかが議論された。その結果、国際的潮流を考慮すべきであり、現行期間の変更は時期尚早であるとされた。大多数の特許制度は、全般的な猶予期間を与えていない。

ボーラ条項型の例外規定


条文Q.Q.E.13.  第〔4〕節(特許の例外および制限)に関し、各締約国は、第三者がその締約国における医薬品の販売承認を得るための申請書を補足するのに必要な情報を作成するために、存続特許の対象物を使用することを許可し、また、そのような承認の下で製造されたどの製品も、その国の販売承認要件を満たすために提出する申請書を補足する情報の生成の目的以外で、領土内で製造、利用または販売してはならないことを規定すること。

**締約国がそのような製品の輸出を許可する場合、その国の販売承認要件を満たすため、申請書を補足する情報を生成する目的に限り、その締約国の領土外へのみ製品を輸出できることを規定すること。

日本は米国のこの提案を支持

**109によれば、日本は検討中

691項特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。

日本の最高裁判所は、特許医薬品のジェネリック(ノーブランド)同等品を販売する認可取得を目的とした特許発明の利用は、法定上の研究として免除される範疇にあるとみなされるべきだ、という見解を保持としている。

日本の免責条項は、医薬品のみならず、医療器具を含むあらゆる特許製品に適用される。
Bolar型規制免除は、特許発明の非商業的研究での利用を助け、特許期間満了後の迅速な市場参入を促すものだ。Bolar免除は日本の公益に寄与する。第69条は、特許取得者と一般大衆との間で利害のバランスをとるもので、技術の向上と産業の発展を促すものである7

ボーラ免除に関する米国提案は、米国または日本の法律における例外の全範囲を明記するものではない。米国の提案は医薬品に対してボーラ条項を適用しているが、連邦最高裁判所の決定では、35U.S.C.§271(e)(1)の下、米国が医療器具などを含む(TPPの米国提案よりも)さらに広範なボーラ免除規定を認めている8ことを明確にしている。

TPP のボーラ条項は、どの特許製品にも適用され、輸出のための広範囲な使用を認める日本の法律の免除範囲をすべて反映するよう修正されるべきである。

※ボ-ラ-条項:試験・研究など、非商業的利用における一定条件下での特許権の適用に関する例外条項

米国実用性試験


条文QQ.E.10.*各締約国は特定の、実体的な、信頼できる実用性がある場合には、申請された発明の実用性を認めること。
*注102によると日本はこの条項を検討中

291項 産業に利用できる発明の発明者はその発明に対する特許の権利を有する資格を持つ。
産業上の利用は日本国内法の法的要求事項である。

「産業」という用語には製造業、農業、漁業、林業、鉱業、商業、サービス業が含まれる。

しかし、この用語には一定の制限があり、医療分野は除く。
-以下を参照


特許は、新規性、進歩性が認められ、産業に利用できる場合、どのような発明でも取得可能であるべきである。

 TRIPS協定と提案QQ.E.1によれば、締約国は「産業に利用できる」と「実用(有用)性」を同義語として扱ってもよいが、義務ではない。

しかしこの条項は、米国の特定の、実体的な、信頼できる実用性を押し付けようとするものである。日本の基準よりも範囲が広く、真に産業への利用や技術的特徴がない発明も対象となっている。

つまり、どのような発明でも実質的に利用でき、有用な特定の結果を出せば、実用性要件を満たすことになる。

この基準は、治療に関する特許申請を促進する。

産業上の利用要件は、そのような治療への特許性に対する障害にはもはやなりえない。

医学的治療に対する特許性は、将来の医薬品および医療機器の研究開発参入にとって新たな障害となる可能性がある。


(特許審査期間のための)特許期間の調整

条文QQE.XX
 (b) 各締約国は特許所有者の要求により、特許承認過程で発生する理不尽な遅延を相殺するため、自国の(特許)期間を調整すること。

この項(b)の目的を達成するため、少なくとも、締約国の領土内で出願された特許が発行まで4年以上を経過したか、または申請の審査要求から2年経過のいずれか遅い方が理不尽な遅延に含まれるべきである。

特許申請者の行為に帰する期間は、遅延の判断に含める必要はない。

日本はこの条項に反対

671項 特許の期限は権利申請の20年後に終了する。

日本の法律には、特許審査に関わる特許期間の調整を明記している条項はない。

特許審査により生じた遅れに対する特許期間延長の義務はない。

特許期間の調整(通常、延長と呼ばれる)は明らかにジェネリック薬品の市場への参入を遅らせ、安価な薬品へのアクセスを制限する。

米国のTPP提案は、特許審査による遅延に対し、全般的な特許期間の調整を新たに導入している。

日本は、特許の延長を規制上の審査期間との関係で認めている一方、4年を超える(もしくは審査請求から2年)審査期間に対する延長は、新たに認めることになる。

特許期間の調整により、特許所有者は特許有効期間を延長することができるようになる。

これは、特許制度のなかで保たれている利害のバランスを損なわせる可能性がある。

特許期間が長くなれば、発明(の恩恵)はいつまでも公有のものにならない。

こうした条項により、科学、技術、産業の分野において、既存の発明を基にしたさらなる発展への試みが妨げられる。

特許期間の調整により保健制度の経費が増し、発明に続くイノベーションも制限される。


(規制上の審査のための)特許期間の調整
条文QQE14
C)各締約国は、特許所有者の求めに応じ、新たな医薬品の製造と使用方法における特許期間の調整を可能にすべきであり、また販売認可手続きよって有効な特許期間が理不尽に短縮された場合は補償されるべきである。

 (d)6(c)を実行するために、各締約国は:
(i)販売認可を得るために審査中の新しい医薬品1つひとつに対する1回の特許期間調整に適用を制限する。

 (ii) 締約国で新しい医薬品に付与される最初の販売承認を得るための調整の理由を求める

)調整期間を5年以下に制限する。

*注110によると日本はこの条項を検討中

672項 
特許を取得した発明が効力を発揮できない期間が存在する。それは、特許の承認に関する条項により安全性の観点また政府の指示に基づき求められたもので、適切な手続きのために考慮された期間であり、目的や手続きその他に焦点を当て、そのような措置は特許を得た発明が効力を発揮するためには必要である。特許権は延長の申請の申請により5年を超えない範囲で延長することができる。
 

日本では特許期間の延長は規制認可の場合にのみ可能である。

日本はこうした延長に様々な制限を加えている。

(特許期間の)延長は、特許の範囲としてよりも実質的に承認審査の範囲と関連している。

例えば、各承認審査が同じように「遅れた」場合は、同じ特許の対象となる複数の医学的適応に延長が適用される可能性がある。

しかし、(特許期間の)延長は、販売承認の対象となる特定の使用のみを保護する。

言い換えれば、2つの商品が同じ特許の対象となる同じ成分を採用しているという理由のみにより、1つの商品の審査期間に関する延長が、自動的にもう1つの特許保護を可能にするわけではない。
日本は長期の承認審査期間について、特許の期間延長を定めているが、いくつかの制限を課している

例えば、1つの製品の承認審査期間に対して与えられた特許の延長を、ほぼ間違いなく対象となる場合でも競争を妨げるために利用することはできない。

これにより、特許保護の延長は、延長が付与された目的にのみ限定して与えられている。

米国の提案には、この保護措置が含まれていないようである。

QQ.E.14(d)は特許期間延長の制限を決める際に、いくつかの柔軟性を与えている。

これらの制限は、米国の特許法に見られるものとまったく同じではないにしても、類似している。すなわち、関係者は延長を、1つの医薬品に対し1つに制限し、さらに/または、延長期間を5年までとしている。(35USCを参照)

販売認可のために提出された試験データの保護
条文QQE16
(a)締約国が、製品の安全性と有効性に関する情報の提出を、新しい医薬品の販売認可を付与するための条件として求めるか、または許可した場合、そうした資料の作成は多大な労力を要するもので、締約国は、その締約国の領土内で販売認可を得るために、安全性または有効性に関する情報を以前に提出した人物の同意を得ずに、第三者に対して、同じかまたは類似の製品を、以下に基づいて販売してはならない。

(i)販売認可のために以前提出された安全性または有効性の情報;もしくは

)締約国の領土内において、新しい医薬品の販売認可が下りた日から少なくとも5年間、販売認可が存在しているという証拠

(c)締約国が、以前、別の医薬品販売で認可された化学物質を含む医薬品に、販売認可を付与するための条件として、生物的同等性の情報以外に、すでに承認されている化学物質を含む医薬品の承認に必須の新しい臨床情報の提出を要求するか、または許可している場合、その締約国は、以前に、その国の領土内で販売認可を得るためにその新しい臨床情報を提出した人物の同意を得ずに、第三者に対して同じか類似の製品を、以下に基づいて許可してはならない。

)販売認可を得るために、以前提出された新しい臨床情報;もしくは

)その締約国内で、新しい臨床情報を根拠にした販売認可の下りた日から少なくとも3年の間、その新しい臨床情報をもとに販売が認可されているという証拠。

*注113によると、日本はまだこの条項に関する立場を検討中
日本にはデータ保護の規定はない。
しかし、新しく承認された医薬品の有効性と安全性の監視と確認を目的とする日本の(PMS)制度は、医薬品会社によるジェネリック医薬品の参入を事実上排除し、特許期間が切れた後も参入できないことがある。
殆どの新薬の承認には再審査期間が設けられており、この期間が終了するまでの間、ジェネリック薬品の会社は医薬品の承認申請を提出することができない。
排他的なデータ使用を規定はしていないが、実際にはそれがジェネリック薬品が市場に出回るのを遅らせている。

再審査の期間は、活性成分については販売認可がおりた日から8年間、新規適応や服用については販売認可から46年間としている。
日本のPMSシステムは医薬品安全監視(ファーマコビジランス)になることを意図しているが、米国のデータ保護は医薬品会社の金銭的利害に寄与するものである。

データ保護により、規制当局はジェネリック医薬品の登録のための医薬品の安全性と有効性に関するすでに確立したデータを使えず、ジェネリック医薬品の市場参入を遅れさせ、医薬品の価格が必要以上に高くなる。

データ保護条項は、人間や哺乳動物に対する重複試験に対する医薬品の倫理基準とも合致しない。

漏えいした米国のTPP提案では、新しい医薬品のためのデータ保護を提供している。(条文9.2

この条項は、販売認可の資料は通常なら公開され、公有のものとなるが、そこで提出される安全性と有効性情報のためのデータについて、「少なくとも」5年間の保護を規定している。

この原案は、既存の医薬品に対する新規適用または適応に対する新しい臨床情報の提出に際し、「少なくとも3年間」のさらなるデータ保護も導入している。

基準の製品と同じかまたは近いと考えられる医薬品も、保護されたデータを使用できない。

米国は生物学に関連した試験データのための、12年間のデータ/市場の保護も求めている。

(最新癌治療などのバイオ工学の医薬品)
QQE20条、生物学に適用される特定の条項のための プレースホルダ参照、)年数によっては、この条項は、日本の保健およびイノベーションにとって相当な財政的結果を伴う、保護期間の延長を意味する可能性がある。

特許リンケージ
条文QQ.E.17* 締約国が、医薬品の販売認可の条件として、最初に安全情報や有効性情報を提出した以外の人が、別の領土での販売認可取得のために提出した証拠など、すでに認められている製品の安全性や有効性に関する情報や証拠に頼ることを要求するかまたは許可する場合、各締約国は以下をおこなう。
 (a)以下に対して透明性ある効果的な制度を提供する

 (i)1つの特許、または承認済み医薬品か承認済みの使用方法を対象とする複数の特許の同定

 (ii)パラグラフ5(a)(i)で言及された承認済み医薬品と同じか類似した製品を、特許権の期限内に販売しようとする他の個人または法人についての特許権者への通告

 (b)そのような第三者が、特許権の期限が切れるまでその製品の販売を延期することに合意しないかぎり、特許権を侵害している製品の販売申請を許可する前に、特許権者が以下を提供して必ず救済を求められるようにする
 (i)特許の有効性や、侵害したとされる特許の違法性に関する争議を解決するための十分な機会を与える目的で定められた一定期間販売認可自動延長
 (ii)特許の有効性または侵害したとされる特許の違法性に関する争議迅速な解決を可能にするための、効果的な暫定的措置を含む、法的または行政的手続き。

(c)そのような他人の製品が、サブパラグラフ(a)に準ずると確認された有効な特許権を侵害すると分かった場合、特許権の期限が切れ前にその製品が未承認で販売されることを禁止する措置の提供。

 (d)締約国によるサブパラグラフ5(b)(i)と合致する販売認可の付与遅れた場合、特許権の有効性または適用可能性に対する異議申し立ての成功に対し、この協定の条文と整合する効果的な報償の提供。
*113によると、日本はこの条項についてまだ検討中。
日本には現在、特許リンケージ制度がない。しかし厚労省は、先発医薬品の活性成分を含む特許権が有効な場合に限り、ジェネリック医薬品の販売を原則的に承認しない。厚労省が後発医薬品を承認しないのは、特許が明らかに侵害されている場合のみである。この保護措置は新規適応、調剤、投与の方法には適用されない。
特許リンケージは、医薬品の販売認可と特許状況をリンクさせる仕組みである。特許リンケージの下では、誤った特許権でもジェネリック医薬品登録の障壁となる可能性がある。ジェネリックが市場に出ることを防ぐことによる特許権者への金銭的な利益が罰金を上回るため、特許リンケージは、乱用を促しかねない。

米国のTPP提案は、承認済み医薬品を対象とした特許を確認するための仕組みを各国に求めている。日本の現行制度と異なり、これは新たな用法と適応症を含むことになるだろう。そうなればジェネリック医薬品の競争が少なくなりかねず、コストが上昇する。米国の提案に従うなら、日本は特許権者のための通告システムを確立し、販売認可の自動延期と、特許期間中に特許権を侵害している製品の販売を防ぐ措置を正式に発足させなければならないだろう。

この条項の文言からは、ある製品がどのような条件のもとで承認済みの医薬品に「類似している」とみなされ、特許権者に対する通告義務が発生するのか、はっきりしない。この条項により、特許権者が潜在的競争相手に圧力をかけやすくなる可能性がある。


特許権有効性の法的・行政的推定





条文Q.Q.H.2* 
行政法上の特許施行手続きにおいて各締約国は、所轄官庁によって十分に審査され、付与された特許権の範囲内の主張は、その国の領土内における特許性の適用基準を満たしているという反証を許す推定を規定する。
*193によると、日本はこの条項について検討中
1043項 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
米国のシステムと同様、日本は特許権取り消しのための並行システムを持っている。2005年に第104条3を施行して以来、日本の裁判所は特許権侵害の訴訟において特許権を無効にする権限を得た。しかしながら、裁判所のとりけし決定は、当事者にのみ適用される。日本の特許庁に持ち込まれる取り消し訴訟はその他全ての目的について有効か有効でないかを判断する。


米国の以前のTPP提案は、ある特許権とそのそれぞれの主張が民法・行政手続きにおいて、どちらも独立して有効であるという反証を許す推定を規定するよう署名国に求めていた。最新版の提案には、これは含まれていない。

特許権の有効性に関する法的・行政的推定によって、費用のかかる一方的な法的手続きが発生し、不当な特許権に対する異議申し立てが難しくなる。

米国と日本には、特許権を無効にする2つの方法がある。法廷によるものと特許事務所によるものだ。(米国では米国特許商標庁(USPTO)による査定系再審査、当事者系再審査、あるいは登録後審査、日本の特許庁(JPO)では無効審判)

米国の特許訴訟では、特許請求は35 U.S.C. §282に則って有効性の推定を享受できる。推定を覆すための証拠に関する基準は法令に明記されていない一方、米国の裁判所は、推定には相当な証明責任があり、明確で説得力のある証拠がなければ推定は覆されないという意味であると法令を解釈してきた。そのような有効性の推定と証拠の水準が高くなることにより、悪質な特許の非有効性を裁判に訴えることが難しくなり、代わりに特許の質が下がる。たとえ、特許事務所が間違って特許を付与したとしても、異議申し立てをする側は明確で説得力のある証拠で有効性の推定を覆さなければならない。

しかし、そのような米国においても、同じ推定がUSPTOに持ち込まれる紛争には適用されないようである。「証拠{しょうこ}の優越」で、十分に特許は無効になる。行政手続き有効性の推定を求めるTPPの提案によって、米国法の適用範囲が広げられる可能性がある。

日本の裁判所は米国と同様に、特許権侵害の裁判において無効弁護がなさなれた場会、特許権を無効にすることができる。しかし、米国と異なり、有効性の推定や証拠基準の改定もない。特許庁は有効性も推定しない。


特許権侵害による損害の賠償

b) 知的財産権の侵害による損害を測定する際、管轄省庁は、特許侵害された財やサービスの価値について、特に希望小売価格、または特許権所有者によって提出された正当な算定方法によ価値を考慮する。
*この条文にはすでにカッコはついていない。つまり締約国はすでにこの条項に合意している。

7**特許権侵害に関する民法上の手続きにおいて、各締約国は、管轄省庁が確認あるいは評価した額の3倍まで損害額を増やす権限を持つことを規定する。
**日本はこの条項に反対

102条1 損害は特許権者の逸失利益にもとづく
(第百二条 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。)
1022 損害は特許権侵害者が得た利益にもとづく(2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。)

1023 損害は妥当な特許権使用料にもとづく(3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。)
1053 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
102条は、特許権者が被った損害額を算定するために3つの方法を導入している。
・特許権侵害者の販売量を特許権者の単位当たりの利益で乗じた額(販売量が特許権者の能力の範囲内にある場合に限る)
・特許権侵害者の販売量を特許権侵害者の単位当たりの利益で乗じた額。
・特許権侵害者の販売総額を特許権使用料率で乗じた額。

特許権侵害が故意あるいは重大な過失でなければ、裁判所は損害額が実際にはもっと大きいとしても妥当な特許権使用料と同額に制限する裁量権がある。
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米国提案の草案は、希望小売価格または特許権者から提出された「その他の正当な価値評価」を提案している。

小売価格にもとづいて計算される損害額は、特許権者の利益に大きく偏るものである。希望小売価格は、仮説にもとづいた価格であり、通常、特許権者が被る損害額よりかなり大きい。その上、特許権者が提出する希望小売価格は上乗せされているか、不正確で実際の小売価格より高いこともありうる。これは非現実的な損害額の決定につながり、特許権者に有利になり、被告側は不確実な法廷闘争に踏み切れないだろう。

条文QQ. H.Yは管轄省庁に、いかなる損害賠償額でも3倍にする大きな権限を与える。条文には損害に関する裁量の拡大に制限を設けていない。米国では、裁量の拡大は故意の侵害、少なくとも客観的無謀の場合にのみ適用される。

日本の裁判所では、損害に対して補償による解決を維持し、特許請求をふるいにかけ、損害の適当な算定方法をケースバイケースで決めることによって、特許侵害訴訟での競合する利害を調整することができる。